金融資産とは何?世帯当たりの平均保有額はどれくらい?
目次
資産形成や投資に関する情報を集める中で、金融資産という言葉を目にしたことがあるかもしれません。実体を持たないが現金化できる資産のことを金融資産と呼びますが、具体的にどのような資産を指すのか、よく分からない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、金融資産の特徴に加えて1世帯当たりの平均保有額、金融資産以外の資産を持つことのメリットについて解説します。
金融資産とは何か?
金融資産とは、モノとしての形は持たないが現金に換算して評価できる資産を意味します。代表的な金融資産に、現金や株式、債券などがありますが、金融資産について詳しく知らない方も多いでしょう。
そこでまずは、金融資産とは何か、以下の項目の内容について解説します。
- 家などの不動産や車は金融資産に含まれる?
- 負債を差し引いたものが純金融資産
- 企業など法人における金融資産とは
家などの不動産や車は金融資産に含まれる?
金融資産は、実体を持たない資産のことです。それに対して、実体があってそれ自体に一定の価値がある資産を実物資産といいます。実物資産の代表例は、土地や家などの不動産、自動車、金やプラチナなどの貴金属、美術品、穀物、原油などです。
家や車は目に見える形があり、実物に資産価値があることから金融資産には含まれません。
負債を差し引いたものが純金融資産
金融資産に似た言葉に、純金融資産があります。純金融資産とは、保有している預貯金や株式、債券などの金融資産の総額から負債を差し引いた金額を指します。負債とは、住宅ローン、自動車ローン、カードローンなどです。
純金融資産は、実質的な資産状況を把握するために重要な指標です。金融資産を多く保有しているから安心というわけではなく、負債についてもしっかりと理解する意識が欠かせません。
企業など法人における金融資産とは
個人の保有する金融資産とは異なり、法人である企業が保有する金融資産の範囲は、企業会計基準により明確に定められています。
企業会計基準によると、現金預金・受取手形・売掛金・貸付金などの金銭債権、株式、株式以外の出資証券、公社債などの有価証券、デリバティブ取引により生じる正味の債権などが法人における金融資産に該当します。
デリバティブ取引とは、金融商品のリスク軽減や、金融商品のリスクを受容する代わりに収益を追求する手法として用いられる取引をいいます。先物取引(将来約束した価格で売買する取引)やオプション取引(金融商品を約束した価格で売買できる権利をやり取りする取引)、スワップ取引(金利スワップや通貨スワップのように利息などを交換する取引)がその例です。
1世帯の保有金融資産の平均額は?
金融広報中央委員会の『家計の金融行動に関する世論調査2021年』によると、2人以上世帯(世帯主の年齢上限80歳未満)の2021年時点の金融資産の平均保有額は1,563万円です。
一方、金融資産の保有額の中央値は450万円であり、平均値とはかなりの開きがあることが分かります。金融商品をいずれも保有していない世帯も全体の2.5%にのぼっています。なお、平均値が中央値よりも大きいのは、多額の金融資産を持つ一部の富裕層が全体を押し上げているためだと推測できます。
また同調査によると、単身世帯の金融資産の平均保有額は1,062万円、70歳未満は901万円です。全体と比較すると、70歳未満の平均が100万円以上落ち込んでいることが分かります。さらに、中央値は100万円(70歳未満は68万円)、金融商品をいずれも保有していない世帯は全体の3.8%(70歳未満は4.1%)におよんでいます。
(参考: 『家計の金融行動に関する世論調査2021年(単身世帯調査))』|金融広報中央委員会)
金融資産の種類とそれぞれの特徴
ここまで金融資産とはどのようなものか、また1世帯当たり(2人以上世帯、単身世帯別)の保有金融資産の平均額について解説してきました。
ただし金融資産といっても、その種類は以下のようにさまざまです。
- 預貯金
- 債券
- 株式
- 投資信託
- 貯蓄性のある生命保険や損害保険
- 個人年金保険
- iDeCoや企業型確定拠出年金
- そのほかの金融資産
ここでは、それぞれの金融資産の特徴や保有するメリット・デメリットについて詳しく解説します。
預貯金
預貯金とは、銀行や郵便局、信用金庫、信用組合、JA(農業協同組合)などの金融機関に預け入れる現金のことです。預貯金の元本に対して、金融機関が定期的に利息を支払う仕組みです。
預貯金の中でも、ATMなどを通じて現金の出し入れが自由にできる普通預金や通常貯金などは流動性が高い金融資産といえます。一定期間預け入れることで普通預金・通常貯金などよりも高い利息を受け取れる定期預金や定期貯金などの種類もありますが、引き出すには解約の手続きが必要であり、流動性は普通預金に劣ります。
また、預貯金は預金保険制度によって保護されており、金融機関が破綻しても一定額は保護されます。普通預金や定期預金などであれば、合算して元本1,000万円と破綻日までの利息が保護されるため、預貯金の全額が失われることはありません(ただし、外貨預金など保護対象外の商品もあります)。
預貯金のデメリットは、低金利の間は利息があまり増えないことです。日本銀行の預金種類別店頭表示金利の平均年利率等(普通預金)によると、2007年10月1日時点で平均0.198%だった年利が、2022年3月28日時点で0.001%にまで落ち込んでいることが分かります。市場金利が上がれば年利上昇も期待できますが、低金利が続く間は預貯金による利息のメリットはあまり期待できないでしょう。
(参考: 『主要時系列統計データ表』|日本銀行)
債券
債券とは国や企業などが資金調達のために発行する一種の借用証書のことで、元金が投資家に返還される期間(償還日)が決まっている点が特徴です。保有することで定期的に利息を受け取れる「利付債」、利息を受け取れない代わりに額面金額よりも安い金額で購入できる「割引債」があります。
代表的な債券は、国が発行する国債、地方自治体が発行する地方債、企業が発行する社債です。国内で発行される債券だけでなく、外国の政府や企業が発行する外国債もあります。
債券のメリットは、償還日に額面金額を受け取れる安定性があることです。債券は市場で売買されることもありますが、市場で価値が変動しても、企業の倒産などがない限り、額面金額が償還されます。
一方、デメリットは信用リスクや価格変動リスクがあることです。企業の場合は倒産するリスク、国や地方自治体では財政が破綻するリスクが少なからずあり、その際は元本が戻ってこないこともあり得ます。また、債券を市場で売買する場合は市場金利により価格が変動するため、償還日前に売却すると損失を被ってしまう可能性がある点にも注意が必要です。
株式
株式とは、株式会社が資産調達目的に発行する証券を指します。社債も企業の資金調達目的で利用されますが、株式は社債のような返済義務がありません。代わりに、株式を取得した株主は株主総会で議決権を行使できる権利、企業の利益の一部を配当金として受け取る権利、企業解散時に残余財産の分配を受ける権利を得ます。
株式を保有するメリットは、株主総会で取り決められる取締役の決定など会社の経営に参加できることです。
ほかに、株主優待のある企業の株式を保有する場合は商品券などを受け取れる権利もあります。上場企業の株式を保有する場合は、株価上昇に伴う売買差益(キャピタルゲイン)も期待できます。
株式を保有するデメリットは、信用リスクがあることです。株式を保有する企業が倒産すると、株式の価値がなくなってしまいます。また、上場企業の株式は常に値動きしており、価格変動により、株式購入時よりも時価評価額が下がってしまうリスクもあります。
投資信託
投資信託とは、投資家から集めた資金を運用会社が投資・運用して利益を還元する金融商品のことです。
運用先は株式や債券などさまざまで、株式比率の高い投資信託もあれば、債券比率の高い投資信託などもあります。投資家は、運用成果として運用会社から分配金や償還金を受け取れる仕組みです。
投資信託のメリットは、少額でさまざまな運用対象に分散投資できることです。投資信託の運用指図がどのようになっているかにもよりますが、基本的には1口で複数の金融商品へ分散投資できるため、ひとつの株式などに投資する場合と比べて、信用リスクや価格変動リスクを軽減できます。
デメリットは、価格変動リスクや信用リスクにさらされることです。投資信託の運用益は組み入れている株式の値動きなどに左右されるため、ケースによっては投資額を大きく割り込んで損失を被ることもあります。
また、国の財政破綻や企業の倒産といった信用リスクのほか、債券が組み込まれている場合は金利変動のリスクにもさらされることになります。
貯蓄性のある生命保険や損害保険
生命保険や損害保険には、掛け捨て型と積立型があります。掛け捨て型は、解約時や満期時に払い込んだ保険料が戻ってこないものの、積立型よりも保険料が安いタイプの保険です。積立型は、解約時には解約返戻金、満期時には満期保険金を受け取れます。
掛け捨て型と積立型のうち、金融資産に含まれるのが貯蓄性のある積立型の生命保険や損害保険です。
貯蓄性のある生命保険や損害保険に加入するメリットは、保険で保障に備えつつ、貯蓄もできることにあります。例えば、積立型の生命保険であれば、貯蓄をしつつ死亡や高度障害のリスクに備えられます。また、急に資金が必要になったときは、契約者貸付制度により、解約返戻金の一部からお金を借りることが可能です。
一方デメリットとして、掛け捨て型保険よりも支払わなければならない保険料が高くなってしまうことが挙げられます。月払いの場合は月々の負担が増加し、家計を圧迫してしまうこともあります。
また、早期に解約する場合、解約返戻金が元本割れし、払い込んだ保険料の全額が戻ってこない可能性があることにも注意が必要です。
個人年金保険
個人年金保険は、将来の生活資金の貯蓄を目的とした保険です。一定の年齢に達したときに、積立金と運用益の合計を年金として受け取れます。
国民年金や厚生年金などとは異なり、個人年金保険は公的年金には含まれません。個人が任意で加入できる年金であり、私的年金に区分されます。
預貯金のように自由にお金を引き出せない個人年金保険のメリットは、将来の生活資金を計画的に形成できる点にあります。また、終身年金(被保険者の存命中にわたって受け取れる年金)、確定年金(被保険者の生死にかかわらず保証期間中は受け取れる年金)、有期年金(被保険者が存命中は保証期間内に限り受け取れる年金)など、必要に応じて年金の受け取りを選択できる点もメリットです。
個人年金保険のデメリットは、被保険者の死亡時期によって年金の総額が減ってしまうことです。例えば、終身年金や有期年金を選択した場合は、死亡後に年金を受け取れなくなってしまうため、年金の総額が払込保険料よりも少なくなることがあります。
iDeCoや企業型確定拠出年金
個人や企業が任意で加入する私的年金には、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型確定拠出年金もあります。
iDeCoや企業型確定拠出年金は、いずれも掛金を加入者自らの指図によって運用できる金融資産です。定期預金や投資信託など運用先を加入者自らが選択でき、一定の年齢に達したときに年金として受け取れる仕組みです。iDeCoは個人が掛金を拠出、企業型確定拠出年金は企業が掛金を拠出する点が異なります。
iDeCoや企業型確定拠出年金のメリットとして、掛金全額が所得控除の対象となり、運用益が非課税となる点が挙げられます。積立期間中は所得税や住民税が軽減されるため、かなりの節税効果が見込めるでしょう。一時金として受け取る際は退職所得控除、年金で受け取る際は公的年金等の控除が適用される点もメリットのひとつです。
一方、iDeCoや企業型確定拠出年金は将来の生活資金の形成を目的とした制度のため、原則60歳になるまで掛金積立金や運用益を引き出せない点はデメリットといえます。また、投資信託など運用商品によっては価格変動リスクや信用リスクがあることにも注意が必要です。
そのほかの金融資産
預貯金 | 債券 | 株式 | 投資信託 | 保険 | iDeco等 | |
収益性 | × | 〇 | ◎ | 〇 | △ | △ |
安全性 | 〇 | 〇 | △ | 〇 | △ | △ |
流動性 (換金性) | ◎ | △ | 〇 | 〇 | △ | × |
預貯金や株式などのほかに、次のような資産も金融資産に含まれます。
- 一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄
(金融機関などと契約を結び賃金から天引きする形で積み立てる貯蓄) - 国民年金基金
(自営業者などが任意で加入する公的年金) - 金銭信託
(利用者の代わりに信託銀行などが金銭を管理・運用する金融商品) - 商品券など
金融資産以外の資産を保有するメリット
資産には、ここまで説明してきた金融資産のほかに実物資産があります。実物資産は家や土地などの不動産、金やプラチナなどの貴金属のように実体を持った資産のことです。
実物資産は形として残るために価値がゼロになることがほとんどない特徴があります。また、不動産であれば市場価値に応じて価値が変動するため、インフレリスク(インフレによりお金の価値が下がるリスク)に強い点もメリットです。金融資産以外に実物資産も合わせて所有することで、リスクの分散にもつながります。
また、前述した金融資産の平均保有額はあくまでも総額を人数で割った平均値に過ぎません。中央値の金額との間に大きな隔たりがあるのは富裕層が平均値を引き上げる形になっているためであり、一般的な感覚と比べて平均値は高い傾向にあります。
資産形成のためには、金融資産の平均保有額に注目して預金に励むだけでなく、お金を利用してお金を生み出すような資産、例えばマンションやアパートなどの収益物件のような実物資産を保有することも重要です。金融資産に加えて実物資産を持つことで、資産形成のスピードを上げられます。
まとめ
預貯金、債券株式、投資信託、不動産投資など、金融資産を形成する手段はさまざまあります。リスク分散のためにはさまざまな可能性やリスクを理解し、自身にあった方法を選択することが重要です。
また、金融資産のほかに土地や家といった実物資産もあると、よりリスク分散がしやすくなるでしょう。不動産であれば形として残る上、金融資産とは違う値動きをするため、インフレリスクにも対応可能です。
資産形成のひとつの選択肢として、不動産投資への取り組みを検討する場合は、ぜひファミリーコーポレーションにご相談ください。