不動産の登記費用はいくらかかる?|費用の相場や計算方法について解説
目次
不動産取引をする際は物件の物理的状況(所在や面積など)や権利関係(所有権や抵当権など)を明確にするために「不動産登記」を行う必要があります。
不動産登記にかかる費用はおもに以下の2種類です。
- 登録免許税…不動産登記の際に支払う税金
- 専門家への報酬…不動産登記を専門家に依頼した場合に発生
本記事では「不動産登記にかかる費用の種類や相場」「計算方法」「登記費用を安くおさえる方法」を解説していきます。
「これから不動産登記をする必要がある」「登記にかかる費用がいくら発生するのか知りたい」という方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
不動産登記にかかる費用と概要
不動産登記にかかる費用は、おもに「登録免許税」と「専門家への報酬」の2種類です。
登録免許税は法務局(登記所)に物件情報を登記する際に必要な費用であり「固定資産税課税標準額 × 税率」の式で計算できます。固定資産税課税標準額は固定資産税評価額が基準となり、税率は登記の種類によって異なります。
専門家への報酬は登記を司法書士または土地家屋調査士に依頼した際に発生する費用です。不動産の登記手続きは複雑かつ専門知識が必要であるため、専門家に依頼するのが一般的です。
不動産登記の種類は大きく分けて以下の2種類があります。
- 表題登記…土地・建物の所在や面積など物理的な状況を登録するための登記
- 権利登記…土地・建物の権利関係を明らかにするための登記
表題登記は土地建物調査士、権利登記は司法書士がそれぞれ登記の代行を独占業務として行っており、2つの資格を両方持つ事務所も多くあります。
不動産の表題登記
表題登記とは土地・建物の所在や面積などの「物理的な状況」を登記簿に登録する手続きを指します。
過去に登記されていなかった土地や新築の建物を所有する際には登記を行う義務があり、怠ると10万円以下の過料が発生するため注意しなければなりません。
表題登記は自分で登記をしない場合は土地家屋調査士に依頼します。依頼には調査費用や報酬などが必要なため、事前に費用の相場を把握しておくのが大切です。
土地と建物それぞれの表題登記について、次の項目から解説していきます。
土地の表題登記|土地の物理的状況を登録
土地の表題登記とは土地の所在や地番、地目(土地の使用目的)、地積(面積)などの物理的な状況を登記簿に登録する手続きを指します。しかし、土地が登録されていないケースは少ないため、一般的にはあまり行われません。
土地の表題登記は「埋め立てによってできた土地」や「登記義務がない官有地が民間に払い下げられた」際などに行われます。
原則として登録免許税はかかりませんが、以下のケースでは数千円の登録免許税がかかります。
- 複数の土地をひとつに合併するとき(土地合筆登記)
- ひとつの土地を複数に分割するとき(土地分筆登記)
土地の表題登記を行う際は住民票の取得や法務局の手続きにかかる費用が数千円〜1万円ほど必要です。
また、土地の表題登記を土地家屋調査士に依頼する場合の費用は「土地の大きさ」や「必要書類の有無」「依頼する専門家」によって変わりますが「約7万円〜」が相場です。
土地の分筆登記(ひとつの土地を複数に分割する登記)の場合は数十万円となるケースもあるため、事前に専門家に相談しておくと安心です。
建物の表題登記|建物の物理的状況を登録
建物の表題登記とは建物の所在、家屋番号、種類、建物の名称、構造、床面積などの物理的な状況を登記簿に登録する手続きを指します。新たに建物を建てたり未登記の家を相続したりした場合には、表題登記が必要です。
建物の表題登記も土地と同様に原則として登録免許税はかかりませんが、以下のケースで数千円の登録免許税がかかります。
- 複数の建物をひとつに合併するとき(建物合併登記)
- ひとつの建物を複数に分割するとき(建物分割登記)
建物の表題登記を行う際は必要書類の取得や法務局での手続きにかかる費用として数千円〜1万円ほど必要です。
建物の表題登記や現地での調査測量などを土地家屋調査士に依頼する場合の費用の相場は「約8万円〜」です。測量を行うのが難しい土地にある建物の場合や、相続が絡んでいて調査協力を得るのに手間がかかる場合などは費用が高くなるケースがあります。
不動産の権利登記
不動産の権利登記は対象不動産の所有権や抵当権など「権利関係を明確にする」ための手続きを指します。権利登記は法律上行う義務はありませんが、第三者に対して不動産の権利を主張するために必要です。
権利登記は司法書士の独占業務であり、依頼する場合は登録免許税のほかに報酬を支払う必要があります。
以下の権利登記の概要・費用と司法書士への依頼費用の相場を解説していきます。
- 所有権移転登記
- 所有権保存登記
- 抵当権設定登記
- 抵当権抹消登記
各種権利登記の内容やかかる費用についての理解を深めていきましょう。
所有権移転登記|物件の所有権が移ったとき
所有権移転登記とは不動産を取得した際に、前の所有者からの所有権移行を示すための登記です。不動産の購入や贈与・相続などで取得した場合に所有権移転登記が必要となります。
中古建物を取得した場合は土地・建物のそれぞれで所有権移転登記を行い、新築の建物であれば「土地は所有権移転登記」「建物は所有権保存登記」を行う必要があります。
登録免許税は「固定資産税評価額 × 税率」で算出され、適用される税率は以下の表の通りです。
事由 | 土地 | 建物 |
売買 | 2% (※2023年3月31日まで軽減税率適用され、1.5%) | 2% |
相続 | 0.4% | 0.4% |
贈与 | 2% | 2% |
手続きにかかる費用は物件の金額によって異なり、たとえば固定資産税評価額が3,000万円の物件の相続を受けた場合は12万円です。司法書士に依頼した場合の手数料相場は2万円〜5万円前後です。
所有権保存登記|所有権登記がされていない物件を取得したとき
所有権保存登記とは所有権が登記されていない新築物件などの不動産を取得する際に、自身の所有物であると証明するために行う登記です。
所有権保存登記に課される登録免許税は「不動産の価額 × 税率(0.4%)」で算出されます。不動産の価額は建物の完成から1年以上が経過している場合は「固定資産税評価額」をもとに算出されます。一方で、完成から1年以内の場合は固定資産税評価額の算出がされていないため、各都道府県で年度ごとに定められた基準によって算出します。
また登録免許税のほかに、住民票等の必要書類の取得費用や司法書士への依頼費用もかかります。必要書類の取得費用や手続きにかかる手数料は数千円、司法書士への依頼費用は2万円〜4万円前後が相場です。
抵当権設定登記|ローンを利用して物件を購入したとき
抵当権設定登記とは金融機関のローンを利用して不動産を購入した際に、土地と建物に担保権を設定することです。抵当権設定登記を行う理由は、金融機関は返済が滞ってしまった場合にその不動産を差し押さえ、競売にかけることにより、売却代金から優先的に返済を進めることを可能とするためです。不動産の購入資金を貸し出した、金融機関側の債権(ローンの返済を請求できる権利)の保全を目的に登記します。
抵当権設定登記に課される登録免許税は「ローン借入額 × 0.4%」で算出されます。たとえば、ローンで3,000万円を借り入れて不動産を購入した場合に発生する登録免許税は12万円です。
登録免許税のほかに、必要書類の取得や手続きにかかる手数料、司法書士への報酬も必要となります。手続きの費用は数千円程度、司法書士への依頼費用は2万円〜10万円が相場です。
抵当権抹消登記|ローンを完済したとき
抵当権抹消登記とは融資を受ける際に不動産を担保に設定された抵当権を不動産登記簿から抹消する手続きです。借り入れていたローンの返済がすべて完了しても自動的に抵当権が無くなるわけではないため、登記によって抹消する必要があります。
抵当権抹消登記に課される登録免許税は不動産1件につき1,000円です。土地と建物に抵当権が設定されている場合は、2,000円の納税が必要となります。また、同じ建物でも複数の土地に分かれている場合は別の不動産として数えられるため「土地の数 × 1,000円」で算出されます。
抹消前に登記されている抵当権の内容を確認したり、手続き後に抹消できているかを確認するためには数百円〜1,000円前後の登記事項証明書を取得する必要があります。
司法書士に抵当権抹消登記を依頼する場合には、1万円〜2万円前後が相場です。
登記費用をおさえるには?
不動産取引をする際にかかる登記費用をおさえたい場合は、専門家への依頼費用を安くする方法を考えましょう。登録免許税は安くできませんが、土地家屋調査士や司法書士への依頼費用は、事務所によって報酬が異なるため安くおさえられる可能性があります。
登記費用をおさえるための以下の方法を解説します。
- 自分で不動産登記を行う
- 複数の専門家から見積もりをもらう
なるべく登記費用を安くおさえたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
自分で不動産登記を行う
不動産の登記手続きを自分で行うと専門家に支払う報酬が発生しないため、費用を安くおさえられます。
一方で、不動産登記には以下の複雑な手続きが必要であり、時間と労力がかかるため自分で登記手続きをするのはおすすめしません。
- 対象となる不動産の現地調査
- 登記に必要な書類を取得する
- 申請書類を作成する
また、専門家に依頼すると失敗を未然に防げるケースもあります。
たとえば不動産関連の失敗例として「相続税対策として不動産を親から子どもへ生前贈与をした」というケースが挙げられます。贈与税のほうが相続税よりも税率が高いため、損をしてしまうというパターンですが、専門家の助けがあれば未然に防げる可能性が高いです。
依頼費用をおさえようとして自分で手続きを進めた結果、かえって費用が高くなるケースを防ぐためにも、不動産登記はできるだけ専門家に依頼するのをおすすめします。
複数の専門家から見積もりをもらうのも手段のひとつ
複数の専門家に見積もりをもらい、金額設定の低い専門家に登記を依頼することで費用をおさえるのもひとつの手段です。専門家への報酬は任意で決められているため価格が一律ではなく、安く依頼できる可能性があります。
不動産売買の際は仲介業者が紹介する専門家に登記を依頼するケースが多いです。また、融資を受ける場合は、金融機関から専門家の指定がある場合もあります。一方で、紹介された専門家が相場より安いとは限りません。登記を行う必要がある際は、安く依頼できる専門家を自分で探すことも視野に入れましょう。
一方で、仲介業者から紹介された専門家に依頼するほうがスムーズに手続きが進む可能性もあります。
必ずしも費用が安いほうが良いとは限らないため、複数の専門家に見積もりをもらうのは手段のひとつとして考えておきましょう。
まとめ
不動産の売買や譲渡をする際には、不動産登記を行う必要があります。土地や建物の物理的状況を登録する「表題登記」と、不動産の権利関係を明確にする「権利登記」があり、それぞれ法務局への申請を行う必要があります。
不動産登記ではおもに「登録免許税」と「専門家への支払い報酬」の2つの費用がかかります。「登録免許税」を減らすことはできないため、不動産登記にかかる費用を節約したい場合は「専門家への支払い報酬」をおさえる必要があります。
不動産登記を自分で行えば「専門家への支払い報酬」は発生しませんが、煩雑な手続きが求められるうえ、大きなリスクがあるためおすすめできません。
不動産登記にかかる費用を節約したいと考えている方は「複数の専門家から見積もりをもらう」などの手段が考えられます。
少しでも支払うお金を減らしたい方は、ぜひ本記事の内容を参考に節約に取り組んでみてください。