不動産投資ローンにおける団体信用生命保険(団信)の種類と加入条件|審査や保障内容の注意点
目次
住宅ローンを組む際は団体信用生命保険(団信)に加入するのが一般的です。
しかし、不動産投資ローンの場合、団信への加入は任意であるケースも多いため、加入するべきかどうかを自分で判断しなければなりません。
そこで本記事では「不動産投資ローンにおける団信の種類」や「加入条件」を解説します。団信の基礎知識を押さえて自分に合った適切な選択をしましょう。
団体信用生命保険(団信)とは
団体信用生命保険とはローンを組み不動産を購入する際に加入する保険です。
自分に適した保障内容を選ぶには団信の内容の理解を深める必要があります。団信の基本的な保障内容や一般の生命保険との違いなどについて、以下の項目で解説します。
団体信用生命保険と不動産投資ローン
ローンを組んで投資用不動産を購入する際に団信へ加入すると、加入者(不動産の名義人)が死亡した場合や高度障害によってローンを返済できなくなった場合など万が一の事態に保障を受けられます。
団信に加入していると保険金でローンの残債が完済(弁済)されるため家族に負担をかけずに済みます。
団信への加入が必須か任意かはローンを組む金融機関によって異なるため、まずは団信への加入義務を確認しましょう。
一部途中加入できる団信もありますが、一般的にはローン借入時に加入する必要があります。原則として途中で付加できないため加入するべきかどうかは慎重な判断が大切です。
団体信用生命保険の基本的な保障内容
団信の保険金が支払われるのは死亡時と高度障害状態時です。
高度障害状態とはケガや病気で身体機能が重度に低下した状態を意味します。どのような状態が高度障害に該当するかは生命保険によって異なりますが、団信で定められている高度障害は以下のような状態です。
- 両眼の視力を全く永久に失ったもの
- 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
- 中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
- 胸腹部臓器に著しい傷害を残し、終身常に介護を要するもの
- 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
さらに、特約を付けると保険金が支払われる条件が広がります。
加入済みの生命保険と保障内容が重複した場合
生命保険に加入している場合、団信の保障内容と重複している可能性があるためライフプランをもとに保障内容を見直す必要があります。
具体的に考慮する部分は「死亡保障」と「疾病保障」のバランスです。
たとえば団信に加入した後に死亡した場合、保障されるのは不動産投資ローンの残高のみですが、生命保険であれば保障期間や保険額を自分で設定できます。
また、がんと診断された場合、生命保険では数百万円の一時金が支払われるのが一般的です。一方で、がん団信に加入していればローン残高が0円になるため、場合によっては数千万円の保障額になります。
しかし、生命保険で受け取れる保険金は使い道が自由ですが、団信では保険金をローン残高の返済にしか利用できません。
団信はローン返済専用の保険、生命保険は生活や治療を支える保険と考えて問題ないでしょう。
家族構成や貯蓄額、病気と診断された後の生活など、さまざまな物事を踏まえて保障内容を見直す必要があります。
団信と一般的な生命保険の違い
団信と一般的な生命保険の違いは大きく4つの項目に分類でき、具体的な内容は以下の表の通りです。
団体信用生命保険 | 一般の生命保険 | |
保障期間 | 不動産投資ローンの返済期間中 | 年数、年齢、生涯保障などが選択可能 |
保障額 | 不動産投資ローンの残高分 | 保障額を自分で決められる |
保険料 | 借入金利に上乗せ (年齢・性別による違いはない) | 条件によって異なる (年齢、性別、保障期間など) |
中途解約・中途加入 | 基本的に不可 | 見直しや解約が可能 |
上記のほかにも税金面での違いがあります。
団信は加入者が死亡してローンを返済できない状態になると、保険会社から金融機関へ直接ローン残高相当の保険金が支払われるため相続の手続きは発生しません。
一方で、一般の生命保険の場合、保険金は受取人に振り込まれるため相続税の対象になります。保険金の使いみちは自由ですが、相続税が課される場合は納税の義務が生じます。
団体信用生命保険の種類
通常の団体信用生命保険を「一般団信」と呼びます。一般団信には特約を付けられるため数種類の団信に分けられます。
生命保険の特約とはメインの保険(主契約)に対して任意で付けられる保障です。
たとえば、死亡保障に加える「医療保障特約」などが該当します。より自分に合った保障内容にするためのオプションサービスと考えるとわかりやすいです。
団信の主契約の内容は「加入者が死亡・高度障害状態となった場合にローン残高を返済すること」です。特約を付ける前の団信契約を「一般団信」と呼びます。
一般団信に特約を付けると保険金が支払われる条件が以下のように広がります。
- がんを患った際に保障される「がん団信」
- 三大疾病を患った際に保障される「三大疾病保障特約付き団信」
- 三大疾病に5つの疾病を加えた「八大疾病保障特約付き団信」
また、特約ではありませんが持病を持っている方でも加入しやすい「ワイド団信」もあります。
がん団信
がん団信とは加入者ががんと診断された際に、保険金でローン残高が返済される特約です。がん団信の主なメリットは以下の2つです。
- 保険金額が大きい
- 入居者がいれば引き続き家賃収入が見込める
生命保険ではがんと診断された際に一時金として数百万円を受け取るのが一般的です。一方で、がん団信では不動産投資ローンの残高が保険金で完済されるため、生命保険よりも多くの保険金を受け取れる可能性があります。
さらにローン完済後も入居者がいれば引き続き家賃収入を得られ、以前よりも手元に残る資金が多くなる点が特徴です。
一方で、がん団信には以下2つの注意点があります。
- ローンの借入時以外は加入できない
- 加入時の年齢制限を設けていることが多い
団信の特約は主契約である一般団信とセットで加入する必要があり、途中加入や途中解約はできません。リスクに備えるためにもローンの借入までに加入の有無を決める必要があります。
また、年齢が上がるほどがんになる可能性が高くなり保険会社のリスクが高まるため、がん団信に加入できる年齢は一般的に50歳までであり、さらに一部では40歳までとしている商品もあります。
がん団信に加入したい方は特約の加入条件を調べておきましょう。
三大疾病・八大疾病保障特約付き団信
「三大疾病保障特約付き団信」「八大疾病保障特約付き団信」とは、主契約に加えて三大疾病・八大疾病を患った場合に保険金でローン残高が返済される特約です。
三大疾病・八大疾病の範囲は以下の通りです。
三大疾病 | がん |
急性心筋梗塞 | |
脳卒中 | |
八大疾病 | 上記三大疾病 |
高血圧症 | |
糖尿病 | |
慢性腎不全 | |
肝硬変 | |
慢性すい炎 |
三大疾病や八大疾病は病気を患った際に保険金が支払われるわけではなく、保険会社が定める「所定の状態」に該当している必要があります。
たとえば所定の状態は以下のような状態を指します。
- 急性心筋梗塞:初診日から60日以上、労働制限を必要とする状態が継続したと医師に診断されたとき
- 脳卒中:初診日から60日以上、言語障害等の他覚的な神経学的後遺症が継続したと医師によって診断されたとき
- 八大疾病(三大疾病を除く):5つの重度慢性疾患で就業不能状態が12か月間継続したとき
八大疾病保障特約ではローン残高すべてではなく「就業不能状態に該当する期間のローン返済額」が保険金として支払われるケースもあります。
どのような状態のときに保険金が支払われるのか慎重な確認が大切です。
金融機関によって異なりますが、一般団信の金利にプラス0.2〜0.25%ほどで三大疾病、プラス0.3%ほどで八大疾病まで保障されるのが一般的です。
ワイド団信
ワイド団信とは加入条件が緩和された団信であり、健康上の理由によって一般団信に加入できない方向けに作られています。
団信に加入する際は一般的な生命保険と同様に、自分の健康状態の告知を求められます。そのため、過去に病気を患っていたり持病を持っていたりすると、団信に加入できないことも少なくありません。
しかしワイド団信であれば、細かな要件は金融機関によって異なりますが、高血圧症や糖尿病、肝機能障害などの持病がある方でも加入できる可能性があります。
ワイド団信も一般団信も保障内容は同じですが、金利はワイド団信のほうが高く設定されています。一般団信に加入できず不動産投資ローンを組めない方はワイド団信の検討が必要です。
団体信用生命保険の審査基準と審査に落ちた場合の対処法
団信に加入するには審査に通過する必要があります。団信の加入審査では以下のようなことがチェックされています。
- 健康状態
- 職業
- 不正利用のリスク
健康状態に関しては直近3年以内の病歴や治療歴の告知義務があります。仮に病気を患ってから3年を超える期間が経過していたとしても、治療や投薬が3年以内にある場合は告知しなければなりません。
八大疾病保障特約など保障範囲が広い契約ほど告知する項目が増えます。また、患っていた病気の死亡リスクが高いほど審査が厳しくなる傾向にあります。
告知書のフォーマットは金融機関によって異なりますが、病名・治療歴・処方薬を告知するのが一般的です。
また、職業も審査項目の一つです。たとえば格闘家や登山家など一般的な職業と比較して死亡リスクが高い職に就いている方は審査の難易度が高まる傾向にあります。
不正利用防止の観点から反社会的勢力等に該当する方は加入できません。
万が一、健康状態などが理由で一般団信の審査に落ちてしまった場合は、ワイド団信の検討が必要です。ワイド団信は一般団信よりも審査基準が緩和されているため審査に通る可能性が高まります。
不動産投資における団体信用生命保険のメリット
不動産投資における団信のメリットは以下の通りです。
- 残債を返済されても所得税の納税義務を負わない
- もしものときの負担軽減と資産を遺せる
- リスクに対し任意の「特約」で対策できる
上記のメリットについて以下の項目で詳しく解説します。
保険金が支払われても所得税の納税義務を負わない
団信に加入し死亡や高度障害状態になると保険金は保険会社から支払われますが、直接金融機関に対して支払われる形であるため、加入者は所得税の納税義務を負いません。疾病により保険金が支払われた場合も身体の傷害によるものであるため非課税となります。
しかし、一般の生命保険の場合、保険会社から受取人へ保険金が支払われるため一時金として所得税が課されます。
もしものときの負担軽減と資産を遺せる
団信に加入すると不動産投資のリスクを軽減でき、さらに家族に資産を遺せます。
不動産投資は安定的な投資として人気ですが、投資である以上リスクがあります。団信に加入せずに不動産投資を開始すると、八大疾病などで働けなくなった際にもローンを返済しなければなりません。
不動産投資ローンは入居者から受け取る家賃で返済できますが、入居者が退去して空室となった場合は自己資金から支払う形となります。働けない状態でローンを返済するのは経済的な負担になるため注意が必要です。
団信に加入していれば保険金でローンが完済されるため、ローン返済の負担がなくなりキャッシュフローも向上します。
また、万が一亡くなったときには家族に債務のない不動産を遺せます。家族は遺された不動産を売却して現金化する、引き続き投資物件として家賃収入を得るなどの活用が可能です。
リスクに対し任意の「特約」で対策できる
団信ではがん団信や三大疾病保障特約・八大疾病保障特約など、さまざまな特約を追加できるため自身に適した対策が可能です。
不動産投資を始める際はリスクについて考える必要がありますが、人それぞれ状況は異なります。たとえば片働きでまだ子どもが幼い世帯と貯蓄が十分にある夫婦共働きの世帯では、万が一の際に必要な資金は異なります。
団信は特約を付けると保障内容を拡充できるため、家族構成や貯蓄などをもとに自身に適した保障を考えてみましょう。ただし、保障を手厚くするとローン金利が上乗せされるため、月々の返済額も踏まえて考える必要があります。
不動産投資における団体信用生命保険のデメリット
メリットばかりでなくデメリットも存在します。不動産投資における団体信用生命保険のデメリットは以下の通りです。
- 月々の不動産投資ローンの返済額が高くなる
- 生命保険料控除が受けられない
- 生命保険のほうが保障が手厚いケースがある
上記それぞれのデメリットについて以下の項目で詳しく解説します。
月々の不動産投資ローンの返済額が高くなる
団信に特約を付けると金利が上乗せされるため月々の返済額が高くなります。具体的な金額をイメージするためにも、以下の条件でシミュレーションをしてみます。
- 借入額:2,500万円
- 返済期間:35年
- 借入金利:1.8%
- 返済方法:元利均等払い
上記の場合、月々の返済額は8万272円です。一方で、同じ条件で金利が0.3%上乗せされた場合、月々の返済額は8万4,104円となります。
月々の返済額が高くなると実質利回りが低くなり不動産投資の利益が縮小するため、保障内容と投資の利益のバランスを考慮して団信の特約を考える必要があります。
また、団信は一度加入すると原則として途中解約はできないため、返済プランまで考慮して加入しましょう。
生命保険料控除が受けられない
一般の生命保険は所得控除(生命保険料控除)の対象ですが、団信は対象外です。
生命保険料控除を受けるには保険金の受取人を被保険者本人もしくは配偶者や親族とするルールがあります。団信が適用された場合、保険会社から直接金融機関に保険金が支払われるため生命保険料控除の条件に該当しません。
特約を付けて支払うローンが増えたとしても、所得税の節税につながらない点に注意が必要です
生命保険のほうが保障が手厚いケースがある
団信はあくまでも不動産投資ローンに対する保障であり入院費や通院費などへの保障ではないため、比較すると一般の生命保険のほうが手厚い待遇を受けられるケースがあります。
三大疾病保障特約や八大疾病保障特約もローン残高の返済、もしくは就業不能状態に該当する期間のローン返済しかカバーしていません。
また、不動産を購入してから時間が経過するほどローン残高は少なくなり、団信の保障額も減っていきます。一般の生命保険は保障額が一定である商品も多いため、保険が適用される時期によっては手厚い保障を受けられます。
まとめ
不動産投資ローンを組む際に団信に加入しておくと万が一の際に保障を受けられるうえ、家族に債務なしの不動産を遺せる点は安心にもつながります。
しかし、ローン残高が少なくなるに連れて保障額は縮小します。保険が適用されるタイミングによっては、一般の生命保険のほうが多くの保障を受けられる可能性があるため十分な比較検討が大切です。
不動産投資を始める際は自身の年齢や家族構成、病気のリスク、月々の返済額などをもとにカバーする範囲を吟味し、ベストな選択をする必要があります。
ファミリーコーポレーションでは購入相談も受け付けています。不動産投資ローンや団体信用生命保険などのご提案も可能です。購入を検討している方は、ぜひファミリーコーポレーションにお問い合わせください。