建物の耐用年数はどれくらい?中古アパートを例に計算方法を解説
目次
耐用年数は建物の減価償却費を計算する際に使用する項目のひとつであり、建物の種類や構造、管理状況などによって異なります。不動産投資を始めるに当たり、建物ごとの耐用年数や減価償却の計算方法などについて知りたい方もいるでしょう。
そこでこの記事では、耐用年数の概要や減価償却との関係、中古アパートを例にした減価償却費の計算方法などについて詳しく解説します。
建物の耐用年数とは
一口に耐用年数といっても3つの考え方があり、単純に建物の寿命を示すだけではありません。中でも法定耐用年数は公平かつ客観的に不動産の価値を把握するためのものであり、減価償却費の計算にも利用されます。ここでは、耐用年数の考え方や建物の構造別法定耐用年数について解説します。
耐用年数の考え方
耐用年数といえば単純に建物の寿命を意味し、適切な管理やメンテナンスが行われている建物ほど耐用年数が長い傾向にあります。しかし建物の寿命以外にも「法定耐用年数」や「経済的耐用年数」といった言葉があり、それぞれ意味合いが異なる点に注意が必要です。
「法定耐用年数」は減価償却費の計算で用いるもので、建物の種類や構造、用途によって国が定めています。減価償却とは法定耐用年数で定められた年数に応じて建物の取得費を分割し、毎年経費計上できる仕組みです。
「経済的耐用年数」とは、建物の経済的価値がなくなるまでの年数のことです。建物の寿命と意味合いが似ていますが、経済的耐用年数は将来的に発生が予想される修繕費なども考慮して算出されます。
法定耐用年数一覧
法定耐用年数は、木造や鉄筋コンクリート造、鉄骨造などの構造によって異なる他、事業所用か店舗・住宅用かによっても異なります。建物の構造別法定耐用年数は以下の表の通りです。
事業所用 | 住宅用 | |
木造・合成樹脂造 | 24年 | 22年 |
木骨モルタル造 | 22年 | 20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造・ 鉄筋コンクリート造 | 50年 | 47年 |
れんが造・石造・ブロック造 | 41年 | 38年 |
鉄骨造 | 22年(骨格材肉厚が3mm以下) 30年(骨格材肉厚が3㎜超4㎜以下) 38年(骨格材肉厚が4㎜超) | 19年(骨格材肉厚が3mm以下) 27年(骨格材肉厚が3㎜超4㎜以下) 34年(骨格材肉厚が4㎜超) |
建物の法定耐用年数と減価償却の関係
建物の耐用年数の中でも、法定耐用年数と減価償却は切っても切れない関係にあります。というのも、減価償却は法定耐用年数に応じて行うためです。ここでは、減価償却の概要や必要なタイミング、計算方法について詳しく解説します。
減価償却の概要
減価償却とは、減価償却資産の取得にかかった費用を法定耐用年数に応じて分割し、経費として計上する会計方法です。減価償却が可能なのは「取得価額が10万円以上かつ時間の経過によって価値が減る資産」であり、事業などの業務に利用されるものに限ります。例えば建物や自動車、機械、ソフトウェアなどが挙げられます。
なお、土地は時間の経過によって価値が下がる資産ではないため、不動産の減価償却を行う際は土地と建物を分けて計算する必要があります。
減価償却費は実際に支出を伴わない経費であり、うまく活用すれば所得税や住民税の負担をおさえられます。一般的に法定耐用年数が短いほど1年当たりに計上できる減価償却費が多くなるため、節税効果が高くなるでしょう。
減価償却が必要なタイミング
投資用不動産の運用により家賃収入を得た場合、経費のひとつとして減価償却費を計上できます。家賃収入から減価償却費などの諸費用を差し引いた不動産所得が年間20万円を超えるときは確定申告をしなければなりません。
不動産所得は給与所得など他の所得との損益通算が可能なため、減価償却費を計上して赤字として申告すれば所得税や住民税の負担をおさえられます。また、不動産売却によって譲渡所得を得た場合にも減価償却の計算が必要です。
減価償却費の計算方法
減価償却費の計算方法は、一般的に「定額法」と「定率法」に分けられます。定額法は毎年同じ金額の減価償却費を計上する方法であり、比較的計算が簡単です。定額法における減価償却費は「取得価額×定額法の償却率」で求められます。
それに対して定率法における減価償却費は初年度が最も高く、その後は年数の経過に応じて一定の割合で減少していくのが特徴です。ただし償却保証額(取得価額に耐用年数に応じた保証率を掛けて算出)に満たなくなった場合は毎年同額になります。定率法による減価償却費は「未償却残高×定率法の償却率」で計算されます。
中古アパートにおける耐用年数の計算方法
中古資産を取得した場合は、法定耐用年数ではなく「見積耐用年数」を算出して減価償却費を求める必要があります。また、築年数が法定耐用年数を超過しているか超過していないかによっても計算方法が異なる点に注意が必要です。ここでは、中古アパートにおける耐用年数の計算方法について詳しく解説します。
法定耐用年数のほうが築年数より長い場合
築10年の木造アパートを例に、減価償却費の計算方法を見ていきましょう。使用可能期間である見積耐用年数は「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」で計算されるので、「(22年-10年)+10年×20%=14年」となります。
見積耐用年数が14年の場合における定額法の償却率は0.072です。そのため、木造アパートの取得費が5,000万円であったときの1年当たりの減価償却費は「5,000万円×0.072=360万円」です。
(参考:『国税庁 減価償却資産の償却率等表』)
築年数が法定耐用年数を超過している場合
次に築25年の木造アパートを例に、減価償却費を計算していきます。法定耐用年数を超過している場合の見積耐用年数の求め方は「法定耐用年数×20%」です。つまりこのケースにおける見積耐用年数は「22年×20%=4年(小数点以下切り捨て)」となります。
法定耐用年数が4年の場合の償却率は0.250であるため、木造アパートの取得費が5,000万円であった場合の1年当たりの減価償却費は「5,000万円×0.250=1,250万円」です。
(参考:『国税庁 減価償却資産の償却率等表』)
減価償却を活用した不動産投資の節税方法
不動産投資で節税効果を得られると言われる理由として、減価償却費を経費計上できる点が挙げられます。1年当たりに計上する減価償却費が多いほど節税効果が高くなるので、法定耐用年数が短い木造アパートや築年数が古い投資用不動産を購入すれば、より高い節税効果を得られるでしょう。
ここでは、減価償却を活用した不動産投資の節税方法、より高い節税効果を期待できる物件の特徴を紹介します。
減価償却を活用した節税の仕組み
不動産投資で得た利益は不動産所得として扱われ、所得税や住民税の課税対象となります。減価償却を活用すると節税につながる理由として、減価償却費が実際には支出を伴わない経費であることが挙げられます。
手元の現金は減らさずに帳簿上は赤字として申告できるため、給与所得などと赤字分を相殺(損益通算)することで税金の負担を軽減することが可能です。
【物件の特徴その1】木造である
減価償却期間は法定耐用年数に応じて計算されるので、法定耐用年数が短い木造アパートのほうが1年当たりに計上できる減価償却費が大きくなります。
一般的に、マンションは鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造のため法定耐用年数が長くなります。減価償却費を大きく取れないことから、高い節税効果は得にくいといえるでしょう。
そのため、高い節税効果を得たい方は木造の一棟アパートが向いているでしょう。
【物件の特徴その2】築年数が古い物件である
中古の投資用不動産の場合、築年数が法定耐用年数を超過した場合でも見積耐用年数(法定耐用年数×20%)で減価償却できます。築年数が古い投資用不動産は新築と比べて減価償却期間が短いため、経費計上できる減価償却費が大きくなります。
より高い節税効果を得たい場合は、木造アパートの中でも築年数が経過したものを選ぶとよいでしょう。
まとめ
不動産投資では、建物の法定耐用年数を基に減価償却費を算出します。減価償却を活用して節税するには1年当たりの減価償却費を大きくすることが大切であり、そのためには法定耐用年数が比較的短い中古アパートがおすすめです。
ファミリーコーポレーションは中古アパートの販売実績が豊富であり、多くの不動産投資家にご利用いただいております。お客様のご意向や資産背景に合わせ、「物件」「融資」「税金」を絡めた多角的な目線でアドバイスいたします。中古アパート経営に興味がある方は、ぜひファミリーコーポレーションにご相談ください。