iDeCo(個人型確定拠出年金)の節税効果|メリット・注意点と加入方法
目次
ほかの投資手法と比較してチャレンジしやすいiDeCo(個人型確定拠出年金)は有用な資産形成のひとつです。国の支援もあり節税効果が期待できるため、会社員から事業主まで幅広い層の方が知って損はない年金制度とも言われています。
ただし、iDeCoで資産を形成する際は損害を受けないようメリットや特徴を知りリスクへの対策が必要です。そこで本記事では「iDeCoの節税効果」や「メリット・デメリット」などを解説します。iDeCoで具体的にどのような節税効果を得られるのか分からない方や将来に向けて資産形成を始めたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは私的年金制度のひとつであり、公的年金と組み合わせると、より豊かな老後生活を送るための支えとなります。そのため、iDeCoの仕組みを理解して必要であるかどうか判断しておくとよいでしょう。iDeCoの概要について以下の項目で解説します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)制度の概要
公的年金に加えて給付を受けられる私的年金制度のひとつであるiDeCoは掛金と運用益の合計額をもとに給付を受け取れます。若い頃からiDeCoを始めると老後に受け取れるお金が増えるため将来的に余裕のある生活が期待できます。
たとえば30歳の会社員が65歳までの間に毎月1万円を貯蓄すると35年後には420万円となりますが、iDeCoで毎月1万円を年利3%で運用すると運用益が約320万円となり、合計で約740万円もの資産を築ける計算です。
iDeCoはプロが運用するため、自身で行う作業は金融商品(投資先)選びと積み立て額の設定のみです。投資先も最大35個に厳選されているため、投資初心者にとっても金融商品を選びやすく、始めやすい傾向にあります。
iDeCoには20〜60歳に該当するほとんどの方が加入できます。2022年4月以前は加入者の年齢上限が60歳と定められていましたが、2022年5月以降は一定の条件を満たせば65歳未満まで加入が可能になりました。
60歳以降も会社員や公務員として働き、厚生年金に加入している方や国民年金に任意加入している方は65歳未満までiDeCoに加入できる対象となります。
一方でiDeCoに加入できないのは以下の例に該当する方です。
- 国民年金保険料を滞納している
- 国民年金保険料の免除を受けている
- 日本国籍を有しない海外居住者
- 農業者年金に加入している
iDeCoは公的年金の基礎である国民年金保険料を支払っている方が追加で加入できる制度です。
iDeCoの掛金・拠出限度額
iDeCoの掛金は月5,000円から1,000円単位で設定できます。
年間の掛金の上限(拠出限度額)は条件の範囲内で自由に決定できますが、その範囲は加入している年金や勤め先の雇用形態、企業年金の種類などによって異なります。加入資格ごとにおけるiDeCoの掛金や拠出限度額の具体例は以下の通りです。
加入資格 | 拠出限度額 | |
自営業者等 (第1号被保険者・任意加入被保険者) | 月額68,000円 (年額81.6万円) ※国民年金基金または国民年金付加保険料との合算枠 | |
会社員・公務員等 (第2号被保険者) | 会社に企業年金がない会社員 | 月額23,000円 (年額27.6万円) |
企業型DC※1のみに加入している会社員 | 月額20,000円 (年額24万円) | |
DB※2と企業型DCに加入している会社員 | 月額12,000円 (年額14.4万円) | |
DBのみに加入している会社員 | 月額12,000円 (年額14.4万円) | |
公務員 | 月額12,000円 (年額14.4万円) | |
専業主婦(夫) (第3号被保険者) | 月額23,000円 (年額27.6万円) |
※1 企業型DC:企業型確定拠出年金
※2 DB:確定給付企業年金、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員共済
企業型DBとは退職時に従業員が受け取る給付金の金額が決まっている年金制度であり、資産は企業がまとめて運用し、退職金額を保証します。一方で企業型DCとは企業が拠出する掛金の金額が決まっている制度であり、資産は従業員が運用し、受け取れる給付金の金額は運用次第で変動します。
なお、2024年12月1日からiDeCoの拠出限度額が変更されます。変更の対象はDBと企業型DCに加入している方とDBのみに加入している方(公務員含む)であり、現在の拠出限度額は月額12,000円ですが、月額20,000円まで引き上げられます。
iDeCoへ加入する際に決める事項や確認すべきポイント
iDeCoへの加入を検討する方が確認するべきポイントは以下の通りです。
- 加入要件
- 拠出限度額と掛金
- 運用商品
まずは自身がiDeCoへの加入要件を満たしているか確認しましょう。2022年10月からは企業型DC加入者であってもiDeCoに加入しやすくなりました。しかし、企業型DCの事業主掛金が拠出限度額の範囲内でも各月拠出となっていない方や企業型DCでのマッチング拠出を選択した方は加入対象外になります。
加入要件を満たしている場合は、拠出限度額を確認して毎月の掛金を考えましょう。掛金は月5,000円から1,000円単位で設定できますが、一度設定すると1年に1回しか変更できないため注意が必要です。将来的にいくらの資産を築きたいかを踏まえて、掛金を設定する必要があります。
最後に運用商品を選択します。運用商品は特徴や仕組み、利益額などが種類によって異なるため、いくらのリターンを得たいのか、どの程度のリスクを負えるのかを理解しなければなりません。投資がはじめての方は資産形成に失敗しないためにも資産運用の基礎知識やノウハウを理解したうえで商品を選択する必要があります。
また、金融機関によって取り扱っているiDeCoの商品や手数料は異なります。少しの違いであっても何十年も積み重なると大きな差になるため、現在利用している金融機関だけでなくほかの組織の比較検討も大切です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の3大節税効果とメリット
iDeCoには高い節税効果があり、具体的には以下のメリットを享受できます。
- 掛金が「全額所得控除」になる
- 利息・運用益が「非課税」になる
- 60歳を超えて受け取る金額が税金面で優遇される
iDeCoでは「掛金の拠出」「運用」「受け取り」の、すべてのプロセスで節税効果を得られます。通常の資産運用と比較してどの程度の節税効果を得られるのかを解説します。
掛金が「全額所得控除」になる
iDeCoでは課税所得が減るため当年の所得税や翌年の住民税の節税につながります。たとえば課税所得300万円で所得税と住民税がそれぞれ10%課税される場合、納税額は合計で60万円です。
一方で毎月20,000円をiDeCoで積み立てている場合、年間で24万円が控除されます。したがって課税所得は以下のように圧縮されます。
通常の課税所得300万円 - 所得控除24万円 = iDeCoへ加入した場合の課税所得276万円
iDeCoへ加入すると課税所得は276万円にまで圧縮されます。所得税と住民税がそれぞれ10%の場合、納税額は55.2万円となり、iDeCoへ加入していない場合と比較して年間で48,000円の節税効果が得られる結果となりました。30年間続ける場合だと合計で144万円もの節税につながります。
自営業者の場合は年額81.6万円までiDeCoで積み立てられるため、より多くの節税効果が得られます。一般的な投資の場合だと掛金は控除されないため資産運用と節税を同時に行えるiDeCoは運用益に課税される投資信託などよりもお得な税制度と言えます。節税できた分の金額をさらに投資に回すとより効率的に資産を形成可能です。
利息・運用益が「非課税」になる
iDeCoで得た利息や運用益はすべて非課税です。通常、金融商品を運用して得た利益には20.315%の源泉分離課税が課され、10万円の利益が出た場合だと実際に手元に残るのは79,685円です。証券口座で「特定口座(源泉徴収あり)」を選択している方は自動的に20.315%の税金が引かれています。
一方でiDeCoの場合は10万円の利益が出た場合、税金を引かれずに10万円を受け取れます。利息や運用益が非課税になるiDeCoでは運用期間が長くなるほど通常の投資との差が出てくるため、それぞれを比較してみましょう。毎月20,000円を積み立て、年利3%で35年間運用した場合の積立元本・運用益は以下の通りです。
通常の投資 | iDeCo | |
積立元本 | 840万円 | 840万円 |
運用益 | 約470万円 | 約640万円 |
合計 | 約1,310万円 | 約1,480万円 |
運用期間が長期になると、通常の投資とiDeCoで約170万円もの差が生じます。将来のために資産を運用する場合はiDeCoのほうが複利効果がより大きくなり効率的に資産を増やしやすいです。しかし、課税される場合は5%の利益を得たとしても約4%しか手元に残らないため資産を増やしにくい傾向にあります。
60歳を超えて受け取る金額が税金面で優遇される
iDeCoは掛金の拠出や運用を非課税で行えますが、受け取り時に税金が課されます。しかし、一定額であれば税制優遇を受けられるため、節税したい場合は自身に合った受け取り方法の把握が大切です。
60歳を超えて受け取る際も一定額までであれば税金面で優遇されます。税制優遇を受けると退職時の税負担の軽減にもつながります。積み立てた老齢給付金の受け取り方法によって税制優遇を受けられる金額は異なりますが、iDeCoへ加入しているといずれの場合も節税可能です。
iDeCoの受け取り方法は以下の3つです。
- 一時金(一括):60歳になったら一括で受け取る
- 年金(分割):60歳になったら分割して受け取る
- 一時金 + 年金(併用):60歳になったら一部をまとめて受け取り、残りを分割で受け取る
一時金として受け取る場合は「退職所得控除」の対象になります。退職所得控除額は以下の計算式で求められるため自身の勤続年数や一時金の額をもとに判断しましょう。
- 勤続年数20年以下:40万円 × 勤続年数(1年未満切り上げ)
- 勤続年数20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)
たとえば勤続年数が30年の場合の計算式は以下の通りです。
800万円 + 70万円 × (30年 - 20年) = 1,500万円
iDeCoの一時金が1,500万円以下の場合は非課税で受け取れます。しかし、iDeCoとは別に会社の退職金を同時期に受け取る場合は、iDeCoと退職金を合算した金額で計算する必要があります。
合算した金額が退職所得控除を上回っていると課税対象になるため注意が必要です。iDeCoと退職金を受け取る際は順番と時期を考慮しなければなりません。
iDeCoを先に受け取り5年以上の期間を空けてから退職金を受け取ると、別々の退職金として扱われます。反対に退職金を受け取ったあとにiDeCoを受け取ると、iDeCoを受け取った前年から19年以内に受け取った退職金と合算されます。一般的には先にiDeCoを受け取り、5年以上の期間を空けてから退職金を受け取る方法がおすすめです。
年金は公的年金等控除の対象であり、受け取る際は5年以上20年以下の受取期間を決める必要があります。雑所得として所得税が課されますが、公的年金等控除の範囲内であれば税金は課されません。
公的年金等控除の額は課税所得によって異なり、以下の表にまとめました。
受給者の年齢 | 受け取る年金額(A) | 年金以外の所得が年間1,000万円以下の場合 | 年金以外の所得が年間1,000万円超2,000万円以下の場合 | 年金以外の所得が年間2,000万円超の場合 | |
65歳 未満 | 130万円 以下 | 60万円 | 50万円 | 40万円 | |
130万円超 | 410万円 以下 | (A)×25%+27.5万円 | (A)×25%+17.5万円 | (A)×25%+7.5万円 | |
410万円超 | 770万円 以下 | (A)×15%+68.5万円 | (A)×15%+58.5万円 | (A)×15%+48.5万円 | |
770万円超 | 1,000万 円以下 | (A)×5%+145.5万円 | (A)×5%+135.5万円 | (A)×5%+125.5万円 | |
1,000万 円超 | 195.5万円 | 185.5万円 | 175.5万円 | ||
65歳 以上 | 330万円 以下 | 110万円 | 100万円 | 90万円 | |
330万円超 | 410万円 以下 | (A)×25%+27.5万円 | (A)×25%+17.5万円 | (A)×25%+7.5万円 | |
410万円超 | 770万円 以下 | (A)×15%+68.5万円 | (A)×15%+58.5万円 | (A)×15%+48.5万円 | |
770万円超 | 1,000万 円以下 | (A)×5%+145.5万円 | (A)×5%+135.5万円 | (A)×5%+125.5万円 | |
1,000万 円超 | 195.5万円 | 185.5万円 | 175.5万円 |
年金以外の所得が年間1,000万円以下の方の場合、65歳未満は年間60万円、65歳以上は年間110万円まで非課税で年金を受け取れます。iDeCoのほかに公的年金も合算するため、公的年金の額を踏まえてiDeCoの受取期間を設定しましょう。
一時金と年金を併用して受け取る場合は、一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除がそれぞれ適用されます。片方の受取方法では控除しきれない場合は、双方を組み合わせて受け取る方法も有効です。
iDeCoのデメリットと注意点
iDeCoにはメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。iDeCoのデメリットと注意点は以下の通りです。
- 原則60歳まで引き出せない
- 投資リスクが存在する
- 課税されるケースがある
- 手間や手数料が発生する
- iDeCoの節税効果を受けにくい人もいる
デメリットを踏まえて今後の投資計画を立てましょう。iDeCoによる資産形成を始めるにあたって、どのようなデメリットや注意点があるのか以下の項目で解説します。
原則60歳まで引き出せない
iDeCoは原則60歳まで資産を引き出せません。30歳からiDeCoを始めた場合、加入した時点で途中解約が基本的に不可能であるため30年間は資金が拘束されてしまいます。住宅の購入や子どもの教育費など将来的にまとまったお金が必要になる場合があるため、iDeCoでは必ず余剰資金を投資に回すのが望ましいです。
また、60歳の時点で利益を引き出すにはiDeCoの加入期間が10年以上である必要があります。10年に満たない場合は受給可能年齢が繰り下げられるため注意が必要です。60歳時点での加入期間と受給を開始できる年齢の関係を表にまとめました。
加入期間 | 受給開始年齢 |
10年以上 | 60歳 |
8年以上10年未満 | 61歳 |
6年以上8年未満 | 62歳 |
4年以上6年未満 | 63歳 |
2年以上4年未満 | 64歳 |
1ヶ月以上2年未満 | 65歳 |
60歳以上で初めてiDeCoに加入した方は加入から5年を経過した日から受給できる仕組みです。なお掛金の額も年に1度しか変更できないため急な支出に備えて余裕を持った金額を設定する必要があります。生活に支障をきたさないように、数ヶ月分の生活費は蓄えたうえで投資に回す姿勢が大切です。
投資リスクが存在する
iDeCoは投資信託を利用した私的年金制度であるため株式投資やFXのような投資リスクが存在します。場合によっては積み立て額を下回る「元本割れ」が発生する恐れもあるためリスクへの対策が必要です。
元本割れとは、元の投資額を商品の価格が下回り損失が出てしまうことを意味します。iDeCoへ加入して数十年かけて投資をした結果、利益を得られない可能性がある点に気を付けましょう。
また、iDeCoでの資産形成は金融商品の選択が重要であり、投資先はすべて自身で選ばなければなりません。iDeCoのなかには元本保証型の投資先もありますが、元本が保証されていない投資先と比較すると得られるリターンが少ない傾向にあります。リターンが少ない分、インフレ対策も不十分であるため長期投資としては不安に感じる方が一定数います。
元本保証型の投資のなかには定期預金や保険もあるため、iDeCoで長期間資金が拘束されるリスクと将来的なリターンが見合うかを考えるのが望ましいです。なお定期預金や保険も途中解約すると手数料がかかり、元本割れするリスクがある点に注意が必要です。
資産形成を成功させるには自身がどのような目的で運用するのかを明確にしたうえで、専門知識を身に付けたり専門家の支援を受けたりといった対策をとり、慎重に投資先を選ぶ必要があります。
課税されるケースがある
iDeCoで獲得した利益を非課税で受け取るには条件があり、該当しない場合は課税されます。iDeCoで獲得した利益が課税されるケースは以下の通りです。
- 一時金(一括での受け取り):退職所得控除を上回っている場合
- 年金(分割での受け取り):公的年金等控除を上回っている場合
非課税での受け取りには上限額が設定されているため、iDeCoのほかに受け取る退職金や公的年金の額などを踏まえて受け取り方法を決めなければなりません。場合によっては数十万円、数百万円単位で税金が課される恐れがあるため、掛金を拠出する段階から将来の出口戦略を考えておく必要があります。
とは言え、制度の改正や受け取る退職金の額など将来的な不確定要素が多いのも事実です。60歳を迎えるまでに時間がある方は、受け取り方によって税金が異なる点も把握しておきましょう。
手間や手数料が発生する
iDeCoは税制優遇によってお得なイメージがありますが、手間や手数料が発生する点に注意が必要です。一般的に証券口座や銀行口座の開設に費用はかかりませんが、iDeCoは口座手数料を支払い続ける必要があり、運用も自身で行わなければならないなど費用と労力ともに運用コストがかかります。
iDeCoで発生する手数料は以下の通りです。
- 加入手数料(加入時のみ):2,829円
- 国民年金基金連合会への手数料:105円 / 月
- 信託銀行への手数料:66円 / 月
- 金融機関への手数料:0〜500円程度 / 月(金融機関によって異なる)
いずれの手数料も毎月の掛金から自動的に控除される仕組みです。金融機関への手数料はiDeCo口座を開設する金融機関によって異なります。月々数百円の違いですが長期になると大きな差になるため、できる限り手数料の安い金融機関を選ぶのが望ましいです。
また、iDeCoは一度始めてしまえば自動的に運用され続けますが、投資先や投資割合、金融機関の変更は自身で手続きしなければなりません。とくに金融機関の変更手続きには2〜3ヶ月かかるため途中での変更は手間がかかると覚えておく必要があります。
iDeCoの節税効果を受けにくい人もいる
iDeCoは節税効果の高い投資方法ですが、なかには以下のように、iDeCoの節税効果を受けにくい方もいます。
- 所得税を課されていない専業主婦(夫)
- 住宅ローン控除で既に最大限に課税所得を圧縮している方
- 50代からiDeCoを始める方
専業主婦(夫)は収入がないため、そもそも所得税が課されず節税効果を得られません。また、住宅ローン控除で課税所得を圧縮して所得税を納めている方は、掛金が所得控除になるiDeCoのメリットを享受できません。
住宅ローン控除は最大で13年間継続するため、終了するまではiDeCoによる節税効果を受けにくい傾向にあります。ただし所得税が課されていない方であっても利息や運用益の非課税などは大きなメリットにつながります。
50代からiDeCoを始める方は60歳から受給を開始できない可能性があるため注意が必要です。また、短期間の運用になるため利益が少なかった場合、加入手数料や口座管理手数料で元本割れする可能性があります。一般的な投資信託であれば加入手数料などはかからないため、50代から資産運用する場合はiDeCo以外の資産形成も比較検討する必要があります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入シミュレーション
iDeCoのメリットとデメリットを把握したところで、自分は毎月いくらの掛金を拠出できるのか、どの程度の節税効果が得られるのかなどをシミュレーションしてみましょう。iDeCo加入のシミュレーションは以下の流れに沿って行います。
- シミュレーション前に企業型DCとDBの有無を確認する
- 実際にシミュレーションしてみよう!
iDeCo加入のシミュレーション方法について以下の項目で紹介します。
シミュレーション前に企業型DCとDBの有無を確認する
企業年金とiDeCoを併用するためには一定の利用条件をクリアする必要があります。会社員の方は年金形態によってiDeCoの拠出限度額が異なるため、以下にある企業年金の種類の確認が大切です。
会社員・公務員等 (第2号被保険者) | 会社に企業年金がない会社員 | 月額23,000円企業型DCとiDeCo (年額27.6万円) |
企業型DCのみに加入している会社員 | 月額20,000円 (年額24万円) | |
DBと企業型DCに加入している会社員 | 月額12,000円 (年額14.4万円) | |
DBのみに加入している会社員 | 月額12,000円 (年額14.4万円) |
2022年10月以降は加入要件が緩和され、原則として双方に加入できるようになりました。
実際にシミュレーションしてみよう!
今回のシミュレーションでは以下の条件で節税額を算出します。
- 職業:会社員
- 企業年金:企業型DCのみ
- 年収:800万円
- 年齢:30歳
- 掛金:20,000円
- 利回り:2%
- 移管資産:0円
- 受給開始:60歳
- 扶養配偶者:有
- 扶養家族:1人(3歳)
上記の場合、所得税は年間49,000円、住民税は年間24,000円で合計73,000円の節税効果を得られます。60歳までの30年間で計算すると累計219万円もの節税効果があります。
運用結果は運用元本720万円に対して約262万円の利益となりました。なお運用益の非課税額は約52万円です。iDeCoのシミュレーションを実施できるサイトは複数あるため、加入前に自分の条件をもとにシミュレーションしてみましょう。
まとめ
iDeCoを正しく活用すれば節税しながら老後の資産を形成できます。通常の投資では利息や運用益に課税されますが、iDeCoであれば非課税で運用できるため、通常の投資よりも効率的に資産形成への取り組みを進められます。
投資先も最大35個に絞られており、投資初心者にも始めやすい環境が整っている点が特徴的です。原則60歳まで引き出せないため長期投資が前提になりますが、着実に資産を形成したい方にはiDeCoでの資産運用をおすすめします。上限金額などは人によって異なるため、まずはシミュレーションしてみましょう。