キャップレートが低いとマズい?利回りとの関係や不動産価格への影響
目次
キャップレートとは不動産の収益性を表した利率であり、不動産投資で物件を選ぶ際に重要な項目です。表面利回りや実質利回りと混同すると不動産の収益性を適切に評価できないため、違いを明確にする必要があります。
本記事では「キャップレートの算出方法」や「活用シーン」を解説します。キャップレートは、収益物件の判断基準の一つの指標となるため、本記事を参考にしてみてください。
キャップレート(Cap Rate)とは
不動産投資で優良物件を選ぶためには、キャップレートを意識する必要があります。以下の項目ではキャップレートの概要や実質利回りとの違い、算出方法について解説します。
キャップレートは「還元利回り」のこと
キャップレートとは不動産の収益性を表す利率であり、日本語では「還元利回り」や「収益還元率」といいます。
いずれも不動産投資の期待利回りを意味し、キャップレートを把握できれば投資回収期間や物件の適正価格を求められるため、不動産を購入する際の判断材料の一つとなります。キャップレートは立地や築年数によって異なりますが、一般的な相場は賃貸用住宅で5〜8%、事業用不動産で7〜10%程度です。
リスクの大きさや収益性によって変動し、新築よりも中古、都心よりも郊外の物件のほうが高い傾向にあります。
不動産投資短期観測調査によると、日本の賃貸住宅(ワンルーム)で最もキャップレートが低いエリアは東京都港区の「麻布・赤坂・青山」地区です。オフィスビルの場合は丸の内や大手町であるため、都心で賃貸需要が高いエリアほどキャップレートが低いと判断できます。
キャップレートと表面・実質利回りの違い
「利回り」と付く言葉には様々な種類があり、それぞれに意味の違いがあります。ここでは、不動産投資でよく使われる「表面利回り」と「実質利回り」の活用方法を解説します。
- 表面利回り:数ある選択肢のなかから物件を絞り込むための数値
- 実質利回り:より具体的な資金計画を立てるための数値
- キャップレート:不動産の適正価格を調べるための数値
表面利回り(グロス)は物件から得られる家賃収入を物件価格で割り戻して算出でき、具体的な計算式は以下の通りです
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 不動産価格
管理委託手数料や修繕費、ローン返済、固定資産税など物件の運用にかかる経費は含まれていないため、実際の手残り金額とは差が生じます。
しかし、多くの不動産広告では表面利回りが記載されているため、数多くの選択肢のなかから物件を絞り込むための利回りと考えると認識の相違を防げます。
一方で、実質利回り(ネット)は物件運用にかかる経費や不動産購入時の諸費用を含めて算出するため、表面利回りよりも具体的な資金計画を立てられます。実質利回りの具体的な計算式は以下の通りです。
実質利回り = (年間家賃収入 ー 諸経費) ÷ (不動産価格 + 購入時諸費用)
具体的な経費を反映するためには、アパートやマンションの空室率、固定資産税など多くの情報が必要です。より正確な実質利回りを算出するには、不動産会社に詳細な資料を請求するか、シミュレーションを依頼して確認を行いましょう。
キャップレートは実質利回りと混同されるケースも多く見受けられますが、活用シーンが異なります。実質利回りは実際の収益を計算する際に用いますが、キャップレートは不動産の適正価格(将来得られる予定の収益)を求める場合に利用するため混同しないよう注意が必要です。
キャップレートの算出方法
キャップレートの算出方法は以下の通りです。
キャップレート = (総賃料収入 ー 諸経費) ÷ 不動産価格 × 100%
「総賃料収入 ー 諸経費 」は「NOI(Net Operating Income)」もしくは「年間純利益」と表記される場合もあります。
諸経費には管理委託手数料や修繕費、固定資産税、保険料などが含まれますが、支払金利や減価償却費は含みません。物件によって諸経費の割合は異なりますが、家賃の20〜30%が目安です。
目安のキャップレートを定めると「NOI ÷ キャップレート」で不動産の適正価格を求められます。
キャップレートは自分で調べられる?
キャップレートを求める方法は以下の3つに分けられます。
- 不動産鑑定士による算出
- 類似物件をもとに算出
- Webサイトを活用して算出
以下の項目ではキャップレートを求める3つの方法について詳しく解説します。
一般的には不動産鑑定士が算出する
一般的に不動産の適正価格は不動産鑑定士が専門的な知識を用いて算出します。ただし、一般の方であってもキャップレートを求めるための資料や情報を揃えると一定レベルの精度で算出可能です。
類似物件をもとに算出する
不動産価格を求めたい物件がある場合、対象不動産と類似した物件の取引事例を探してみるのも一つの手段です。類似物件とは、主に以下のような項目で一致している物件です。
- 立地(最寄り駅)
- 築年数
- 駅までの距離
- 周辺環境
- 間取り など
具体的な取引事例を探す場合、国土交通省の「土地総合情報システム」の活用をおすすめします。「土地総合情報システム」の「不動産取引価格情報検索」を利用すると、条件が類似した物件の取引価格を把握可能です。
次に類似物件の利回りを以下の式に当てはめて計算します。
類似物件の表面利回り(%) = 予想できる1年間の利益(万円) ÷ 不動産価格(万円)
1年間の利益が700万円で取引価格が1億円の場合、7%の利回りとなります。
年間の利益がわからない場合は不動産ポータルサイトなどで類似物件の賃貸情報をチェックしてみましょう。過去や現在の募集賃料がわかると大まかな年間の利益が求められます。
ただし、実際の価格と差が生じる恐れがある点には注意が必要です。
Webサイトを活用して算出する
キャップレートなどのデータを提供しているWebサイトを利用するのも不動産価格を把握するおすすめの方法です。
公的機関が公表している不動産評価などの情報を地図に落とし込み、一般ユーザーでも価格査定を効率的に行えるよう情報提供しているサイトもあります。代表的なWebサイトは「株式会社ICHI」が提供している「CaprateMap」です。
ユーザー登録を行うとキャップレートだけでなく土地価格や稼働率、賃料、専有単価といった情報も入手できます。地図上から直感的に操作できる仕様であるため、キャップレートを知りたい方は活用してみるとさまざまな情報を取得可能です。
キャップレートの平均相場
キャップレートはリスクの大きさや収益性で変動するため、利率は賃貸需要の大きい都心エリアに近いほど低く、離れるほど高くなる傾向にあります。
実際に令和3年4月から令和4年3月の地域別還元利回りは以下の表の通りであり、都心部ほど低い結果となっています。
【共同住宅(店舗・事務所等との併用を含む)】
地域 | 還元利回り |
全国 | 5.4% |
都心5区 | 3.0% |
都心周辺区 | 5.5% |
神奈川東京周辺市 | 5.6% |
埼玉東京周辺市 | 6.0% |
千葉東京周辺市 | 6.1% |
大阪市 | 6.3% |
主要政令指定都市 | 3.9% |
※参考:株式会社二十一鑑定「評価先例(令和4年4月から令和5年3月)の地域別・築年数別平均還元利回り」
不動産投資の種類は数多くありますが、都心は住宅需要が根強いため不動産投資を行う方が多い傾向にあります。しかし、どのような物件に投資するかは人によって異なるため、利回りだけでなく自身の予算や不動産投資の目的をもとに、物件の場所を考える必要があります。
まとめ
収支シミュレーションは、不動産会社が行ってくれることがほとんどですが、自分で理解をしておくことでより正しく物件の判断が出来るようになります。
物件を選ぶ際の基準としての「利回り」をそれぞれ適した形で活用すると良いでしょう。
ファミリーコーポレーションでは個別相談を受けつけており、物件の選び方や資金計画などのご提案が可能です。不動産投資を検討している方は、ぜひファミリーコーポレーションにお問い合わせください。