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不動産投資の基礎知識

セットバックとは?条件や注意するポイントを解説


目次

    セットバックとは、道路を確保するために敷地と道路の境目を敷地側に後退させる制度です。不動産の広告に「セットバック」という言葉が表記されている場合は、建物の建て替え時に土地面積が少なくなりますので注意が必要です。
    本記事では、セットバックの基本知識や計算方法、土地利用への影響、施工費用や購入時の注意点など、押さえておきたいポイントを詳しく解説します。

    セットバックとは

    セットバックは、幅4m未満の道路に接する敷地で建築物を新築・増改築する際に、土地と道路の境界線を後退させて道路幅を確保する制度です。道路幅が狭いと、防災や通行性に問題が生じるため、建築基準法で規定される「4m以上の道路幅を確保する」ルールに合致させる目的があります。

    敷地の一部を道路側に後退させることから、建築可能面積が減る一方で、地域全体の安心・安全に寄与する仕組みと言えます。法律の背景や目的を正しく理解することで、セットバックが必要な場面を把握し、適切な建築計画を立てることができるでしょう。

    セットバックが必要となる理由

    セットバックが必要とされる最も大きな理由は、防災性と通行性を向上させることです。道路幅が狭いままだと、火災などの緊急時に消防車や救急車が進入できず、地域全体の安全が脅かされるという問題があります。

    セットバックにより道路幅をある程度確保することで、火災や地震などの緊急時の動線が確保されるため、建築基準法では狭い道路沿いの敷地に対して後退を義務付けているのです。

    法律による接道義務

    建築基準法では、原則として幅4m以上の道路に2m以上接していなければ建物を建築できないという接道義務があります。幅4m未満の道路に面する場合、そのままでは法律の要件を満たすことができません。そのため、セットバックによって条件をクリアする必要があります。

    しかし、建築基準法が施行される1950年以前から建物が建築されている場合、4m未満の道路も数多く存在します。そのような建物を全て建て替えることは難しいため、建築基準法第42条2項では、例外的に建築基準法上の道路として認め、「2項道路」や「みなし道路」と呼ばれています。この場合は、新しく建物を建てるタイミングで道路を後退し、道路幅を4mにしなければなりません

    セットバックはいつから導入されたのか

    セットバックの制度が導入されたのは、建築基準法の制定された1950年(昭和25年)11月23日以降です。特に戦後の復興期には狭い道路や建物が密集しているエリアが数多くあり、火災・地震などの災害リスクが懸念されていました。こうした背景があり、法律によって幅4mを基準とした道路確保策が半世紀以上にわたり運用され、現在に至ります。

    セットバックの計算方法

    幅4m未満の道路に接する土地に、実際に建物を建築する際のセットバック幅はどのように決まるのか、計算方法を解説します。

    道路中心線からどの程度後退させるかは、接している道路の向かい側の土地の状況によって異なります。

    向かい側の土地が宅地の場合

    向かい側の土地が宅地の場合は、それぞれの土地が半分ずつセットバックしなければなりません。上記の図のような場合は、道路の中心線から2m以上セットバックしなければなりません。

    セットバックの幅=4mー(現状の道路幅)÷2

    向かい側が川、崖、線路などの場合

    道路の向かい側がセットバック出来ない川などの場合は、向かい側の道路の境界線から4mを確保する必要があります。

    セットバックの幅=4mー現状の道路幅

    セットバックが必要な物件の注意点

    セットバックは拒否することは出来ません。セットバックした部分には、建物を建築することが出来ないため、購入時には注意が必要です。

    有効敷地面積が少なくなる

    セットバックによって生じる後退部分は建物や庭、駐車スペースなどに利用できなくなります。そのため、購入時に想定していた有効敷地面積が減ることになり、計画していた建物の建築面積や間取りを変更せざるを得ないケースが考えられます。特に狭小地では、少ない面積の減少で建築プランに大きな影響がある可能性もあるので購入を検討するタイミングから注意しておきましょう。

    セットバック部分の利用は制限がある(門・塀・駐車場)

    セットバックしたスペースは、「道路」としてみなされるため、建物を含めた恒久的な工作物を設置できません。門や塀だけでなく、駐車場としても利用が不可能となります。

    セットバックした部分を私的に利用すると建築基準法違反となるため、門や塀、駐車場を設置する際は、セットバック後の有効な敷地面積を計算し、その範囲内に配置するよう注意しましょう。

    売却の難易度が高い可能性がある

    セットバックが必要な中古物件を購入する場合は、将来的に土地や建物を売却するときに、「セットバック要」の物件となるため、セットバックが不要な物件と比べると売却しにくい可能性があります。

    セットバックする距離の費用や道路の舗装費用を買い手が負担しなければならない可能性があり、価格交渉のハードルになることがあります。こうした点も踏まえて、長期的な視点でリスクとメリットを判断し購入の検討をしましょう。

    固定資産税の非課税申請を行う

    セットバックした部分は、固定資産税や都市計画税が免除されます。しかし、そのためには、自治体に申請を行う必要があります。手続きには、書類準備や現地確認が必要なこともあるため、具体的な手順は、各自治体に確認してみると良いでしょう。

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    セットバックに関する施工と費用

    セットバックを行う際は、基本的には所有者自身の負担となります。ただし、自治体によっては補助制度が設けられている場合もありますので、自治体に確認をすることが必要です。

    セットバック時の工事内容と費用相場

    セットバック時には、道路の舗装や既存の門や塀を撤去し、セットバックの位置へ設置し直す工事が必要になります。費用は撤去物の種類や数量、土地の高低差によっても異なりますが、主には以下のような項目になります。

    • 境界確定・現況測量費用:40〜70万円程度
    • 現況測量費用:15〜30万円程度
    • 土地分筆登記費用:5〜6万円程度
    • セットバック部分の仮整備費用:1㎡あたり3,000~5,000円程度+人件費

    安くて数十万円、建物の一部を取り壊す場合は数百万円の費用が発生する場合もあるため、きちんと確認しましょう。

    自治体へ寄付できるの?

    自治体によっては、セットバック部分は自治体に寄付することができ、寄付することで助成金が出る場合もあります。また、寄付することでセットバック部分の管理責任から解放されることにもなります。

    寄付するための要件が決められていたり、申請書等の書類が必要となるため、事前に自治体に相談してみるとよいでしょう。

    費用負担者の確認

    セットバックに伴う工事費用や測量費用の負担は、売主と買主のどちらが負担するかを契約時に明確化する必要があります。契約書や重要事項説明書での記載があいまいだと、後からトラブルに発展しやすくなるので注意が必要です。事前に不動産会社や司法書士などに確認を取り、誰がどの部分の費用を負担するのかをはっきりさせておきましょう。

    セットバック物件を購入してもよいケース

    セットバックが必要な物件でも、条件次第では購入を検討しても良いケースがあります。価格帯や立地条件、将来的な活用などを考慮した上で、妥当性を判断することが重要です。以下のポイントを参考にして、自身の計画と合うかを検討してみましょう。

    予算内で希望の物件が手に入るとき

    セットバック義務がある物件は、その分価格がやや割安になるケースがあります。後退による敷地減少などデメリットはあるものの、立地や住宅の条件が自分のニーズに合致するなら検討の余地は十分あります。あらかじめ費用面と将来の工事等のリスクを踏まえて、検討することが大切です。

    セットバック後の敷地面積が許容できる場合

    セットバックによる有効面積の減少があっても、事前にその面積を把握し建築計画を立てられる場合は特に問題はありません。道路幅が広がることで、視界の良さや日当たりが改善され、住居環境が向上する可能性もあります。後退分を含めたデメリットとメリットを比較し、納得できるバランスであれば購入を前向きに検討してよいでしょう。

    建て替えや売却の予定がない場合

    中古物件の購入であれば、住み続けたり賃貸に出すことは可能です。そのため、建て替えや大規模リフォームなどの計画がない場合、セットバックによるデメリットを実質的に感じにくいことがあります。ただし、防災上のリスクが高い点は変わらないため、早めに対処しておくことがおすすめです。

    まとめ

    セットバックは道路幅の確保や安全性向上に大きく寄与する仕組みですが、購入を検討する際は、慎重に判断しましょう。購入する場合は、建ぺい率・容積率をきちんと確認し、建築可能面積を正しく把握しておくことが大切です。

    セットバック以外にも、建築当時は適法であったものの、その後の法改正や都市計画の変更により、現在の建築基準法に適合しなくなった「既存不適格建築物」も存在します。

    物件を購入する際は、不動産会社にきちんと物件の詳細や調査結果を聞くことで、リスクを把握した上で検討するようにしましょう。

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