不動産売却の手続き方法は?流れや書類、注意点を徹底解説!
目次
不動産の売却は、大きなお金が動くため慎重になる方は多いでしょう。不動産の売却を円滑に進めるためには、書類をそろえたり必要経費を把握したりといった事前準備をしっかりとしておくことが必要です。
不動産売却の手続き方法や必要な書類に加えて、支払いを要する手数料などについて解説します。
不動産売却の手続きを進める流れ
不動産を売却するには、まずは売り主側で相場情報を収集・把握し、不動産会社に査定依頼後、納得できれば媒介契約締結を結ぶ流れが一般的です。不動産会社の販売活動により買主が決まったら、売買契約と引き渡しを行います。
なお、不動産を売却することで利益が出た場合は確定申告をする必要があるため、売却した年の翌年に確定申告をすることで手続きが完全に終了します。
1.相場の情報を収集する
不動産を売却する際は、不動産会社に連絡する前に売却予定の不動産の相場価格を把握しておくことが重要です。周辺相場の情報を集めていないと、不動産会社から提示された査定額が妥当なのか判断できないためです。
周辺相場を把握するには、『楽待』や『健美家』といった不動産ポータルサイトで物件を検索する他、国土交通省が運営する『土地総合情報システム』などを利用するとよいでしょう。
2.不動産会社に相談・査定依頼をする
個人がインターネットで調べられるのはあくまで周辺相場であり、特定の不動産についての金額を把握するのは困難です。正確な査定額を把握するためには、専門家である不動産会社の査定を受ける必要があります。
納得できる査定額を提示されたら、不動産会社と具体的な売却の相談をする段階に移ります。スムーズに相談を進めるためにも、「売りたい理想価格」と「最低価格」や「売却期限」なども事前に決めておくことが望ましいです。
売主側の希望売却額が明確かつ現実的であれば、不動産会社から希望に沿った対応を引き出せるでしょう。
3.不動産会社と媒介契約を結ぶ
売却額や売り出し条件などに納得できたら、次のステップは不動産会社との媒介契約締結です。媒介契約には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。
各契約の違いは、不動産会社から売主に対して行われる売却活動報告の頻度や、他の不動産会社とも契約を結べるかなどの自由度です。「専属専任媒介契約」が最も手厚い代わりに、同時に複数の会社と媒介契約を結んだり、自分で買主を探す行為(直接取引)はできません。
なお、媒介契約は契約期間を3か月間とするのが一般的で、売主から不動産会社に対して支払う手数料についても規定されています。契約期間中に不動産が売れなかった場合は、手数料を支払う義務は発生しません。
4.売却活動を行う
不動産会社と媒介契約を締結すると、不動産会社が広告を掲載するなどの売却活動を始めます。買手候補者が希望する場合は、住戸内の内覧を行うこともあります。
内覧とは買手候補者が売却不動産を見に来ることです。また「オープンハウス」といって、特定の期間、購入検討者が自由に不動産を見学できるようにすることもあります。
そのような際に掃除や手入れが行き届いていれば買手候補者に良い印象を与えられるため、将来的に売却を視野に入れるなら、普段から意識しておくとよいでしょう。
5.売買契約を締結する
売却活動によって買主が見つかったら、買主から購入申込書が提出されます。購入申込書には買主が希望する売買価格や引き渡し希望時期、契約の条件などが記載されており、申込書に基づいて売買条件の調整や交渉をします。
交渉がまとまったら、次のステップは売買契約の締結です。契約書には、売買価格や引渡日などの情報に加えて、免責事項なども記載されています。署名捺印をする前に売主として内容を把握しておくことが必要です。
また、手付金支払いの条件を設定している場合は、売買契約の締結に合わせて買主から手付金が振り込まれます。
6.決済と引き渡しを行う
売買契約の締結が完了したら、契約で設定された引渡日に合わせて決済と不動産の引き渡しを行います。決済とは買主による残代金の支払いと、不動産の引き渡しのことです。
売買契約締結時に手付金を受け取っている場合は、売買金額から手付金を除く残金を買主から受け取ります。最終的に売主が受け取る金額は、さらに仲介手数料や諸経費などを除いた金額です。
また、お金の清算をするとともに、不動産の鍵や設備関連の取扱説明書などを買主に引き渡します。
7.必要に応じて確定申告をする
不動産売却によって利益が発生した場合は確定申告が必要です。
課税される税金の税率は、売却する年の1月1日時点で購入から売却・引き渡しまでの所有期間が5年以下か超えているかによって異なります。
- 所有期間5年以下:短期譲渡所得として39.63%
- 所有期間5年超え:短期譲渡所得として20.315%
※住民税・復興特別所得税含む
また、自分が住んでいた不動産を売却する場合は、所有期間が10年を超えているなど一定の条件を満たせば軽減税率の特例を受けられます。必要に応じて税理士に相談するのがおすすめです。
不動産売却の手続きに必要な書類
不動産の売却手続きにあたって売主側で用意する主な書類は以下の通りです。
- 免許証などの本人確認書類
- 発行から3か月以内の住民票
- 実印と印鑑登録証明書
- 売却する不動産の登記識別情報(登記済証)
- 固定資産評価証明書
- 売却不動産に関する建築、土地、設備関連資料一式
- ローンの残高証明書(ローンの残債がある場合)
登記識別情報はその不動産の所有権を公的に証明するために必要です。不動産を取得した際に所有権を登記することで法務局から発行されます。
登記識別情報は売却まで大切に保管し決済時に担当の司法書士に、それ以外の書類は決済までに不動産会社または買主に渡しましょう。不動産に関係する書類は再発行ができないものも多いため、紛失や破損に注意して保管してください。
引き渡しにあたって必要となる書類には、住民票や印鑑登録証明書など役所などでの手続きを要するものが複数あります。
また、ローンの残高証明書は銀行から発行される書類です。定期的に銀行から郵送されてきますが、手元にない場合は銀行への問い合わせが必要です。各書類とも買主への不動産引き渡し日までに余裕を持って準備するようにしておきましょう。
不動産売却の手続きにかかる費用は?
不動産を売却すると、すでに解説した税金(譲渡所得)に加えて不動産会社へ支払う仲介手数料など何種類かの費用がかかります。主に以下のような費用です。
- 仲介手数料
- 抵当権の解除にかかる費用(ローンの残債がある場合)
- 印紙税
- 消費税
- 登録免許税
- その他費用(一括返済手数料、測量費など、当該契約決済に必要なもの)
印紙税は売買契約書などに貼付する収入印紙の購入に際してかかる費用です。印紙税の金額は課税対象の文書によって異なりますが、不動産売買契約書には軽減措置が設けられています(2027年3月31日まで)。
登録免許税は、不動産所有権の移転登記に際してかかる費用です。土地・建物それぞれに課され、建物の税率は2%、土地の税率は2026年8月31日まで1.5%です(以降は2%になる予定です)。
不動産売却の手続きをする際の注意点
不動産売却について特に注意を要するのは、ローンの残債がある不動産を売却する場合や相続した不動産を売却する場合などについてです。
相続不動産の売却はそろえる書類が増えるなど事前の準備から時間を要するケースもあるため、必要な手続きと流れの把握が重要になります。
抵当権の解除が必要になる
ローンの残債がある不動産には銀行の権利として抵当権という権利が設定されています。抵当権とは、ローンの契約者が返済不能状態に陥った場合に、銀行が不動産を競売にかけて残債を回収するための権利です。
売主は買主から受け取ったお金を原資として残りのローンを返済することになりますが、ローンを完済したら抵当権を解除します。
抵当権の解除は司法書士などへ依頼するのが一般的です。また、依頼に際しては司法書士事務所に対して支払う費用が発生します。費用は司法書士事務所によって異なりますが、相場はおおむね1万円から2万円程度です。
相続した不動産を売却する場合は相続登記をする
親などから相続した不動産を売却する場合は、売却手続きへ入る前に相続登記が必要です。亡くなった元の所有者から相続人へと不動産所有者名義を変更することを、相続登記といいます。
相続登記の申請は、2024年4月1日から義務化されています。それ以前に相続が発生した場合も義務化の対象となりますのでご注意ください。
相続登記を行うためには、不動産の登記事項証明書など必要書類をそろえた上で法務局を訪問して手続きします。売却に要する書類をそろえるのと同様に、相続登記にも時間がかかるため、相続不動産を売却する場合は時間に余裕を持って対応することをおすすめします。
個人間売買は避ける
不動産の売買にあたっては、必ずしも不動産会社の仲介を受けなくてはいけないわけではありません。また、不動産会社と一般媒介契約を締結している場合は、売主が自ら買主を探して売却手続きをすることも可能です。
しかし、不動産会社の仲介を受けないと、売却に際した広告活動を売主自ら行う必要がある他、売買契約書の作成も自分で行うなど法的なリスクを伴います。後々のトラブルを避けるためには、個人間売買は極力避けるのが賢明です。
販売実績が豊富な不動産会社に依頼する
不動産会社の仲介を受ける前提であれば、まずは不動産会社を探すことから始まります。その際おすすめなのは、複数の不動産会社をピックアップして査定を申込むことです。
ただし不動産会社の選び方によっては、売却活動期間が長期化するなど、好ましくない結果につながる可能性もあります。
不動産会社を選ぶ際には、売却物件と同じ種類の不動産の売却実績や売却に向けたサポート体制を比較することが有効です。
まとめ
不動産の売却にあたっては、不動産会社に相談する前の情報収集や書類の収集など、売主側の事前準備を要します。なお、相続不動産を売却する場合は、通常の不動産を売却する手続きに加えて相続登記の手続きなども必要です。
書類の収集には官公庁での手続きを要するものや、銀行への連絡が必要なものなどもあるので、時間に余裕を持って対応することをおすすめします。
また、無事に不動産売却が完了したとしても税金などの費用がかかることもあるため、必要な費用をあらかじめ把握しておくとよいでしょう。