不動産投資ローンとは?今さら聞けない疑問や審査に通るコツを解説
目次
不動産投資ローンと住宅ローンはどちらも不動産を購入するためのローンですが、目的や金利、審査方法が大きく異なります。住宅ローンは自身が住む住宅の購入が目的ですが、不動産投資ローンは収益用物件の購入を目的としています。
不動産投資を行ううえでローンを活用して取り組もうと考えている場合は、不動産投資ローンに関する知識をおさえておく必要があります。
本記事では不動産投資ローンの概要や住宅ローンとの違い、借入の流れなどを解説します。「不動産投資のローンを検討している方」や「自己資金割合が気になっている方」「ローンの審査を通過するためのコツを知りたい方」はぜひ本記事を参考にしてください。
不動産投資ローンとは
不動産投資ローン(事業用ローン)とは投資用マンションやアパートなどの収益物件を購入するためのローンです。不動産投資ローンの利用目的は収益物件の購入だけに限定されており、マイホームを購入するための住宅ローンとは審査方法などが異なります。
不動産投資ローンと住宅ローンとの違い
不動産投資ローンと住宅ローンは、以下の3つの点で違いがあります。
- 借入の目的
- 返済原資
- 融資審査
不動産投資ローンと住宅ローンの違いについて次の項目から詳しく紹介していきます。
借入の目的
不動産投資ローンと住宅ローンの借入の目的は異なり、以下の理由があげられます。
不動産投資ローン | 不動産投資物件を購入するため |
住宅ローン | 自宅の購入および増改築に充てるため |
不動産投資ローンの借入の目的は、投資用マンションなどの事業用不動産(収益物件)の購入です。一方で住宅ローンは居住用不動産(マイホーム)の購入費用や増改築リフォームの費用の調達を目的とします。
返済原資
不動産投資ローンと住宅ローンの返済原資は異なり、以下のような違いがあります。
不動産投資ローン | 毎月の家賃収入 |
住宅ローン | 毎月の給与収入など |
不動産投資ローンは不動産投資事業によって得られる家賃収入が返済原資になります。
一方、住宅ローンの返済原資は、会社員や公務員などの給与所得者の場合、毎月の給与やボーナスになり、自営業者や個人事業主の場合は所得金額になります。
融資審査
不動産投資ローンと住宅ローンそれぞれの融資審査では以下にあげる点が重視されます。
不動産投資ローン | ・本人の属性や返済能力(年収・勤務先・勤続年数など) ・投資によってどの程度の利益が見込めるか ・物件の担保価値がどの程度あるか ・長期的な採算性が見込めるか ・ほかのローンを契約しているか ・株や生命保険、預金があるかどうか |
住宅ローン | 本人の属性や返済能力(年収・勤務先・勤続年数など) |
不動産投資ローンの審査では、本人の属性や返済能力だけでなく、購入する物件の収益性や資産価値なども審査の対象になるのがポイントです。
不動産投資ローンのメリット
不動産投資ローンを利用するメリットとして、以下の4点があげられます。
- 自己資金は少額でも高額の物件を購入できる
- 手元に資金を残せる
- 団体信用生命保険に加入できる
- 不動産投資の収益でローンの返済ができる
不動産投資ローンのメリットについて次の項目から詳しく紹介していきます。
自己資金は少額でも高額の物件を購入できる
自己資金が十分ではない場合でも、高額の物件を購入できる可能性があるのが不動産投資ローンのメリットです。ローンなどを用いて少ない元手で投資効果と収益性を高めることを「レバレッジを効かせる」といいます。
本人の年収や物件の収益性にもよりますが、自己資金500万円の場合、ローンを利用することで、1,300万円~3,000万円程度の一棟アパートの購入が可能になります。(なお、自己資金500万円には購入時の諸費用も含みます。)自己資金で購入した場合と比べて、投資規模が大きくなり投資の効率を上げることができます。
手元に資金を残せる
不動産投資では突発的な設備の故障等による修繕が必要になることもあるため、手元にある程度の現金を残しておく必要があります。
不動産投資ローンを利用することで、手元に資金を残したままの状態で物件を購入できるため、メリットがあります。
また、貯金をすべて不動産投資に回してしまうと、病気や失業など万一のときに現金が足りなくなってしまい、生活が破綻する恐れもあります。手元の資金は生活を守るうえで重要であり、最低でも月収の3ヶ月分程度の貯金は必要です。
団体信用生命保険に加入できる
不動産投資ローンを組む際には、団体信用生命保険(以下:団信)への加入が一般的であり、加入すると以下のメリットが得られます。
- 契約者が死亡などの理由でローンの支払いができなくなった場合、保険金でローンが弁済される
- 相続人はローンの残債がない物件を相続でき、継続的な家賃収入および売却時の利益を得られる
団信に加入しておくと、万が一本人が完済前に亡くなったり、高度後遺障害を負ってしまった場合には保険金が支給されローンが弁済されます。残された家族は残債のない収益物件を相続でき、家賃収入で生活を支えられるため安心です。
なお、団信に加入する際は健康に関する告知が必要であり、告知事項に該当すると金利が上昇してしまう可能性があるほか、団信に加入できず不動産投資ローンが組めなくなるケースもあります。加入の可否は団信を扱う生命保険会社が判断しますが、持病がある方は注意が必要です。
不動産投資の収益でローンの返済ができる
他人のお金である家賃収入でローンの返済ができるのは、不動産投資ローンならではのメリットです。
住宅ローンは毎月の給料やボーナスで返済するのに対し、不動産投資ローンは収益物件から得られる家賃収入を原資として返済します。
家賃収入でローンの返済を続け、残債が減ってくると、新たな物件を購入するためのローンの借入もできるようになります。さらに収益をあげたい場合は、物件をどんどん購入して、投資規模を拡大できます。
ただし、不動産投資では空室リスクや家賃下落リスク、家賃滞納リスクなどがあり、想定していた家賃が入ってこない場合があります。投資規模を拡大する場合は、リスクを考慮したうえで慎重に行いましょう。
不動産投資ローンのデメリット
不動産投資ローンを利用して不動産投資を行うとさまざまなメリットが受けられますが、一方でデメリットがある点についても注意しておく必要があります。
不動産投資ローンの主なデメリットは以下の通りです。
- 住宅ローンと比べ金利が高い
- 住宅ローンが組みづらくなる
- 審査が厳しい
不動産投資ローンのデメリットについて次の項目から紹介していきます。
住宅ローンと比べ金利が高い
不動産投資ローンは住宅ローンと比べて金利が高い点がデメリットです。不動産投資ローンと住宅ローンの金利の目安は、以下のようになります。
住宅ローン | 0.5%~2.0%程度 |
不動産投資ローン | 2.0%~4.0%程度 |
不動産投資ローンの金利が高めになる理由は、事業用不動産に対する融資であり、空室リスクや家賃下落リスクなどをふまえた収益性を考慮する必要があるためです。
融資を行う金融機関は想定していた家賃収入が得られなければローンの返済が滞ってしまう可能性があるため、その点を金利に反映させています。
一方、住宅ローンは、生活の基盤となる居住用不動産(マイホーム)の購入資金を融資するため、毎月の給料やボーナスで返済されます。住宅ローンの金利は不動産投資ローンと比較すると低めに設定されます。
住宅ローンが組みづらくなる
不動産投資ローンを利用すると与信枠は減少するため、住宅ローンが組みづらくなるデメリットがあります。
与信枠とは金融機関から融資を受けられる上限を指し、不動産投資ローンを利用すると残債分だけ与信枠は減少します。もし、与信枠が5,000万円の場合に不動産投資ローンで4,000万円の融資を受けると、残りは1,000万円に減少してしまい、購入できる物件の幅がせまくなります。
なお、詳しくは後述しますが、不動産投資ローンを利用すると住宅ローンが組みづらくなるのは事実ですが、全く不可能というわけではありません。
審査が厳しい
不動産投資ローンは融資担当者が本人の返済能力だけでなく以下の点を見極める必要があるため、住宅ローンと比べると審査が厳しい傾向にあります。
- 収益物件の収入だけで返済できるか
- 収益物件は担保として資産価値があるか
- 経営者としての信頼性
- 事業継承者がいるか
不動産投資は「賃貸経営」と呼ばれるように「経営者として事業を行う」と同じ意味であるため、本人の属性や信用情報だけでなく、事業の収益性や継続性なども審査対象になります。
収益物件の実質利回りや資産価値などは特に慎重に調査が行われ、リスクが大きいと判断されると融資額の割合が低く自己資金を多く投じる必要が発生したり、審査に落ちる場合もあります。
不動産投資ローンの素朴な疑問
不動産投資ローンに関する疑問や不安は多くの投資家が抱いています。融資額の目安はどれくらいか、頭金や連帯保証人の必要性など、多岐にわたるでしょう。ここでは、それらの素朴な疑問や不安についての見解を述べます。一般論も含むため、あくまで参考としてご覧ください。
年収いくらなら融資を受けやすい?
不動産投資ローンの審査において、融資を受けやすい年収ラインは700万円以上といわれています。ただし、年収だけが融資の決定要因ではありません。購入する物件の収益性も重要な審査ポイントです。収益性の高い物件であれば、年収が700万円に満たなくても融資が承認される可能性があります。
さらに、融資の可否は以下の要素によっても変わります。
- 借入先の銀行
各銀行によって重視する基準が異なります。例えば、日本政策金融公庫は非営利機関であり、経済発展や産業の発展を目的に活動している性格上、民間の金融機関から融資を受けにくい年収帯の方への融資にも積極的です。また、地域に密着している地方銀行や信用金庫・信用組合の審査基準は都市銀行ほど厳しくないといわれています。
- 勤務先の信用度
信用度の高い企業に勤めていると、信用力が高いと判断されやすくなることが多いです。
- 資産状況
所有する資産が多ければ、返済能力が高いと評価されます。また無借金の不動産を所有していれば、物件を担保に有利な条件で借入ができることもあります。
- 借入状況
自動車ローンや教育ローンなどの借入があると与信枠に影響があるため注意が必要です。
融資額の目安は年収の何倍?
一般的に、不動産投資ローンの融資限度額は年収の7倍から10倍程度が目安とされています。年収600万円の方であれば、融資可能額は4,200万円から6,000万円が期待できます。
前述したように、不動産投資ローンの審査は物件の収益性や勤務先の信用度、資産状況といった属性を総合的に見て判断するため、場合によっては年収の10倍以上の融資を受けられることもあります。逆に、審査の結果、年収の7倍以下の融資しか受けられないこともあるでしょう。
頭金の目安はどれくらい?
不動産投資のローンを組む際の頭金の価格は、「物件価格の10%~20%」が目安とされています。例えば、2,000万円の物件であれば、頭金として200万円から400万円を用意することが一般的です。
なお、金融庁がまとめた『投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果』によれば、金融機関の多くは頭金を求めています。
頭金を入れることによって月々のローン返済額が減り、長期的に返済負担を軽減できることから、頭金を用意することは非常に有益です。
結局は勤務先の信用力がものをいう?
勤務先の信用力が大きな影響を持つのは間違いないでしょう。大企業の社員や公務員、医師や弁護士といった社会的信用力のある方は安定収入を見込め、長期にわたってローンを返済できる能力があると判断されやすいためです。
景気の変動や市場の変化に対しても安定的だと見なされ、「雇用が守られる」という点が強みとなり、高い評価を与える傾向があります。反対に、たとえ年収が高くても、勤務先の信用力が低い場合や不安定な職業に就いている場合、金融機関は融資に慎重になる可能性が高いでしょう。
連帯保証人は立てたほうがよい?
連帯保証人は、必ずしも立てる必要はありません。金融機関は、連帯保証人を求める代わりに、借り手の信用力や購入物件の収益性、担保価値などを総合的に評価して融資を行うようになっています。
背景には、民法改正による連帯保証人制度の変更があります。連帯保証人制度がもたらすリスクや負担を軽減しようとする動きの一環で、連帯保証人を立てることへのハードルが上がりました。必要書類が増え、手続きも煩雑化したことから、金融機関も連帯保証人を必須条件としないケースが増えています。
不動産投資ローンを組んでいても住宅ローンは組める?
不動産投資ローンを組んでいる場合であっても与信枠に余裕があれば、住宅ローンを組むことは可能です。
与信枠とは、金融機関から融資を受けられる金額の上限を指します。不動産投資ローンを利用していても与信枠が残っていれば住宅ローンを利用できます。いくら融資を受けられるかは、前述したように年収の7倍~8倍、属性によっては年収の10倍以上も可能です。年収500万円の方であれば、与信枠は最高5,000万円程度を見込めるため、不動産投資ローンと住宅ローンの両方を組める可能性があります。
また、与信枠以外にも返済比率が大きすぎない必要があります。返済比率とは年収に占める年間のローン返済額の割合です。返済比率が高くなりすぎるとローンの返済が困難になりやすく、生活に支障をきたしてしまう可能性があります。
住宅ローンを利用して収益物件を購入できる?
住宅ローンを利用して不動産投資はできません。住宅ローンは居住用不動産(マイホーム)を購入するためのローンであり、本来の目的以外に利用すると契約違反になります。
不動産投資ローンよりも住宅ローンの方が金利は低く、審査も通りやすいため、住宅ローンを利用して不動産投資をする人が稀に存在します。しかし、住宅ローンを利用して不動産投資を行うのは契約違反であり、不正が発覚すると残債の一括返済が求められます。
なお、住宅として購入をしたが、転勤等によって住宅を不動産投資物件にする場合は借入をしている金融機関に相談することで、金利の見直し等で不動産投資物件として利用できることもあります。また、賃貸併用物件の場合は一定の条件(建物の半分以上が自宅であるなど)を満たすと住宅ローンを使用できます。
不動産投資ローンの審査を通過するためのコツ
不動産投資ローンの審査を通過するためには、以下のポイントをおさえておきましょう。
- 銀行には不動産会社からの紹介で行く
- 資産価値の高い物件を選ぶ
- 不動産賃貸業を目的にする
- 属性をよくする
- 地方銀行・信用金庫・労働金庫も視野に入れる
不動産投資ローンの審査を通過するためのコツについて解説します。
銀行には不動産会社からの紹介で行く
ローン融資を受ける金融機関を決める際は、物件を販売している不動産会社に紹介してもらうのが一番です。不動産会社と提携している金融機関だと審査に通りやすく、金利も優遇される可能性が高まります。
資産価値の高い物件を選ぶ
資産価値の高い物件を選ぶと不動産投資ローンの審査が通りやすくなります。金融機関が融資を行う際は以下の2点が重点的にチェックされます。
- 安定的に家賃収入を得られるか(収益性)
- 返済が滞ったときに担保としての価値があるか(資産価値)
金融機関はこれらの点を評価するために、「収益還元法」と「原価法」の2つの方法を用いて物件の審査を行います。収益還元法では、物件が将来的にどれだけの収益を生むかを評価し、原価法では、物件の再調達価格や路線価(道路に面している土地の評価)などを基に資産価値を算定します。
立地条件が良く、長年にわたって高い入居率を維持できそうな物件であれば年収などの属性が弱い場合も審査に通る可能性はあるでしょう。
不動産賃貸業を目的にする
不動産投資ローンの審査を通過するためには、不動産賃貸業を目的にする必要があります。
例えば、短期間だけ保有して売却益(キャピタルゲイン)の獲得を目指すために購入する場合や、相続税の節税だけを目的に購入する場合などは、不動産投資ローンの利用は難しいです。
不動産投資ローンは賃貸経営をして家賃収入(インカムゲイン)を得る目的以外での利用は原則としてできない点をおさえておきましょう。
属性をよくする
不動産投資ローンの審査を通過するためには、属性(年齢や勤務先、収入などの個人情報)をよくする必要があります。不動産投資ローンの審査では物件の収益性や資産性が重視されますが、本人の属性や返済能力についても当然ながらチェックされます。
属性は簡単に変えられるものではありませんが、「事業で安定した収入を継続して得られている」と証明する書類の提出は非常に大切です。また、消費者金融のフリーローンなど他に組んでいるローンがあれば一度見直し、繰り上げ返済しておくのも印象を良くする方法のひとつです。
地方銀行・信用金庫・労働金庫も視野に入れる
前述したように、不動産投資ローンを申し込む際はメガバンクだけでなく地方銀行や信用金庫、労働金庫なども視野に入れると融資を受けられる可能性が広がります。
メガバンクの不動産投資ローンは金利が低い点が魅力ですが、審査が厳しく、属性によっては審査に落ちてしまう可能性が高いです。
一方で、地方銀行や信用金庫、労働金庫などの地方の金融機関は、地域の住民が主な顧客であるため柔軟な対応を行ってくれるほか、メガバンクよりも審査基準は易しい傾向があります。
もし、地方の金融機関の口座を開設していて取引がある場合は、融資担当者に相談してみると良いでしょう。
不動産投資ローン借入の流れ
不動産投資ローンの借入は以下の流れですすめられます。
- ローンの事前審査
- 物件の売買契約の締結
- ローン本審査
- 金銭消費貸借契約の締結
- 融資実行と物件決済引き渡し
不動産投資ローンを利用する際の借入の流れを紹介していきます。
ローンの事前審査
不動産投資ローンの審査は「事前審査(仮審査)」と「本審査」があります。まずは売買契約の締結前に事前調査を受ける必要があり、本審査は締結後に行われます。
金融機関の事前審査を受けるには投資対象物件を選定後、不動産業者や売主に物件購入の意思を伝えてから、不動産投資ローンを提供している金融機関に買付証明書(買付申込書)や属性がわかるプロフィールシートや購入物件の資料を提出します。
事前審査では本人の属性や返済能力が重点的にチェックされ、融資の可否が判断されます。事前審査の結果、融資が可能と判断できれば物件の売買契約の締結を行います。
もし事前審査に落ちると融資は受けられないため、ほかの金融機関を利用するなど、別の方法で資金調達をするしかありません。
物件の売買契約の締結
事前審査に通過すると不動産会社や売主と物件の売買契約を締結します。売買契約を締結する際は、契約書に「ローン特約」が盛り込まれているか確認し、以下の項目に目を通しましょう。
- ローンを借入る金融機関の名称
- ローン融資額
- ローンの金利や借入期間
- ローンが承認されるまでの期間
- ローンが承認されない場合の対応策
ローン特約が盛り込まれているか確認が必要な理由は、事前審査に通過しても本審査で落ちてしまうケースがあるためです。ローン特約は融資の本審査に通らなかった場合に売買契約の解除と手付金の返還が求められる特約です。売買契約を締結する際は組み込まれている内容を確認しましょう。
売買契約書にローン特約の記載がなければ、本審査で落ちてしまって融資が受けられなくなった場合にトラブルの原因になります。
ローン本審査
ローン本審査は売買契約を締結後に行われる審査です。本審査に通過すると正式に融資が受けられるようになり、金融機関との間で金銭消費貸借契約を締結すると投資資金を受領できます。
事前審査では本人の属性や返済能力の審査が中心でしたが、本審査では物件の収益性や資産価値(担保価値)を中心に審査が行われます。
また、本審査では金融機関だけでなく保証会社の審査も行われ、団体信用生命保険(団信)に加入するための健康状態のチェックも実施されます。
本審査は時間をかけて入念に審査が行われるため、金融機関にもよりますが、結果が判明するまでに1週間から1ヶ月程度かかります。本審査に通過すると金融機関との間で金銭消費貸借契約を締結します。
金銭消費貸借契約の締結
金銭消費貸借契約(金消契約)は、金融機関からお金を借りるための契約です。融資を受ける際には金融機関との間で金銭消費貸借契約を締結します。
金銭消費貸借契約書には返済計画や設定金利などを記載します。金銭消費貸借契約を締結する際は、以下のものが必要になります。
- 印鑑登録証明書
- 実印(印鑑登録証明書の登録印)
- 住民票
- 本人確認資料(運転免許証やパスポートなど)
- 健康保険証
- マイナンバーカード
注意点として金銭消費貸借契約を締結する際はマイナンバーカードが必要になるケースが多く、マイナンバー通知カードでは代用できない場合があります。まだ発行していない場合は、住所地の市区町村役場で発行しておきましょう。
融資実行と物件決済引き渡し
金銭消費貸借契約を締結後、ローンの融資実行と物件の決済・引き渡しを行います。また同時に所有権移転登記および抵当権設定登記が行われます。登記手続きは司法書士が代行し、融資が実施される金融機関に関係者が集まって手続きが行われるケースが多いです。
融資事務手数料や仲介手数料などの諸費用は引き渡し段階で支払います。また、売買契約時に不動産会社が印紙税を立て替えている場合もこのタイミングで支払います。
固定資産税や都市計画税、管理委託手数料、賃料、運営にかかるさまざまなランニングコストは、物件の引き渡し日を基準に日割り計算で精算されるのが一般的です。
不動産投資ローンの返済で失敗しない方法
不動産投資ローンの返済で失敗しないためには、以下の点に気をつけましょう。
- 金利は低く・返済期間は長くする
- 物件の選び方を間違わない
- レバレッジをかけすぎない
- サブリース契約を過信しない
- 必要経費を考慮する
- 空室や家賃滞納には早急に手を打つ
- 修繕計画を立てておく
- 売却益で完済する
不動産投資ローンの返済で失敗しない方法について次の項目から解説します。
金利は低く・返済期間は長くすること
まず、ローンの金利が低いことは非常に重要です。イールドギャップは3%以上を目指しましょう。
イールドギャップとは、物件から得られる収益率(家賃収入)とローン金利の差のことです。例えば、物件の収益率が5%でローン金利が2%の場合、イールドギャップは3%になります。この差が大きいほど投資の利益が高くなるため、ローン金利をできるだけ低くおさえることが重要です。
次に、キャッシュフローに大きな影響を与えるのが、返済期間の長さです。返済期間を長く設定することで、毎月の返済額が減り、手元に残るお金が増えます。予期せぬ出費や物件のメンテナンス費用に対応する余裕が生まれるでしょう。
物件の選び方を間違わないこと
不動産投資ローンの返済で失敗しないためには、物件の選び方を間違わないことが極めて大切です。物件の選定を間違うと想定していた家賃収入が得られず、不動産投資ローンの返済で失敗してしまいます。
毎月のローン返済が滞らないようにするためには、自分の支払い能力に合った物件を選ぶようにしましょう。また、ある程度の利回りが期待でき、不動産収入を安定して得られる物件が望ましいです。
物件選びの際は不動産投資の目的を明らかにすることが大切です。目的が節税対策であれば、1年あたりの減価償却費を多く経費計上できる中古物件がおすすめです。また、中古物件は新築よりも利回りが高い傾向があるため、収益が目的の場合にも適しています。
レバレッジをかけすぎないこと
自己資金が十分ではない場合でも、レバレッジを効かせると高額の物件を購入でき、効率的に収益を生み出せます。
しかし、レバレッジをかけすぎてしまうと返済額も大きくなるため、空室率の上昇や家賃滞納の増加などで家賃収入が減少してしまった際に、ローンの返済が困難になってしまう事態につながります。
また、借入金が増えると金利の影響を受けやすくなり、利上げが行われたときにはローンの返済額が増加します。不動産投資を成功させるには利益だけを追求するのではなく、リスクを回避するための準備も大切です。
サブリース契約を過信しないこと
サブリース契約を過信すると不動産投資ローンの返済で失敗する恐れがあります。サブリース契約とは一定の手数料を支払い賃貸物件の管理一式を不動産管理会社に依頼し、空室があっても家賃保証を受けられる契約方法を指します。
空室があっても家賃保証を受けられるため、サブリース契約をしておくと安心と思われがちですが、さまざまな注意点があります。サブリース契約の手数料は賃料の10%〜20%程度と高額であるため、空室率が低い場合は収益率が悪化する場合があります。
また、賃貸借契約の更新時には賃料の見直しによって保証賃料が低下するケースも多いです。賃料が下がってしまうと想定していた家賃収入が得られなくなり、ローンの返済が滞ってしまう恐れがあるため、サブリース契約を過信するのは禁物といえます。
必要経費を考慮すること
不動産投資をする際には経費がかかるため、必要経費を考慮しないと不動産投資ローンの返済で失敗する場合があります。不動産投資にかかる経費として、以下の項目があげられます。
- 所得税や固定資産税などの税金
- 管理委託費
- 修繕費
- ローン返済元金
- ローン金利
- 広告費
- 減価償却費
- ランニングコスト
- その他の費用
不動産投資では各種税金や、修繕費、入居付けの際の広告費などが経費として発生するため、あらかじめキャッシュフローに組み込んでおく必要があります。
不動産投資で得られる手取り金額は、家賃収入から上記の必要経費を差し引いた金額です。収益物件の広告に記載している利回りは、多くの場合は税金などの経費を考慮していない表面利回りであるため、実際の利回りとは異なります。
表面利回りのみで収益物件を選ぶのは大変危険であるため、必要経費を考慮した実質利回りで収益をシミュレーションしましょう。
空室や家賃滞納には早急に手を打つこと
空室や家賃滞納が続くとローンの返済が苦しくなります。長期にわたるとキャッシュフローに大きな影響を与え、投資計画全体が崩れてしまいかねません。特に家賃滞納への対応は毅然とした姿勢で催促することが重要です。
このようなリスクを最小限におさえるためにも、信頼できる管理会社に物件の管理を依頼することが重要です。実績のある管理会社であれば、入居者の募集や選定、家賃の徴収、物件の維持管理などを適切に行ってくれるでしょう。家賃滞納が発生した場合にも迅速に対応し、回収を図る体制が整っている管理会社に管理を委託すれば、オーナーの負担を軽減できます。
修繕計画を立てておくこと
突発的な修繕が発生し、手持ち資金が減る可能性は大いにあります。例えば、水漏れや電気設備の故障、外壁の補修などは、修繕費用が高額になることもあります。
避けたいシナリオは、キャッシュフローが大きく減少し、ローンの返済が難しくなり、修繕費用を捻出するために貯蓄を取り崩すことです。
このようなケースを回避するために、毎月の家賃収入の一部を修繕費用として積み立てたり、予備資金を確保しておいたりする施策が重要です。しっかりとした計画と準備をしておくことで、不動産投資の安定運営とローン返済の確実性を高めることができます。
売却益で完済すること
不動産投資ローンを着実に返済する方法は主に、「正攻法で完済する」「繰り上げ返済をしながら返済期間を短くする」「売却時に完済する」の3つです。それぞれメリット・デメリットがありますが、最終的には売却時に完済するのが最もおすすめです。
- 正攻法で完済するメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・毎月の返済額が一定で計画が立てやすい ・ローン完済後、自分の資産となる | ・長期間にわたる利息支払いにより、総返済額が大きくなる ・不動産市場の変動により、物件価値が下がるリスクがある ・長期運用のため大規模修繕が必要になる可能性あり |
正攻法で完済を目指すのは安全に見えて、相応のリスクをはらんでいるともいえます。
- 繰り上げ返済をしながら返済期間を短くするメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・利息支払いが減少するため、総返済額が少なくなる ・ローンを早く完済できるため、精神的な負担が軽減される ・正攻法より早期に自分の資産となる | ・繰り上げ返済を行うために、毎月の支出が増える ・繰り上げ返済により手元資金が減少し、予期せぬ出費に対応しづらくなる |
繰り上げ返済は、現金や資産に余裕のある方が行う分にはよいですが、そうでない方にはデメリットのほうが心配です。また、キャッシュフローに余裕があれば繰り上げ返済に回すのではなく、追加投資を検討するという選択肢もあります。
- 売却時に完済するメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・利益確定ができる ・長期保有による不動産市場の変動リスクを避けられる ・売却益を他の投資や資産運用に回せる | ・売却のタイミングにより、得られる利益が変動する ・売却活動の手間がかかる ・現物資産を手放すことになる |
売却時に完済する方法は、売却のタイミングが重要ではあるものの、長期保有に伴うさまざまなリスクを回避することができます。売却益を他の投資に回すことで、さらなる資産の増加を目指すことも可能です。実績のある不動産会社に相談し、投資のスタート時から出口戦略についてもアドバイスを求めるとよいでしょう。
まとめ
不動産投資ローンを組むと自己資金以上の物件を購入できるため、少ない資金でも大きい利益を得られる(レバレッジ効果)メリットがあります。また、自身の手元に資金を残せる点も大きなメリットといえます。
一方で、「住宅ローンよりも金利が高い」「住宅ローンが組みづらくなる」などの注意点もおさえておく必要があります。
不動産投資ローンを組む際、銀行には不動産会社からの紹介で行くのがおすすめです。不動産会社と提携している金融機関の場合、融資条件を把握しやすく物件の購入時のシミュレーションがしやすくなります。また、審査にも通りやすく、金利も優遇される場合もあります。
ファミリーコーポレーションは、さまざまな金融機関との取引実績が豊富で、融資に関する情報を多数保有しています。不動産投資ローンに関することはファミリーコーポレーションにお任せください。