不動産投資の出口戦略とは|失敗しないためのポイントや重要性を解説
目次
不動産投資が成功したかどうかは物件を手放したときに決まります。運用中は黒字であっても売却時に大きな損失を出してしまうとトータルでは赤字になってしまい、不動産投資の失敗につながるおそれがあります。
不動産投資を成功させるためには、物件を購入する前から出口戦略を練っておくのが大切です。
本記事では「不動産投資を始めようと考えている方」や「不動産投資に失敗したくない方」に向けて「出口戦略とは何か」「出口戦略で失敗しないためのポイント」を中心に解説します。不動産投資を成功させたい方はぜひ本記事を参考にしてください。
不動産投資の出口戦略|物件を出来る限り高く売る
出口戦略とはもともと軍事用語であり、「戦況の最終局面で被害を最小限におさえて撤退する方法」という意味でした。現在では主に不動産投資に使われており、「不動産投資を最後にどう着地させるか」という意味に転用されました。
不動産投資によって得られる利益は「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があります。インカムゲインは不動産を賃貸して得られる家賃収入です。一方でキャピタルゲインは不動産を売却して得る売却益を指します。
出口戦略では「キャピタルゲインをどれだけ大きくするか」が成功のポイントです。不動産投資を始める際は出口戦略をふまえた計画を立てましょう。
不動産投資における3種類の出口戦略
収益物件の出口戦略は主に以下の3パターンに分かれます。
- 収益物件のまま売却する
- 更地にして売却する
- マイホーム用として売却する
収益物件を高値で売却するためには収益物件の築年数や立地などをふまえて、相性の良いパターンを選択する必要があります。次の項目からそれぞれの詳しい内容を紹介していきます。
収益物件のまま売却する
賃貸需要が高く収益性が確保できている場合は収益物件のままの売却が1番高額となる可能性があります。
収益物件の値段は「収益性」と「資産性」の2種類で決まります。たとえば入居率が高い物件や家賃が高額である物件などは収益性で計算した価格のほうが高値で売却できる可能性が高いといえます。資産性による価格は土地値や物件の面積、構造などで決まり、家賃などの要素は考慮されません。
また、運用期間中に入居率と家賃をアップさせると更に高値での売却が期待できるため、売却前に入居率を高め、収益性を高めておくのも出口戦略として有効な手段です。
更地にして売却する
収益性と資産性を比較した際に、資産性のほうが高い物件の場合は更地にして売却するのもひとつの手段です。
「入居率が低い」「家賃が安い」などで収益性が低い場合は収益物件として売却する難易度が高いといえます。また、なかなか買い手が付かず、売却するためには価格を下げざるをえないケースもあるため、リスクが高いといえます。
中には、建物よりも土地で不動産を探す購入者もいるため、収益性に期待できない物件の場合、更地にすると売却に繋がるケースがあります。
なお、入居者がいる場合は立ち退き交渉が必要であるため、手間がかかる点には注意しましょう。
マイホーム用として売却する
区分マンションや戸建てを用いた不動産投資を行っている場合、マイホーム用として売却するのも出口戦略として有効な方法です。
現在の入居者に物件を買い取ってもらうのもひとつの手段です。とくにファミリー層は物件に愛着を持ちやすいため、買い取ってもらえる可能性が高い傾向があります。
収益物件の値段の決まり方
「収益性」と「資産性」は物件の価値を決めるほか、どのような売却方法を取るべきか決めるための重要な要素です。たとえば収益性が高い場合は収益物件として売却するのが適切といえます。
収益物件の値段はオーナーが自由に決められますが、適正な値段設定にしなければ高い確率で失敗します。安い値段では損失が出てしまい、高い値段で売ろうとするとなかなか買い手が現れないため、適正価格の設定が求められます。
値段は不動産会社が出す査定価格を参考にオーナーが決めるのが一般的です。査定価格を報告してもらう際、しっかりと根拠を明示してくれる不動産会社を選べれば非常に安心といえます。なかには売却依頼を任せてもらいたい一心で高値を提示してくる不動産会社もあります。正式に依頼してから価格を下げざるを得ないケースもあるため、不動産会社選びには細心の注意を払いましょう。
次の項目からは不動産の売却価格の基準となる「収益性」「資産性」について紹介していきます。
収益性
収益性で物件の値段を決める際は家賃収入をもとに以下の計算式で算出します。
物件の値段 = 年間家賃収入(円) ÷ 期待利回り(%)
年間家賃収入とは収益物件を1年間運用した場合に得られる家賃の合計です。一棟アパート・マンションの場合は空室の数も計算に反映させます。
期待利回りとは不動産の購入価格に対して何%のリターンが期待できるかを示しており、物件の立地や築年数、入居率などさまざまな要素を加味して算出されます。
資産性
空室が多い一棟マンションや都心の物件、広大な敷地に建つ狭小の戸建て住宅などは資産性による決め方のほうが値段が高くなる傾向があります。
アパートが建っている200坪の土地を例に考えてみましょう。資産性で評価した場合、土地の値段が1坪あたり50万円とすると、更地で売却する値段は1億円です。
一方で、アパートの年間家賃収入600万円、期待利回り10%とし収益性で評価する場合、値段は6,000万円です。土地に対して建物が小さい場合や空室が多い場合では収益性よりも資産性による値段のほうが高くなるケースが多いです。
出口戦略で物件を売却する3つの方法
出口戦略で物件を売却する方法は主に以下の3つです。
- 不動産仲介業者に依頼する
- 不動産買取業者に売却する
- 個人間取引で売却する
それぞれの方法を次の項目から紹介していきます。
不動産仲介業者に依頼する
物件を売却する際に不動産仲介業者へ依頼する方法があります。不動産を売却する際には広告掲載や内覧対応が必要不可欠であるため、不動産仲介業者に代行してもらえればオーナーの手間を大きく削減できます。
不動産仲介業者に依頼する場合は媒介契約を締結し、売買契約が成立したら仲介手数料を支払います。
媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があります。一般媒介は複数社に並行して依頼できる方法であり、専任媒介や専属専任媒介は特定の1社のみに依頼する方法です。専任媒介の場合はオーナー自身が買主を探す「自己発見取引」が可能です。
時間はかかっても高値で売りたい場合は一般媒介、早期売却を目指している場合は専任媒介か専属専任媒介がおすすめです。
不動産買取業者に売却する
不動産買取業者に売却する選択肢もあります。広告宣伝や内覧対応が必要ないため、手間なく売却できるのが特徴です。
また、不動産買取業者と値段の合意ができ次第すぐに売却できるため、早期に売却したい方におすすめです。一般的に売却にかかる時間は最短1週間〜1ヶ月程度といわれています。
早期売却が狙える一方で、売却価格は市場価格より10~30%程度安くなる場合が多いため、「値段は多少安くても良いから手間をかけずに確実に売却したい」という方に向いています。
個人間取引で売却する
個人間取引とは不動産仲介業者を介さず売主と買主が直接不動産を売買する方法です。
個人間取引の場合は親子兄弟や友人などつながりが深い人に売却するのが一般的ですが、近年ではインターネットで知り合った買主に売却する事例も増えています。
仲介手数料がかからない点や、つながりが深い人への売却は心理的な負担が少ない点がメリットですが、後々トラブルになるケースが多いため注意が必要です。取引相手が十分な不動産知識を身に着けているとは限らないため、トラブルを避けたい方にはあまりおすすめはできません。
出口戦略で不動産を売却するのに適したタイミング
不動産を売却するのに適したタイミングは以下の3つです。
- 長期譲渡になるとき
- 減価償却期間が終了するとき
- デッドクロスになるとき
次の項目からは、上記のタイミングがなぜ売却するのに適しているのか解説します。
長期譲渡所得税が適用されるとき
物件を売却する際に課される譲渡所得税は所有期間が5年を超えると税率が低くなります。そのため、物件を所有してから5年を経過したタイミングで手放すのがおすすめです。
譲渡所得税(所得税・住民税)の計算式は以下の通りです。
売却価格 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除 = 課税譲渡所得(売却益)
課税譲渡所得 × 税率(譲渡所得税率) = 譲渡所得税額(所得税・住民税)
短期譲渡所得税と長期譲渡所得税の税率は以下の通りです。
所得税 | 住民税 | 合計 | |
短期譲渡所得税(所有期間5年以下) | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得税(所有期間5年超) | 15% | 5% | 20% |
短期譲渡所得税の税率は短期譲渡所得税の倍近く異なるため、譲渡所得(売却益)が出る見込みであれば所有期間が5年を超えたタイミングで売却することをおすすめします。
ただし長期譲渡所得を適用するためには、売却した年の1月1日時点で所有期間5年を超えていなければなりません。取得日からカウントしないように注意しましょう。
減価償却期間が終了するとき
減価償却期間が終了すると減価償却費を経費計上できなくなり、利益が増え、税負担が重くなるため、売却を検討すべきタイミングであるといえます。
減価償却とは減価償却期間中に建物の取得費を少しずつ減価償却費として経費計上できる仕組みです。減価償却費は実際の支出を伴わないため、節税効果のみが得られます。建物を取得した年以降も減価償却費によって毎年の所得を圧縮できるため、所得税・住民税の節税につながります。
節税効果を期待して不動産投資をするのであれば、減価償却期間が終わるタイミングを見据えて出口戦略を練ったほうが良いでしょう。
デッドクロス|ローンの元金返済額が減価償却費を上回るとき
ローンの元金返済額が減価償却費を上回る「デッドクロス」という状態になる前に、売却するのもひとつの手段です。
ローンの返済方法を元利均等返済にした場合、元金返済額は年々増えていきます。元利均等返済とは毎月の元金と利息の合計額が均等になる返済方法であり、返済期間が経過するほど元金の割合が増え、利息の割合が減る仕組みです。
一方で、減価償却期間が終了すると経費計上できる金額が減ります。先ほど説明したローンの元金返済額も経費計上することができません。結果として現金支出があるのに経費計上できず、税金の負担が増えていき、最悪の場合は資金繰りが悪化して経営破綻するケースがあります。
不動産投資を始める際はローンの元金返済額と減価償却費のシミュレーションを行い、デッドクロスがいつ起こるのか把握しておきましょう。減価償却期間が短い築古の中古物件を購入すると、デットクロスに陥るまでの時間も短くなるため注意が必要です。
不動産投資の出口戦略で失敗しないためのポイント
不動産投資の出口戦略で失敗しないためのポイントは主に以下の通りです。
- 家賃が下がりにくい物件を選ぶ
- 融資難易度が低い物件を選ぶ
- ローン残債を把握する
- オーナーチェンジ物件として売る
- リフォームしてから物件を売却する
出口戦略で失敗しないためのポイントを次の項目から紹介していきます。
家賃が下がりにくい物件を選ぶ
不動産投資を始める前から出口戦略を見据え、家賃が下がりにくい物件を選んでおくのが大切です。
収益性によって物件の値段を決める際は、家賃収入が高いほど物件売却時の値段は高くなるため、いかに家賃設定を下げずに済む物件を選べるかがポイントです。
新築物件は最初こそ中古物件と比べて高額な家賃設定ができますが、家賃の下落幅が大きいため注意が必要です。新築から10年経つと、ピーク時から20%程度家賃は下がります。新築物件は1年あたりで経費計上できる減価償却費が低いため、家賃下落も相まって利回りが悪化してしまいます。
中古物件のほうが年数経過による家賃の下落が少なく利回りが安定しやすいため、不動産投資初心者におすすめです。
物件選びの際は長期的に賃貸需要が見込めるか見極めるのが大切です。都心から近い物件や駅から近い物件は高い入居率が期待でき、家賃も下がりにくいためおすすめといえます。
融資難易度が低い物件を選ぶ
出口戦略で失敗しないためには融資難易度が低い物件を選ぶ点を意識しましょう。融資難易度が低ければ買える人の数は多くなります。資金面でのハードルが下がるため、購入につながりやすいといえます。
融資難易度が低くなりやすい物件は以下の通りです。
- 遵法性を満たしている物件
- 価格が割高でない物件
遵法性を満たしていない物件の場合、融資できる金融機関が限られます。違法建築や既存不適格の物件は融資できる金融機関がほとんどなく、買える人が限られるため、出口戦略を立てるうえで好ましくありません。遵法性を満たしている物件かどうか確認するには、専門の検査会社に依頼して遵法性調査を行いましょう。
融資の審査基準には買主の給与収入や金融資産も含まれるため、価格帯が低い物件のほうが買える人が多く、早期に売却できる可能性が高まります。
ローン残債を把握する
ローンを完済して不動産に設定された抵当権を抹消しなければ原則として売却できないため、あらかじめローンの残債を確認しておくことが大切です。
売却価格がローン残債よりも低い場合は売却代金だけではローンを完済できず、持ち出しが発生してしまいます。ローンを組むときはフルローンにこだわらず、自己資金を入れることで売却価格がローン残債を上回る可能性を高められます。
購入時から売却価格とローン残債のシミュレーションをしっかりとおこなうことが、余裕を持った売却を実現できる近道です。
オーナーチェンジ物件として売る
オーナーチェンジ物件として売却すると購入者は入居者を引き継ぐメリットを得られるため、出口戦略として有効な手段です。
オーナーが入居者と交わしていた賃貸借契約は売却後も有効であり、契約内容は新オーナーに引き継がれます。
新オーナーは入居者募集の手間が省けるほか、購入直後から安定した家賃収入が見込めるため、魅力的に映ります。入居率と賃料が高い物件であればオーナーチェンジ物件として売ったほうが早期売却・高値売却を実現できる可能性が高いといえます。
リフォームしてから物件を売却する
物件によってはリフォームして価値を上げてから売却するのもひとつの手段です。建物の劣化が目立つ物件は売る前にリフォームすると値段がアップする可能性があります。
クロスの張り替えや天井塗装など表層部分のリフォームだけでも高い効果が得られる場合もあります。
なお、リフォームを行ったからといって必ずしも金額がアップするとは限りません。リフォームしても買い手が見つからず損失が出てしまうケースもあるため、注意しましょう。
まとめ
出口戦略は不動産投資を始める前から考えておく必要があります。出口戦略に失敗すると運用中は黒字であったとしても、物件売却時には損をしてしまう可能性が上がってしまいます。
物件選びをする際は出口戦略を見据え、「家賃が下がりにくく、将来にわたって安定した収益を生み出せる物件」を選ぶようにしましょう。
売却のタイミングを見極めるためには不動産投資に関する専門的な知識が必要です。「どのくらいの価格で売却が出来るのか」「リフォームは必要か」など、なかなか答えが出ない問題に直面することも多いでしょう。出口戦略を見据えて不動産投資を行うには事前に知識を身につけておきましょう。
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