アパートの売却相場は?査定方法から高く売るコツまで徹底解説
目次
アパートを売却したいと考えているものの、「どれくらいで売れるか分からない」「相場が分からないと手放しにくい」と考えている方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、アパートを売却する場合の価格相場や査定方法を紹介します。
アパートを高く売却するためにも、全国の相場動向や市場価値を分析し、適切な方法・タイミングを知っておきましょう。高く売るポイント、売却にかかる手続きなども併せて解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
アパートの売却相場の出し方
アパートを売却する際にまず行うのは、不動産の査定です。査定額は査定をする計算方法や不動産会社によっても異なり、実際の販売価格ではありません。ただし査定することでアパートの売却価格の目安を把握できるため、重要な意味を持ちます。ここでは、不動産会社が査定に使用する不動産鑑定評価の方法を3つ紹介します。
収益還元法
収益還元法は、将来的な収益を求め、その金額から現在のアパートの価値を導き出す計算方法です。収益還元法で売却相場を計算する際は、以下の計算式を使用します。
不動産価格(収益価格)=1年間の純収益(賃料収入-運用コスト)÷還元利回り
還元利回りとは、アパート経営によって得られる利回りのことです。築年数や立地、修繕状況など物件条件によって利回りが異なり、査定をする場合は、周辺相場の還元利回りを参考にすることが一般的です。
例えば、1年間の家賃収入が100万円、運用コストが50万円のアパートで、利回りが5%と査定されたとしましょう。この場合、1年間の純収益は100万円-50万円=50万円です。そのため、不動産価格は、50万円÷5%=1,000万円となります。
なお、収益還元法は「直接還元法」と「DCF法」の2種類に大別されており、上記で紹介した計算方法は「直接還元法」です。
DCF法は「ディスカウントキャッシュフロー法」の略語で、「不動産投資によって得られる将来的な利益」と「予想される売却価格」を、現在の価格に割り戻して合計額を求めます。
■具体例
・1年間の収益が100万円、3年後の売却額が1,000万円、割引率5%と査定される不動産の場合
・1年目:100万円÷(1+0.05)≒95万円
・2年目:100万円÷(1+0.05)2≒90万円
・3年目は100万円÷(1+0.05)3≒85万円
=DCF法による査定金額:95万円+90万円+85万円+850万円=1,120万円
原価法
原価法は、一度建物を取り壊し、再度建てた場合にいくらになるかの「再調達原価」を計算して価値を求める方法です。土地と建物を別々に評価して、合計額を導き出します。これを「積算価格」と呼びます。計算式は以下の通りです。
積算評価=土地の評価+建物の評価
簡単にシミュレーションしてみましょう。まずは土地の評価額を求めます。
■土地の評価額
土地の評価額は次の計算式で求めます。
「相続税路線価」×土地の平米数
相続税路線価とは、相続税を評価する際に用いる宅地1平方メートルあたりの評価額のことです。国税庁のWebサイトに掲載されているため、どなたでも調べられます。
(参考: 『財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』)
ここでは計算しやすいように、相続税路線価は10万円、土地の平米数は100平方メートルとします。
土地の評価額:10万円×100平方メートル=1,000万円
■建物の評価額
次に建物の評価額を求めます。
建物の評価価格=再調達価格×延床面積×(耐用年数の残り÷構造ごとの法定耐用年数)
築年数10年、延床面積150平方メートルのアパートを所有しているとしましょう。
1.木造物件の再調達価格=約15万円/平方メートル
2.延床面積=150平方メートル
3.残耐用年数(22年-10年)=12年
4.木造の耐用年数=22年
建物の価格:15万円×150平方メートル×12年÷22年=約1,227万円
それぞれ土地の評価額と建物の評価額を合計します。
積算価格:1,000万円+1,227万円=約2,227万円
取引事例比較法
取引事例比較法は、周辺にある類似物件の取引事例を参考にして相場を求める計算方法です。事業用ではなく居住用の物件に用いられることが多く、間取り、立地、周辺状況といった条件によって不動産価格が変わります。
不動産価格=類似物件の坪単価×面積
取引事例比較法では、計算した不動産価格に取引事情や土地の形状、地域差などの補正を加えなければなりません。正しい価格を求めるためには、相応の知識が必要です。
アパートの売却相場を調べる方法
アパートを売却するなら、「できるだけ損をしたくない」「相場よりも高く売りたい」と願う方が多いでしょう。売却の取引を開始する前に、類似物件がどれくらいの価格で販売されているか、相場をチェックしておくことが大切です。ここでは、一般の方が自分で売却相場を調べる方法を3つ紹介します。
ポータルサイトをチェックする
簡単に不動産の相場を調べたいときは、不動産投資用ポータルサイトを活用しましょう。代表的なサービスに「楽待」や「健美家」などが挙げられます。
売却希望のアパートに似た条件の物件を検索すれば、いくらで販売されているかを確認できます。掲載物件数が多いため相場を求めやすく、自身のアパートの販売価格を決める際に役立つでしょう。
ただし、ポータルサイトに記載されている価格はあくまで売却希望価格です。実際の売買価格と一致するとは限りません。
国土交通省のシステムを利用する
国土交通省が運営する「土地総合情報システム」では、過去5年間のマンションやアパートの売却額をチェックできます。長期的に不動産価格が増額しているかどうかといった市場動向も確認できるため、保有しているアパートの価値を調査するのに最適です。
不動産の所在地や地図からでも検索できる仕様になっており、「今すぐ相場を調べたい」「簡単に利用できるものがいい」と考えている方にもおすすめできます。
不動産会社に査定を依頼する
より詳しく正確な金額を把握したいときは不動産会社に査定を依頼しましょう。自分で計算したり価格を調べたりする時間や手間を軽減できます。
不動産会社を選ぶ際は、経験や実績が豊富な不動産会社を選ぶのがポイントです。経験値が高い不動産会社は、培ってきた知識やノウハウを生かして適切な価格を計算してくれます。
なお、不動産会社を選ぶことに難しさを感じる方は、一括査定ができるサイト・サービスを利用するとよいでしょう。売却したい情報を入力するだけで、複数社への査定依頼が完了します。
アパートを売却する際の注意点
中古アパートには定価がありません。アパートの状態や条件、社会情勢や金融状況などによって価値が変動します。売却時に後悔しないためにも、ここで紹介する注意点を把握しておきましょう。
アパートの売却には時間がかかる
不動産会社を通してアパートを売却する場合にかかる期間は、平均3〜6か月です。買い手の都合によってはもっと時間がかかるケースもあります。
また、買い手がなかなか現れないことや、交渉が難航することもあるでしょう。早めに準備をしたからといって必ずしも早く売れるとは限りませんが、スケジュールに余裕を持って売却準備を進めることが大切です。
購入価格より値が下がることもある
不動産売買に限った話ではありませんが、購入時の価格よりも高く売れる保証はありません。特に建物は、築年数の経過に応じて値下がりしやすい商品です。また、日本経済や社会問題の影響により、不動産の価値が下落する可能性もあります。いずれにしろ、手元に入る金額を増やすためにも市場にアンテナを張っておきましょう。
また、買い手の価格交渉に応じた結果、査定金額よりも下がってしまうケースもあり得ます。相手の条件を一方的に飲むのではなく、満足のいく利益を確保できる範囲で、徐々に値下げするといった交渉術が必要です。
不動産価格の上げ止まりが起こる可能性がある
東京オリンピックが終わったことや2022年問題の影響により、不動産価格は下がると予想されていたものの、価格水準は2010年以降右肩上がりとなっています。ただし、今後は人口減少などの影響により、不動産価格に変動が起こる可能性も否定できません。
特に都市部では新築マンション・アパートの需要が高く、中古物件を残したまま新築物件を建設し続ければ全体の空室数はどんどん増加していきます。入居者を集めるために家賃を下げると不動産の価値も下落するため注意が必要です。このような状態が進めば、今後は不動産価格の上げ止まりが起こる可能性があります。
アパートを高く売却するための4つのポイント
手元に入るお金を増やすためにも、アパート売却時のポイントをおさえて、できるだけ高く売れるよう準備を進めましょう。ポイントは次の4つです。
- 市場動向をチェックする
- 不動産の価値を高める
- 更地にして売却する
- 適切な不動産会社を探す
市場動向をチェックする
アパートを始めとする不動産の価格は、社会情勢や経済状況により変動する可能性があります。そのため、売却時はタイミングを見極めることが大切です。
まずは、ポータルサイトや「土地総合情報システム」などを活用しながら、市場動向を調査しましょう。情報収集しながら知識を深めていくことで、不動産売買に関する判断力も身につきます。
不動産の価値を高める
不動産価値を高めることも重要です。不動産の価値は、以下のような条件を総合的に判断して決まります。
- 築年数
- 入居率
- 修繕状況
- 周辺環境
- 利便性 など
売却するまでに、家賃滞納者を減らしたり入居率を上げたりしながら、不動産としての価値を高めておきましょう。また、これから収益物件を購入する場合は、「売却しやすいかどうか」も確認したいポイントです。立地条件・周辺環境の良い物件を選ぶことで、将来的に高く売却できる可能性が高まります。
更地にして売却する
アパートとしての価値が低いときは、建物を取り壊して更地にするのも方法のひとつです。更地にすることで、土地の利用用途が広がるため、売却できるチャンスも増えます。例えば、「アパート経営ではなく駐車場経営がしたい」「事業所を建てたい」といった方と売買契約を結ぶこともあるでしょう。
ただし、更地にするためにはアパートを解体・撤去する費用がかかります。また、アパートに入居している方がいる場合は立ち退きを通達しなければなりません。原則6か月前には通達を出す必要があるため、売却するまでには時間がかかります。
適切な不動産会社を探す
実績の多い不動産会社を選ぶことも、アパートを高く売るために欠かせないポイントです。専門知識や実績が豊富な不動産会社なら、市場価値に見合った適正金額で取引を開始してくれます。不動産会社を探す際にチェックしたい項目は以下の通りです。
- 販売実績がどれくらいあるか
- 査定額の根拠を提示できるか
- 担当者とスムーズにコミュニケーションが取れるか
不動産会社のホームページを確認したり相談会に参加したりしながら、希望の条件に合う不動産会社を探しましょう。
アパートの売却にかかる手続き
ここでは、手続きの内容と流れ、発生する費用、必要書類を紹介します。売却手続きを進める際の参考にしてみてください。
売却までの流れ
アパートの売却にはさまざまな手続きが発生します。スムーズに進められるよう、売却までの流れを事前に確認して、準備を整えておきましょう。
【アパート売却の手順・流れ】
- 市場調査
- 査定依頼
- 不動産会社との媒介契約
- 売却開始
- 売却の成立・契約
- 支払い
- 引き渡し
上記は不動産会社に仲介を依頼した場合の売却手順です。個人売買や不動産会社に買い取りをしてもらうケースでは、媒介契約をする必要はありません。
また、アパートの購入希望者が複数人現れたときは、自身が希望する条件で購入してくれる買主を探しましょう。先に話を進めた方と契約しなければならないといった決まりはなく、条件に応じて購入者を決定できます。
費用
アパートを売るときは、売却手続きのための諸費用が発生します。費用の種類と目安金額は以下の通りです。
費用 | 目安金額 |
仲介手数料 | 売却額×3%+6万円 |
抵当権抹消費用 | ・司法書士への依頼料:1万5,000円程度 ・登録免許税:1,000円〜3,000円程度 |
印紙税 | 1,000円〜6万円程度 |
譲渡所得税 (所得税・住民税) | ・保有期間が5年以下:39.63%(所得税30%、住民税9%、特別復興所得税0.63%) ・保有期間が5年超:20.315%(所得税15%、住民税5%、特別復興所得税0.315%) |
消費税 | アパートを売却する年に課税事業者に該当する場合仲介手数料が発生する場合 |
その他費用 | ・ローンの一括返済にかかる手数料:1〜3万円程度 ・測量費(土地の境界線を明確にするための費用):50万〜100万円程度 など |
アパートの売却によって得た利益には譲渡所得税が課せられます。譲渡所得税は不動産の保有期間に応じて税率が変動するため注意しましょう。保有期間が5年以下の場合は39.63%、また、保有期間が5年を超える物件の譲渡所得には20.315%の税率が課されます。
必要書類
いくつかの書類の提出も必要です。必要書類を事前に確認し、準備を済ませておくと、スムーズに手続きを進められます。
【アパートの売却に必要となる書類の一例】
- 土地/建物登記済証、登記識別情報
- 経費明細
- 固定資産税、都市計画税納税通知書
- 建築確認通知書、検査済証
- 測量図、建築図面
- 印鑑証明書
- 購入時の売買契約書
- 物件状況等報告書
- 設備表
- 銀行口座書類
- 抵当権等抹消書類
- 住民票 など
この他、アパートの鍵や実印も用意しておきましょう。また、実際に必要とされる書類は状況に応じて異なります。不動産会社に仲介を依頼している場合は事前に確認しておくと安心です。
まとめ
アパートの売却相場は、物件の築年数や立地条件、修繕状況などにより異なります。国土交通省が運営する「土地総合情報システム」を利用したり、ポータルサイトをチェックしたりしながら、相場を確認してみましょう。
不動産会社に直接相談するのも方法のひとつです。自分で相場を調べる時間や手間を削減できます。アパートを高く売却するためのポイントや、手続きの方法、売却にかかる費用などを紹介した今回の記事も、ぜひ参考にしてみてください。