違法建築とは?代表的な事例やリスク、既存不適格との違いも徹底解説
目次
違法建築は、建築基準法や条例に違反して建てられた建物を指します。違法建築の代表的な事例としては、建ぺい率や容積率の超過、確認申請内容と異なる建築物などが挙げられます。
この記事では、違法建築の基礎知識や代表的な事例、リスクや既存不適格との違いを解説します。
違法建築とは
違法建築とは、建築基準法や地方自治体の条例に違反して建てられた建物のことを指します。違法建築は資産価値や安全性に対するリスクが高いため、きちんと理解しておくことが重要です。具体的には、建ぺい率や容積率を超過した建物、未許可で増改築や用途変更を行ったもの、確認申請内容と異なる建築物などが違法建築に該当します。
違法建築と既存不適格の違い
既存不適格とは、建築当初は適法だったものの、後の法改正によって基準を満たさなくなった建物を指します。つまり、違法建築が最初から法令違反の状態であるのに対し、既存不適格は建築後の制度変更により不適合になったものである点が大きな違いです。
例えば、建築当時は容積率が100%だった土地に容積率95%の建物を建てた後、法律改定が行われ対象地が容積率80%に変更された場合、その建物は既存不適格建築物として扱われます。
違法建築が発生する理由
違法建築が生まれる背景には、コスト削減や工期短縮などの意図的なものから、単なる知識不足によるうっかり違反まで、さまざまな要因があります。
特に、増改築のタイミングで本来の申請手続きを行わずに工事を進めてしまう事例が多く見受けられます。その結果、後になって指摘されるというケースも少なくありません。
違法建築の代表的な事例
違法建築の事例は多岐にわたりますが、特に多いのが建ぺい率や容積率の超過、未許可での増改築などのケースです。ここでは、違法建築に該当する主なケースについて具体例を挙げながら解説します。
建ぺい率・容積率の超過
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合、容積率は敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことです。建ぺい率と容積率は、行政が定めた用途地域により上限が定められています。
「敷地を最大限に使いたい」「不動産投資を効率化したい」という動機で建築計画を変更してしまったり、増築することで建ぺい率・容積率がオーバーしてしまうことがあります。
未許可での増改築や用途変更
増改築を行う際は一般的に、建築確認申請や関連手続きが必要ですが、これを行わずに改築するケースが未だに存在します。また、住宅を店舗として使うなど、用途変更時にも行政への届け出が求められる場合があります。店舗は不特定多数の人が出入りすると考えられ、快適性・防火性・設備などの観点から審査する必要があるためです。
確認申請内容と異なる建築物
設計段階では適法だったものの、実際の施工中に設計変更が行われる場合があります。
具体的には、建築が始まった後で設計変更が行われたが、それが正式に承認されない場合や、建築材料が計画書に示されたものと異なる場合などが挙げられます。これにより、完成した建築物が確認申請時の承認内容と異なり、結果として罰則や是正命令を受けるリスクが高まります。
違法建築のリスク
違法建築には多くのリスクが伴います。具体的には以下のようなリスクがあります。
- 耐震性や防火性が低い
- 行政指導や罰則を受ける可能性がある
- 資産価値が低下しやすい
- 融資や売却の難易度が高い
違法建築のリスクを理解しておくことは、安全性と資産価値の両面で非常に重要です。ここでは、違法建築のリスクについて、詳しく解説致します。
耐震性や防火性が低い
構造基準を満たしておらず違法建築となる場合も少なくありません。耐震性や防火性などの基本的な安全基準をクリアしていないと、大きな地震や火災の際に被害が拡大し、住人や周辺住民まで危険にさらす可能性があります。
実際の例として、2011年の東日本大震災では、違法建築の一部が倒壊し、多くの被害が報告されました。違法建築が原因での被害を未然に防ぐためにも、建築前に法令に基づく計画と確認申請の手続きをしっかりと行うことが重要です。
行政指導や罰則を受ける可能性がある
違法建築は行政による建築指導や罰則の対象となり、是正命令が出される場合があります。場合によっては大規模な改築や撤去、工事費用の負担が求められるため、違法状態を長期にわたって放置するのは大きなリスクです。例えば、工事停止命令に従わなかった場合は、「3年以下の懲役または300万円の罰金」など、重い罰が科されることもあります。
法令に従った建物を所有することはオーナーにとって必須の責務と言えるでしょう。
資産価値が低下しやすい
違法建築の影響として、資産価値の低下が挙げられます。違法建築物は法律や条例に反しているため、建物の安全性や長期的な維持管理に問題が生じる可能性があります。これにより、購入希望者が敬遠し、不動産市場での評価が下がることが一般的です。
違法部分を是正しない限り、最終的に資産価値が大きく下がってしまう可能性は高いため、違法建築物の存在が確認された場合、適法化や是正措置を講じることが重要です。
融資や売却の難易度が高い
銀行などの金融機関は、違法建築物に対して慎重な見方をするため、融資審査が厳しくなります。結果として、購入希望者の融資の難易度が上がり、売却が成立するまでにかなりの時間を要する、もしくは購入希望者を見つけられずに売れ残ってしまうリスクが高まります。
違法建築の確認方法
これから物件を購入する方の中には、自分が買おうとしている物件が違法建築でないか調べたいという方もいるのではないでしょうか。違法建築でないことを確認する方法として、一番簡単なのは検査済証を確認することです。ここでは、物件が違法建築かどうかを確認する方法をご紹介します。
検査済証の確認
検査済証は、その建物が建築基準法や関連規定に適合していることが認められたときに交付される書類です。これがない場合、行政が定めた検査を受けていない可能性が高く、違法状態であることが疑われます。しかし、築年数が経過している物件は無いことの方がほとんどです。検査済証が無い場合でも、物件が適法に建築されていれば問題は無いため、確認済証の内容もよく確認し、法令に適合しているかを確認しましょう。
建築基準法に基づく書類チェック
建築確認申請書や図面、検査済証など、法定書類に記載された内容と実際の建物が整合しているかどうかを確かめることが大切です。とくに、変更後の図面や用途変更にかかわる申請書類が正しく提出されているかは見落としやすいポイントです。
建築士へ依頼する
違法建築物件か確認する方法の三つめは、建築士に依頼することです。
建築士に依頼することで、書類の確認だけでなく構造的な問題点や今後予想される是正指導のリスクなど、総合的な判断を得ることも可能です。
よくある違法建築に関する質問
ここでは、よくある質問とその回答を紹介します。
違法建築物件を購入しても問題ないか?
違法建築物件を購入すると、後から是正指導を受けるリスクが高いほか、融資を受けにくく売却が困難になる場合があります。短期的には割安に見えるかもしれませんが、長期的に見ると大きな費用や手間がかかる可能性があり、安全面でも不安要素が残ります。
そのため、違法建築物件の購入は可能な限り避け、法的にクリアな物件を選ぶことが賢明です。しかし、違法建築物件の売買自体が禁止されているわけではありません。自身が違法建築物件であることを把握した上で、利回りの高さ等のメリットを踏まえ、総合的に検討することが大切です。
リフォーム時に違法建築になるケースもある?
リフォームにより違法建築になる場合もあります。例えば住宅の横に倉庫を増築して、建ぺい率がオーバーしてしまうケースなどが考えられます。
不明点があれば、必ず建築士や設計士に相談してリスクを回避しましょう。
ローンや融資審査への影響は?
違法建築物件は金融機関が担保価値を認めにくいため、ローンの審査に通りにくくなります。もし融資が得られたとしても、金利条件が悪くなるなど制約が大きくなる可能性が高いでしょう。
まとめ
違法建築はリスクも多くあるため、購入の検討をする際は注意が必要です。購入やリフォームを考えている人は、建物の書類や構造をしっかり確認し、専門家とともに慎重に判断することが重要です。違法建築のリスクを把握し、物件選びの際に適切な判断が出来るようにしましょう。