アパートの解体費用の必須知識!工事の金額相場と安くするポイント
目次
アパートの解体を検討する中で費用はいくらかかるのだろうかと疑問に感じている方は多いのではないでしょうか。
予想外の出費やトラブルを防ぐためには、しっかりと準備して長期的に解体費用の確保などの取り組みを進める必要があります。そこで本記事では「アパートの解体費用の相場」や「安くするポイント」を解説します。解体費用の目安を知りたい方は本記事を参考にしてください。
アパートの解体費用の目安と内訳
アパートを解体する際は事前に相場を把握して資金計画を立てる必要があります。アパート解体の流れや費用について以下の項目で解説します。
アパートの解体が必要になる場面とは?
アパートの解体が必要になる場面は以下の通りです。
- 老朽化による建て替え
- 土地売却のための更地化
- 土地活用のための更地化
建物が新しい場合ですとリフォームしたり建物込みで売却することが多いですが、築年数が経過したアパートは以下のような問題があるケースもあります。
- 建物や設備が古く、入居者が集まりにくい
- 故障箇所が増え修繕費が増加する
- 耐震強度が不足している
建て替えを実施すると、上記のような問題を解消できるため収益性の向上が期待できます。また、土地をアパート以外の用途で活用したり、売却したりするために更地にするケースもあります。
アパートの解体工事の費用と種類の内訳
アパートの解体工事費は大きく分けて以下の5つに分類できます。
- 本体工事費
- 廃棄処分費(廃材処分費)
- 付帯工事費
- 仮設工事費
- その他の経費
それぞれで費用が発生し、建物の状況や周辺環境によって価格が異なります。以下の項目ではアパートの解体工事費用の内訳について解説します。
本体工事費
本体工事費とは建物本体を解体する工事にかかる費用です。本体工事費は解体工事にかかる総費用の大半を占めており、一般的に作業に必要な労力の「人件費」と「廃棄処分費」を合算した費用でもあります。本体工事費は1坪あたりの「坪単価」をもとに概算可能です。
本体工事費は主に作業員の人件費に充てられるため、大規模な建物で作業員の人数が増えると本体工事費は高くなります。工事内容によって内装解体や屋根解体、外壁除去、基礎解体に分類されます。
また、梅雨や台風、降雪の季節などは人件費が増加したり、工期が長引いたりする恐れがあるため費用をおさえたい方は天候不良の少ない時期を選ぶのが望ましいでしょう。
廃棄処分費(廃材処分費)
廃棄処分費(廃材処分費)とは解体で発生した、法令で定める20種類に該当する産業廃棄物を処分するための費用です。解体で発生した木材やコンクリートなどは通常の一般廃棄物(家庭ごみ)のように処分できないため解体業者が処分します。
一般廃棄物とは生ゴミなどの一般家庭や事務所から出る廃棄物で、産業廃棄物とは瓦やコンクリートなどです。
廃棄処分費は本体工事費に次いで多くの費用がかかります。
解体業者から提示された坪単価と建物の面積でおおまかな解体費用は算出できますが、ほかにも費用がかかる可能性がある点に気を付けましょう。
付帯工事費
付帯工事とは、本体工事費とは別にかかる以下のような業務をまとめたものです。
- 庭木の撤去
- 車庫(ガレージ)の解体
- 外壁の解体
- 物置の撤去
- 外構・門扉の撤去
なお、建物本体の解体や外構の撤去などをしている際、以前建てられていた建物の廃材や浄化槽などの地中埋設物が見つかる場合もあります。地中埋設物が見つかると撤去費用がかかるため、当初の見積もりよりも高くなる恐れがある点には注意が必要です。
仮設工事費
仮設工事とは、工事を安全かつ円滑に進めるために行う以下のような補完的な工事です。
- 仮設トイレの設置
- 養生シートの設置
- 仮設電源の設置
- 足場の組み立て
仮設工事にかかる費用の割合は全体の1割未満ほどです。
その他の経費
解体工事は建物を解体する目的や環境によって別途費用がかかります。それらの費用をまとめました。
- 解体後の土地を整える整地費
- 重機を運ぶための重機回送費
- 車を停めるための駐車場代
- 道路使用許可などの申請費用
- 近隣への挨拶代
見積もりを受け取った際は、どのような費用が組み込まれているのかや、無駄なコストがかかっていないかを確認しておきましょう。
アパートの解体費用の坪単価の目安
アパートの解体費用は建物の規模や構造によって大きく異なるため費用の見積もりの際は坪単価で計算します。
各構造の坪単価の目安は以下の通りです。
構造 | 1坪あたりの費用 |
木造 | 40,000円程度 |
鉄骨造 | 60,000円程度 |
鉄筋コンクリート造 | 70,000円程度 |
木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の順に頑丈な作りになるほど解体費用は増加する仕組みです。
アパートの階数によっても違いがあり、同じ面積の建物である場合一般的に2階建てよりも平屋の方が坪単価が高い傾向にあります。平屋は2階建てよりも基礎の面積や屋根の面積が多く、必要な作業員の数や廃材の量が増えるため費用は高くなります。
アパートの解体費用が高くなる3つの理由
アパートの解体費用は構造によって目安がありますが、必ずしも相場通りの見積もりになる訳ではなく、条件によって解体費用は高くなるケースもあります。アパートの解体費用が高くなる理由は以下の3つです。
- 工事が難しい立地条件
- 複雑な構造と付帯工事の量
- 建物の部材や設備
どのようなアパートだと解体費用が高くなるのかを以下の項目で解説します。自身のアパートの条件と照らし合わせてみましょう。
工事が難しい立地条件
解体する建物の立地条件は解体費用の変動要因であり、解体が難しい場所であればあるほど費用は高くなる仕組みです。具体例は以下の通りです。
- 住宅が密集しており隣の建物との距離が近い
- 前面道路が狭く大型車両が入れない、もしくは道路に面していない
- 周辺の建物が老朽化しており、解体作業で被害が出る恐れがある
本来解体工事は重機を入れて作業しますが、重機での作業が制限されるアパートの解体は人力で取り組まなければなりません。結果として工期の延長や人手の増加によって人件費の部分が大幅に高くなり、解体費用は高くなってしまいます。
複雑な構造と付帯工事の量
アパートは構造が複雑であるほど解体工事の費用も増加します。たとえば地下室があるアパートは通常よりも深く基礎工事が行われているため解体工事の手間がかかります。
また、付帯工事の量が多くなるにつれて解体費用が増加するケースも多いです。アパートの場合、駐輪場や駐車場(カーポート)、塀などの付帯物の数は少なくないため、解体費用が高くなる傾向にあります。
さらに解体中に地中から井戸や浄化槽といった地中埋蔵物が工事中に見つかる例も珍しくありません。浄化槽は1個あたり50〜80万円ほどの撤去費用がかかるため、万が一地中に隠れていた場合は見積もり額から大幅にオーバーしてしまいます。
建物の部材や設備
解体費用は建物に使用されている部材や設備によって増減します。たとえば瓦屋根の解体は手作業が多くなるため費用が高くなる傾向にあり、とくに平屋の場合は屋根の面積が多くなる分プラスして費用がかかってしまいます。
また、万が一建物にアスベストが使用されている場合、処理面積によって解体費用は変動します。その場合、調査費用に加えて各種届出や飛散防止のための専用シートなどを用意しなければなりません。
アスベストの処理費用の目安は以下の通りです。
アスベスト処理面積 | 除去費用 |
300㎡以下 | 2.0~8.5万円/㎡ |
300㎡~1000㎡ | 1.5~4.5万円/㎡ |
1000㎡以上 | 1.0~3.0万円/㎡ |
参考:国土交通省
2006年以前に建てられた建物はアスベストが検出される可能性が高いため注意が必要です。一定規模以上の建物の解体や改修である場合は、必ず調査を実施して報告する義務がある点にも気を付けなければなりません。
アパートの解体費用を安くするなら「補助金」を検討しよう
アパートは立地条件や構造によって解体費用が相場よりも高くなる可能性があるため、少しでも解体費用をおさえたい方は「補助金」の利用を検討することをおすすめします。補助金を使えれば建物の解体費用を削減できる可能性があるため把握しておきましょう。アパートの解体費用をおさえる補助金の概要を以下の項目で解説します。
補助金とは
補助金とは国や地方公共団体が個人や企業の活動を支援するための制度です。補助金は融資とは異なり、原則として返済する必要はありません。
アパートの解体でも解体工事を支援・促進するための補助金制度が設けられています。建物の解体でも補助金を受け取れる具体的な理由は以下の通りです。
- 景観保全
- 犯罪抑止
- 住環境の維持改善
- 倒壊防止
- 災害対策
アパートの解体費用に関する補助金の多くは地方公共団体が実施しています。補助金の名称や申請するための要件、手続き方法などは自治体によって異なるため注意が必要です。
老朽危険家屋(空き家)解体撤去補助金
建物の老朽化によって倒壊の危険性がある場合、解体費用の補助を受けられます。自治体によっては「耐震性に課題がある建物」も対象になるケースがあるため、どのような建物が該当するか事前確認が必要です。
補助額は自治体によって異なりますが、解体費用の1/5〜1/2程度の補助(限度額あり)を受けられます。なお建物が補助金の対象になるかの判断は自治体ごとの基準によるため、まずは自治体の窓口で相談してみましょう。
建て替え建設費補助金
建て替え建設費補助金とは耐震性向上を目的とした建物の建て替えを推進するための補助金です。その名の通り補助を受けるには解体後に再度建物を建築する必要があります。自治体によっては建て替え後の要件が定められているケースもあるため確認が大切です。
建て替え建設費補助金はアパートの建て替えを検討している方におすすめの制度であるため、要件に該当する方は検討してみましょう。
アパートの解体の流れと注意点
アパートの解体は以下のような流れで進行します。
- 現地調査・見積もり
- 入居者の退去・撤去作業
- 配管・配線の撤去
- 解体工事
- 建物滅失登記の申請
解体におけるそれぞれの段階で行う作業内容や注意点を以下の項目で解説します。
現地調査・見積もり
まずは解体工事を依頼する業者に建物の状態や道路の広さ、隣接住戸との距離などを調査してもらいます。必須ではありませんが、工事内容やスケジュールで認識のズレが生じないよう現地調査には施主も立ち会う必要性は高い傾向にあります。どのように調査しているのかを実際に近くで確認すると業者の信頼性も判断することもできます。
また精度の高い見積もりを提示してもらうためには、現地調査をしてもらったうえでスケジュールや残置物の処理など細かな要望を伝える必要があります。相見積もりをとる場合はすべての業者の現地調査に立ち会い、価格だけでなく業者の信頼性なども踏まえて比較検討するのが望ましいです。
入居者の退去・撤去作業
解体工事の目処が立った後はアパートの内部を整理します。すでに入居者がいる場合は立ち退き要求を実施しなければなりません。トラブル回避のためにも余裕を持った立ち退き期間での提示が求められます。なお、立ち退きに関する手続きは不動産管理会社と一緒に進めるのが一般的です。
入居者が退去した後はアパート内を片付けます。残置物も含めて解体業者に撤去を依頼できますが、費用をおさえたい方はできる限り自身で処理しましょう。
配管・配線の撤去
解体工事の前に電気やガスなどの生活インフラを撤去する必要があります。電気やガスが通ったままだと解体作業中の大きな事故につながりかねません。必ず電気会社やガス会社に建物を解体する旨を伝え、解体までに手続きと工事を完了させましょう。
なお配管や配線の撤去は解体業者とは別の会社が行うため、解体工事に間に合うようにスケジューリングする必要があります。万が一に備えて解体工事の1週間前には生活インフラの撤去を完了させておくと安心です。水道に関しては解体作業中に使用するケースもあるため水道を停止するべきかどうかは事前に解体業者と相談するのが望ましいです。
解体工事
解体工事は以下のような流れで進行します。
- 仮設工事
- 内装解体
- 建物全体の解体
- 廃材処分
- 整地
仮設工事は配管や配線の撤去が完了する前に始める場合もあり、業者ごとに異なります。解体工事の工期は建物の構造や大きさによって1週間〜数ヶ月と開きがあり、雨や雪などの気象状況によって工期が長引く可能性もあると考えられます。さらに井戸などの地中埋設物が見つかると追加工事が必要になり、工期の延長と費用の増加が発生する恐れがある点に気を付けておきましょう。
建物滅失登記の申請
建物の解体が完了して更地になった後は建物の「滅失登記」を所轄の法務局に申請しなければなりません。滅失登記とは建物がなくなったことを記録するための手続きです。
建物を解体してから1ヶ月以内に申請する必要があります。申請を怠ると、10万円以下の過料が科されるため注意が必要です。また、滅失登記をせずに翌年の1月1日を迎えると既に存在しない建物に対して固定資産税が課されるため、余計な税金を納める点にも気を付けなければなりません。
アパートの解体に必要な手続き
アパートの解体には以下のような手続きが必要です。
- 解体工事届出
- 道路使用許可申請
- 建物滅失登記
手続きを怠ると解体工事が円滑に進まない恐れがあるため取り組むべき作業を必ず把握しておきましょう。アパート解体に必要な手続きに関して以下の項目で解説します。
建設リサイクル法に基づく届出
アパートを解体する際は、建設リサイクル法に基づき着工の7日前までに建物の種類と廃材の見込み量を届け出る必要があります。
費用を支払うと解体業者に作業を委任できますが、届出の義務があるのは施主です。届出の内容を理解しておらず、後からトラブルが発生してしまうのを避けるためにも、以下の書類を準備して届出の内容を把握しておく必要があります。
書類 | 内容 |
届出書 | 工事発注者の氏名や工事の概要 |
分別解体等の計画等 | 建物の構造や周辺状況、 工程に応じた作業内容 |
工程表 | 解体工事の計画 |
設計図または写真 | 外観写真の添付 ※必要に応じて図面を添付 |
案内図 | 対象不動産の場所を地図に明示 |
委任状 | 施主の代理として届出をする際に用意 |
提出が遅れると工事自体も遅れるため早い段階での対応を心がけるのが望ましいです。
アスベストを解体する際の届け出
解体するアパートにアスベストが含まれている際は届出が必要です。アスベストが含まれている建物の解体工事は飛散性によってレベルがつけられています。レベルは1〜3に分かれており、レベル1がもっとも危険なレベルです。なお、解体工事のレベルによって届出の種類が異なる点に注意が必要です。
石綿法に基づく基準だといずれのレベルでも「事前調査書」と「計画届」が必要になります。届出は解体業者に委任できますが、届出の義務があるのは施主もしくは自主施工者です。
建物滅失登記
「登記の閉鎖 」とも呼称される建物滅失登記とは、建物がなくなった情報を記録する登記であり、解体工事が完了した段階で行わなければなりません。
登記申請時には以下の書類を用意する必要があります。
- 建物滅失登記の申請書
- 滅失した建物の登記簿謄本・建物図面・各階平面図・構図
- 建物滅失証明書(解体業者の押印が必要)
- 建物があった場所を示す地図
- 建物の写真(用意可能な場合)
費用はかかりますが、土地家屋調査士への委任も可能です。建物滅失証明書など解体業者の押印が必要な書類もあるため手間なく手続きが終わるよう入念な事前準備が必要です。
まとめ
アパートの解体は立地や構造で費用が大きく異なるため、事前に相場や見積もりを把握して資金計画を立てる必要があります。なるべく費用をおさえたい方は補助金の活用も検討することをおすすめします。
アパートの解体では考えるべき悩みや課題が数多くありますが、アパートの解体を何度も経験するケースは多くありません。適切な判断を行うためにも、まずはそのまま売るべきなのか建て替えるべきなのかといった相談ができるパートナーを見つけましょう。
ファミリーコーポレーションでは売却相談も受けつけています。建物付きで売却するべきか、解体して更地にするべきかなどのご提案も可能です。売却を検討している方はぜひファミリーコーポレーションにお問い合わせください。