アパート売却に適切なタイミングは?見極めるポイントと注意点を解説
目次
アパートの売却益を増やすには、ベストなタイミングを見極める必要があります。とはいえ、ベストなタイミングとはいつなのか、どのようにしてタイミングを計ればよいのか分からない方も多いでしょう。
本記事では、アパートの売却に適したタイミング・売却時期を見極める際のポイントを詳しく解説します。売却時の注意点も併せて解説するため、アパートの売却を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
アパートは売却するタイミングの見極めが重要
投資用として購入したアパートやマンションなどの不動産は、第三者に貸し出して運用することで、継続的な収入を獲得できます。ただし、「永続的に」「定額の収入を」得られるとは限りません。不動産は時間の経過と共に老朽化していくため、価値も低下する傾向があります。とはいえ、「できるだけ高く売りたい」「価値が下がりきる前に売りたい」と考える方も多いでしょう。
そこで目を向けたいのが、売却のタイミングです。相場や金利の要因によって、プラスになるかマイナスになるかが左右されます。アパートの保有期間によって税金も変わるため、タイミングを見計らうことは非常に大切です。
売るなら今?アパートの売却を迷うタイミング
ここでは、投資家がアパート売却に踏み切る際の代表的なケースを3つ紹介します。自身の運用状況と比較しながら、不動産を売却するタイミングを決めましょう。
資金が必要になったとき
投資家のライフスタイルや投資状況などの変化に伴い、まとまった資金が必要になったタイミングでアパートの売却を検討する方がいます。例えば、子どもの教育資金が必要になったときや起業をすることになったとき、病気・けがの治療費が必要になったときなどです。
アパートを貸し出しながら他の資産運用をする手もありますが、家賃収入は得られる金額に限度があります。「一度にまとまった金額を得るなら売却が近道」とも考えられるでしょう。
思うように利益を得られなくなったとき
利益が確保しにくくなったときも、売却を検討するのに適したタイミングです。空室が増えたり入居者とのトラブルがあったりして思うように経営が進まないときは、今後安定的な収入を確保することが難しくなる恐れがあります。そのため、「売却できるうちに売ろう」と考える投資家も少なくありません。
タイミングを見逃さないためにも、定期的にキャッシュフローを確認しましょう。投資を続けた場合に得られる利益よりも出費やリスクが上回るときは、早めに売却することで投資による損失を小さく留められます。
減価償却の期間が終了したとき
減価償却の期間が終了する際にアパートを売却するというのも、代表的なケースのひとつです。減価償却によってアパートの取得費用などを経費計上すると、課税対象となる所得が減るため税金対策につながります。ただし、減価償却できる期間はあらかじめ定められている点に注意が必要です。
減価償却の期間が終わると、所得税・住民税などの税負担額が増加する可能性があります。場合によってはキャッシュフローがマイナスに転じることもあるでしょう。減価償却の終わるタイミングをあらかじめ把握しておき、その前に売却できるよう準備を進めておくことが大切です。
アパート売却に適したタイミングを見極めるポイント
アパートを適切なタイミングで売却するために、以下の6つの情報についてリサーチしましょう。
- 相場が上がっているか
- 入居状況が良好か
- 保有期間が5年を超えているか
- 修繕が必要な箇所がないか
- 税制改正の予定があるか
- 金利に変動があるか
相場が上がっているか
土地は時間の経過と共に劣化していくものではないため、価格変動の影響が少ないのが特性です。とはいえ、永続的に同じ価格を維持できるわけではありません。景気が悪化したりアパート周辺の人口が減少していたりすると、需要がなくなることで価値が下がることもあるでしょう。
一方で、「不動産投資の注目度が高まり投資家が増える」「収益物件の周辺地域の人気が高まる」といったことがあれば、不動産の価値が向上していくと考えられます。
このように、不動産投資の相場が上がっているときは売却に最適なタイミングです。購入価格よりも販売価格が高くなれば、キャピタルゲインを期待できるでしょう。
入居状況が良好か
満室のアパートは収益性が安定しており、購入希望者にとって好条件となるため高く売れる可能性があります。家賃収入を獲得し続けるメリットと、売却することによりキャピタルゲインを得るメリットを比較しながら、売却するかどうかを判断しましょう。
不動産は売りに出してすぐに購入希望者が現れるとは限らないため、満室が続いている時期に高値で売り出し始めるのも方法のひとつです。もし、すぐに購入希望者が現れれば利益を見込めやすいです。
ただし、無理に家賃を下げて空室を埋めるのは避けましょう。また、アパートの状態によっては、立ち退き交渉をしながら建て直す、あるいは更地にするほうが売却しやすくなるケースもあります。売却時期とともに、どのような状態で売却するべきかといった点も見極め最善の方法を選びましょう。
保有期間が5年を超えるか
アパートの保有期間も確認しておきたいポイントのひとつです。保有期間が5年を超える場合と5年以下の場合で、売却益(譲渡所得)に課せられる税率が異なります。税率は以下の通りです。
所得税 | 復興特別所得税 (所得税額の2.1%相当) | 住民税 | 合計 | |
短期譲渡所得 (所有期間5年以下) | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 (所有期間5年超え) | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
(参考: 『国税庁 土地や建物を売ったとき』)
短期譲渡所得と長期譲渡所得では、所得に課される税率に約2倍の差があります。納税金額をおさえたいときは、アパートの保有期間が5年を超えてから売却するのが得策でしょう。
ただし、5年を待つ間に不動産の価格が下落することもあります。不動産価格の変動や投資家の流れなどもチェックしながら、売却のタイミングを計ることが大切です。
修繕が必要な箇所がないか
収益物件の購入希望者は、アパート購入時に「すぐに修繕が必要になる箇所がないか」を気にする傾向があります。アパート経営の際は、不動産を適切に管理し、入居者に快適な住環境を提供する義務があるためです。
購入後まもなく大きな修繕を必要する物件の場合、購入者は自分で費用を負担して修繕しなければならなくなります。「できるだけ初期費用をおさえたい」と考える新オーナー目線に立ち、大きな修繕の必要がないときに売りに出すのが得策です。比較的高く、早く売却できる可能性が上がるでしょう。
税制改正の予定があるか
税制改正の有無も、アパート売却の際に確認しておきたい項目のひとつです。例えば消費税が上がることで、修繕費用や管理費用にかかる費用も増加します。増税により出費が増えれば、その分手元に入る利益は減少するため、利益を増やすために家賃を上げることを検討することになるかもしれません。
しかし、家賃が上がることで空室リスクも高くなる恐れがあります。空室リスクの高さは購入希望者にとってマイナスポイントとなるため、増税前の経営状況が安定した時期に売却しておくのが得策です。
また、消費税の増税前は不動産を購入しようと動く人も増加する傾向があります。需要が増加するときに売却することで、より良い条件で売却できるようになるでしょう。
金利に変動があるか
不動産投資には金利変動リスクがあります。金利変動リスクとは、金利の変動によって資産価値が変わる可能性のことです。金利が高くなるとローンの返済総額が増えるため、ローンを組むことに抵抗を感じる投資家が増える恐れがあります。金利が高くなりそうなときは、アパートの売却に適した時期とはいえないでしょう。
一方、金利が低くなると返済総額が減るため、収益物件の購入者が増加する傾向があります。どれだけ優良な物件でも、買い手が現れなければ売却はできません。アパートを売却したいときは、購入希望者の増加が見込める時期として、「できるだけ金利が下がったタイミング」を狙いましょう。
アパートをオーナーチェンジで売却するときの注意点
オーナーチェンジとは、アパートの入居者が入居した状態のまま所有者(オーナー)だけが変わることです。入居者に退去してもらう必要がないため、比較的短期間で現金化できるというメリットがあります。
オーナーチェンジによりアパートを売却したいと考えている方もいるでしょう。そこでこの項目では、オーナーチェンジする際の注意点を3つ紹介します。
利回りが低いと次のオーナーが見つかりにくい
利回りは売却時において重要であり、オーナーチェンジでアパートを売却する際も同様です。利回りとは投資金額に対する収益割合のことで、取得費用の金額やアパートの需要といった要因によって変動します。
「利回りが高い=優良物件」とは限りませんが、利回りが高いと銀行からの融資を受けやすくなったり、より大きな利益を期待できたりすることから購入希望者が増加しやすくなるでしょう。
一方、利回りが低いと収益物件としてのメリットが少なく感じられ、購入をためらう方も増えるため注意が必要です。
レントロールや修繕履歴を整理しておく
レントロールとは、賃貸借条件を一覧表にした書類のことです。アパートをオーナーチェンジで売却する際は、レントロールや修繕履歴などをまとめておきましょう。必要書類を整理しておくことで、不動産仲介会社や購入希望者に求められた際に迅速に提示できます。
実際、修繕履歴を要求され、すぐに提示すれば「しっかり管理されている物件」という印象を与えられるでしょう。
また、書類が整理されていれば、売却後にアパート経営でトラブルが発生した場合にも、新しいオーナーが迅速に対応できるようになります。オーナーチェンジによる売却では、次のオーナーが経営に慣れるまでに時間がかかるため、できるだけ負担をかけないようにすることが大切です。
権利関係の引き継ぎをスムーズに行う
オーナーチェンジの際は、賃料・共益費、駐車場代、敷金など受け渡す権利やお金をスムーズに引き渡さなければなりません。引き継ぎが上手くいかない場合、売り手と買い手との間でトラブルに発展する恐れがあります。手続きがスムーズに進むよう、あらかじめ準備をしておきましょう。
なお、権利関係が複雑で、自身で手続きを進めることに難しさを感じるときは、専門家に依頼するのも方法のひとつです。プロのアドバイスを受ける中で、アパート売却に向けてやるべきことが明確になるでしょう。
まとめ
アパートを売却する際はタイミングが重要です。「不動産の保有期間」や「相場の価格変動」「税制改正の状況」などを確認しながら、ベストなタイミングを見極めましょう。
なお、オーナーチェンジでアパートを売却する場合はスムーズに手続きを進める必要があります。専門家に相談しながら、不備のないよう準備を進めていくことが大切です。