不動産投資に利回りの最低ラインは決めるべき?利回りの基本について解説
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不動産投資を始める際に利回りについて考えるべきか、悩んでいる方もいるかもしれません。結論から言えば、不動産投資で利回りの最低ラインは決めないほうがよいでしょう。本記事ではその理由も含めて、不動産投資の利回りに関する考え方やポイントを解説します。その上で、不動産投資の成功率を上げる方法についてお伝えします。
不動産投資の「利回り」に最低ラインはあるか
これから不動産投資を始める方の中には、物件を探す基準となる利回りはどのくらいあればよいのか知りたい方も多いのではないでしょうか。
利回りの最低ラインは決める必要がない
不動産投資において利回りの最低ラインは決める必要がありません。不動産投資の目標や目的によって選ぶ物件の種別は大きく異なり、それぞれに合った利回りがあるためです。
例えば、利回りの最低ラインを10%に決めると、入居率が低く建物の状態が良くない地方の築年数50年のアパートでも最低ラインを満たすことになります。一方、大都市にある新築の1億円のマンションの場合、利回り10%の物件はほぼないため、購入対象外となってしまいます。
個々の物件の性質を無視して利回りの最低ラインを機械的に決めてしまうと、「買うべきではない不動産を購入してしまう」「非現実的な条件のせいで購入できない」といった問題が起こり得ます。
利回りは表面利回りと実質利回りの2種類がある
利回りには主に「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。それぞれの計算式は次の通りです。
表面利回り:年間家賃収入÷物件購入価格×100
実質利回り:(年間家賃収入-年間諸経費)÷(物件購入価格+購入諸経費)×100
収益物件の販売資料に記載されている利回りは、表面利回りが一般的です。表面利回りが高いからといって、キャッシュフローが大きいわけではありません。
表面利回りの高さにとらわれずに、電気代やエレベーターのような設備の維持管理費、土地と建物の固定資産税、物件が市街化区域内の場合は都市計画税ががいくらかかるのかを確認して、実質利回りを意識することが大切です。
同じ利回りでもリスクは同じではない
不動産の利回りはリスクに比例するのが一般的です。「大都市圏エリア」「築年数が新しい」「交通の便が良い」といった好条件の不動産はリスクが低く購入したい方が多いため、販売価格は高く、利回りは低くなります。
一方、「地方エリア」「築年数が古い」「交通の便が悪い」といったあまり条件が良くない不動産はリスクが高くなるため、販売価格が低く、利回りは高くなる傾向があります。
ただし、不動産は一つ一つ条件が異なるため、同じ利回りでもリスクが同じとは言えません。利回りの数字だけでリスクを判断するのではなく、賃貸需要や建物のメンテナンス状態、入居者トラブルの有無、採光、接道義務、建築条件など、さまざまな要因をチェックする必要があります。
エリアによって「利回り」は大きく違う
不動産投資では、不動産に関するさまざまな条件に注目する必要があります。不動産のエリアによって利回りも大きく異なります。エリアによってどのような傾向があるのか、首都圏と地方の物件を例に利回りの違いを見ていきましょう。
都心・首都圏の物件は利回りが低い
一般的に、東京都心部・首都圏にある物件は平均的に利回りが低い傾向があります。多くの人々がこのエリアに住みたいと考えるためです。人口の流入が多いエリアは賃貸需要が高く、入居率も高くなります。
したがって、都心部の物件は投資家の人気も高いのが特徴です。人気に伴い不動産の販売価格が上昇するため、利回りは下がります。利回りが低いということは、リターンが少ないものの、リスクが低く安定している物件とも言い換えられるでしょう。都心や首都圏の物件は需要が高いため、売却時に買い手が付きやすいというメリットもあります。
地方の物件は利回りが高い
地方の物件は都心や首都圏の物件と比較すると、高利回りになる傾向があります。ただし、あくまでも入居者がいた場合にリターンが大きいという意味で、高利回りの物件だからといって必ずしも高い利益が保証されているわけではありません。
地方の物件に共通する一般的なリスクとして「空室のリスクが高い」「家賃相場が下落している」といった点が挙げられます。さらに、都心や首都圏の物件に比べて融資が通りにくく、買い手が付きにくいため、売却の際に苦労するケースも考えられるでしょう。高利回りの物件は高いリターンを狙えますが、リスクも高いだけに不動産を見極める力が求められます。
高利回り物件の注意点
不動産投資において利回りの高い物件は大きなリターンが見込める魅力がある一方、リスクも潜んでいます。高利回りの物件を検討する際に注意すべき点は以下の4点です。
- 築年数と建物の状況
- 入居者が見込める立地条件か
- 極端に高い利回りの物件は避けたほうがよい
- 入居中の部屋の賃料は相場と乖離していないか
築年数と建物の状況
高利回りの物件は築年数が古く、建物の設備に問題があるケースが多いのが一般的です。特に「旧耐震基準」の建物には注意しましょう。耐震基準とは地震に対する耐久構造の基準で、1981年5月31日までに建築確認の申請が受理された建物は旧耐震基準、1981年6月1日以降の建物は新耐震基準が適用されています。それぞれの耐震基準の違いは下記の通りです。
- 旧耐震基準:震度5強の地震でも倒壊しない構造基準
- 新耐震基準:震度6強~7の地震でも倒壊しない構造基準
旧耐震基準の建物は新耐震基準の建物より地震への耐久性が低いと考えられます。他にも、「屋根や外壁に傷みがないか」「表面に出ていない排水管にダメージがないか」「トイレが水洗かどうか」といった建物全体の状態をチェックすることが重要です。
入居者が見込める立地条件か
いくら高利回りでも、賃貸需要が極端に少ないエリアでは入居者が見込めない可能性が高いでしょう。不動産投資において家賃は重要な収入源ですが、入居者がいなければ家賃収入もないため、キャッシュフローが悪化します。
人口が少ないエリアはもちろん、人口が多くても交通の便が悪い物件には注意しなければなりません。具体的には、「最寄り駅から遠い」「駐車場がない」「ターミナル駅へのアクセスが悪い」「最寄り駅の電車の本数が少ない」といった条件が挙げられます。
ただし、近隣に大きな工場や会社、大学があれば、入居者を見込める場合もあります。人口の少なさや交通アクセスの悪さをカバーできる要因を見極める必要があります。
極端に高い利回りの物件は避けたほうがよい
築年数や建物、エリアに関する条件が良いにもかかわらず極端に利回りが高い物件は、他の要素で購入者が付かない可能性が高いため、避けたほうがよいでしょう。例えば、以下のような理由で販売価格が下がり、高利回りになっているケースがあります。
- 家賃滞納や騒音といった入居者トラブルを抱えている物件
- ごみ処理施設や火葬場のような忌避施設が近くにある物件
- 過去に犯罪や自殺・他殺事件があった事故物件
ただし、相続物件を早く手放したいといった売主の事情で安くなっている掘り出し物の物件もあります。いずれにせよ、極端な高利回りに惑わされずに、物件を検討することが必要です。
入居中の部屋の賃料は相場と乖離していないか
オーナーチェンジ物件とは、入居者がいる状態で販売されている投資物件です。オーナーチェンジ物件の場合、周辺の相場と比べて家賃が高いことが高利回りの理由であることが考えられます。
特に長期間住み続けている入居者は、相場よりも高い賃料を支払っているケースもあります。そのため、長期の入居者が退去すると、利回りが大きく下がる恐れがある点に注意が必要です。オーナーチェンジ物件の購入を検討する際は、入居中の部屋の家賃が周囲の家賃相場と乖離していないかを確認しましょう。
自分の投資スタンスを決めることが大切
不動産投資を始める際は物件の購入から考えてしまいがちですが、その前に投資スタンスを決めることが大切です。ここでは、以下の5つのポイントについて詳しく見ていきましょう。
- 不動産投資をする目的は何か
- インカムゲイン狙いなのかキャピタルゲイン狙いか
- 新築か中古か
- エリアを限定するか限定しないか
- 専門家と相談してスタンスを練ってみよう
不動産投資をする目的は何か
不動産投資を始めようと物件情報を収集しても、なかなか不動産を購入できない方がいます。これは、不動産を選ぶ判断基準がないために起こる問題です。やみくもに物件情報を収集する前に、下記のポイントについて整理した上で、投資スタンスを決めることが大切です。
なぜ不動産投資を始めるのか
「安定した副収入を得たいから」「税負担が重く、節税を考えているから」といった理由を整理する。
どのくらいのリスクを引き受けることができるか
低利回りでリスクの低い物件を選ぶか、高利回りでもリスクの高い物件を選ぶかを決める。
年間どのくらいの副収入や節税効果を目標とするか
具体的な数値目標があれば、目標を達成するための規模や購入金額の基準ができる。
判断基準がないと、利回りに振り回されてしまう危険や提案された物件が自分にふさわしいか判断できない恐れがあります。まずは不動産投資の目標を明確にして、投資スタンスを決めましょう。
インカムゲイン狙いなのかキャピタルゲイン狙いか
不動産投資で利益を出す方法には、保有する不動産を貸し出すことで継続的に家賃収入(インカムゲイン)を得る手法と、物件を売却して購入価格との差益(キャピタルゲイン)を狙う手法の2つがあります。インカムゲイン狙いか、キャピタルゲイン狙いかで投資スタンスは大きく変わります。
現在の不動産投資の主流は、インカムゲインを狙う手法です。一度に得られる収入は多くないものの、長期間安定した収入が入る確実性が高い方法と言えるでしょう。キャピタルゲイン狙いの場合、不動産売買を繰り返すことで事業性を持って不動産を売買していると見なされる場合があります。宅建業法違反になる恐れがあるため注意が必要です。
新築か中古か
不動産投資で運用する物件の選択肢には、中古物件と新築物件があります。一般的に、中古物件のほうが新築物件より土地の評価額に物件価格が近づいているため、高利回りです。中古物件は老朽化に伴うリスクがあるものの、すでに運用されているためイメージしやすく、入居者が入っているというメリットもあります。
一方、新築物件は新築に住みたいというニーズが多いため、入居率が高いのがメリットです。また、中古物件に比べて建物を長期間運用できます。所有する土地がある方は、新築アパートの建築を検討してもよいでしょう。
エリアを限定するか限定しないか
購入する不動産のエリアを限定するかどうかも検討するポイントのひとつです。エリアを限定しない場合、「購入できる不動産の選択肢が多くなり、チャレンジの機会が増える」「ハザードマップ等を踏まえて選ぶことで、自然災害へのリスクヘッジができる」といった点がメリットです。物件の管理に関しては、自宅から遠くても管理会社に委託できるため、あまり心配する必要はないでしょう。
一方、自分が住んでいる、あるいは土地勘のあるエリアに限定すると、「賃貸需要の予測が立てやすい」「自分でも管理しやすい」といったメリットがあります。
専門家と相談してスタンスを練ってみよう
不動産投資のスタンスを決めるには、さまざまな要因が絡みます。特にこれから不動産投資を始める方が、投資スタンスを全て一人で決めるのは難しいでしょう。
あらゆる情報を検索できる時代ですが、それだけに何を信用すべきか、情報の取捨選択が必要です。不動産投資に関しては「区分マンション投資が良い」「築古戸建て投資がベスト」「アパート投資が効率的」など、インターネット上にはさまざまな情報があふれています。
物件の種別や築年数によって、メリットとデメリットはさまざまです。また、融資を組んで購入する場合は、物件を具体的に検討する前にどのような融資が組めるのかを明確にしておくことがおすすめです。資産状況や年収、リスクをどれほど許容できるのかを加味した上で、自身に合った投資スタイルを決めるとよいでしょう。
不動産投資を始める際は、不動産のプロである不動産会社に相談することをおすすめします。不動産投資に関する専門家のアドバイスがもらえる他、投資を始める理由を人に話すことで、自分の考えが整理されるといったメリットもあります。
まとめ
不動産投資では利回りの最低ラインを決める必要はありません。決めることで失敗の原因になったり、機会損失をしてしまう可能性もあります。単純に利回りの高さだけで不動産を選ぶと、リスクの高い物件を購入してしまう恐れがあります。
まずは不動産投資の目標を明確にし、自分自身の投資スタンスを確立させることが大切です。ファミリーコーポレーションでは、お客様の状況に合わせ「物件」「融資」「税金」を絡めた多角的な目線でのご提案が可能な無料個別相談を実施しております。ぜひお気軽にご活用ください。