不動産投資のメリットは?投資に向いている人・ポイントなどについて解説
目次
老後の生活維持や多様な働き方により資産形成の意欲が高まっています。とくに老後の資金問題は昨今の老後2000万円問題などが話題になることも多く、「年金だけでは老後の資金が不足する可能性がある」と多くの方が危機を感じています。
不動産投資は自己資金が少なくても効率良く資産を増やせる投資法です。家賃収入で安定した収入を得られる可能性が高く、節税効果も期待できるなどメリットが多数あります。
そこで本記事では「不動産投資のメリット」や「ポイント」「不動産投資に向いている人」を解説します。不動産投資に興味がある方は本記事を参考にしてみてください。
不動産投資で収益を得る
不動産投資では主に2通りの収益を得る方法があり、以下のものが挙げられます。
- 家賃収入を得る不動産投資
- 売却益を目指す不動産投資
次の項目では不動産投資で収益を得る2つの方法について詳しく解説します。
家賃収入を得る不動産投資
1つ目は取得した投資不動産の貸し出しにより家賃収入を得る投資手法です。
家賃収入のように資産の保有と運用をしながら収益を得る方法を、「インカムゲイン」と呼びます。
不動産投資で家賃収入を得るための手段として、新築物件と中古物件に分けられます。収益を得る方法やメリット・デメリットは以下の通りです。
新築 | 中古 | |
収益を得る方法 | 土地を購入して建物を建てる新築不動産を購入する新築物件を貸し出す | 中古不動産を購入して貸し出すすでに賃貸中の中古不動産を購入する(オーナーチェンジ) |
メリット | 新築であることによる賃貸需要が期待できる減価償却期間を長く取れる | 初期投資をおさえられる価格の下落幅が少ないオーナーチェンジの場合は購入してすぐに家賃収入を得られる |
デメリット | 初期投資が大きくなる収益化するまでに時間がかかる築年数の経過による家賃の下落幅が大きい | 新築よりも修繕費用がかかる築年数の経過による空室リスクを伴う |
売却益を目指す不動産投資
2つ目は安く購入した不動産を高値で売却して利益を得る投資手法です。購入時と売却時の差額(売買差益)で収益を得る方法を「キャピタルゲイン」と呼びます。
売却益を目指す不動産投資では中古不動産を安く購入してリフォームやリノベーションを行ってから売却するのが一般的です。不動産を安く購入してすぐに高値で販売に出すことも可能ですが、付加価値をつけない状態で高値成約に至るのは難しいでしょう。
不動産投資は、その他の投資商品と比べて高額であるため、流動性は低い投資です。そのため、購入を検討する際には売却時まできちんと見据えてシミュレーションを行いましょう。
キャピタルゲインはインカムゲインと比較して一度に大きな利益を期待できる投資方法ですが、物件の目利きや資金力、リフォーム・リノベーション業者の手配が必要になるため、知識と経験のあるプロ向けの投資手法といえます。
不動産投資のメリット
不動産投資が自分に合っているかどうかを判断するために不動産投資のメリット・デメリットを把握する必要があります。
不動産投資のメリットは以下の通りです。
- 継続的・安定的な収入が期待できる
- 節税効果が期待できる
- 生命保険代わりになる
- 自己資金が少ない人でも始めやすい
- 本業と両立しやすい
- 収支予測ができるため、資金計画を立てやすい
- インフレ対策につながる
次の項目では不動産投資における7つのメリットを詳しく解説します。
継続的・安定的な収入が期待できる
不動産投資の主な収入源は入居者から受け取る家賃収入であるため、空室を発生させない限り継続的かつ安定的な収入が期待できます。獲得した家賃収入は生活費の確保や老後の貯蓄に回せるほか、さらなる投資の拡大資金にもできます。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の調査によると、2020年下期における世帯ごとの平均居住年数は以下の通りです。
1年未満 | 1〜2年 | 2〜4年 | 4〜6年 | 6年以上 | |
学生 | 0.5% | 9.2% | 86.9% | 3.4% | 0% |
一般単身 | 0.5% | 10% | 65.9% | 23.7% | 0% |
一般ファミリー | 0.5% | 0.5% | 23.9% | 61.2% | 13.9% |
高齢者(65歳以上) | 1% | 0.5% | 13% | 22.6% | 63% |
法人 | 1.4% | 13.5% | 63.5% | 19.2% | 2.4% |
外国人 | 3.7% | 24.6% | 53.5% | 15.5% | 2.7% |
学生をターゲットにする場合は2〜4年で入居者の入れ替わりが発生します。しかし、入学や卒業の時期に合わせて空室になる期間が定まっているため不動産のメンテナンスが必要になる時期の予測がしやすく、資金計画も立てやすいと言えます。
一方で、一般ファミリーや高齢者の場合は居住年数が6年以上の割合も増えてくるため、長期間安定した家賃収入を見込めます。しかし退去した後は設備などが古くなっており、大規模なリフォームを検討しなければいけない可能性もあるため対策が必要です。
ターゲットにする入居者層によって平均居住年数が大きく変わるため、自分にとってどのような収支計画が望ましいのかを考えましょう。
節税効果が期待できる
不動産は所得税や住民税、相続税、贈与税など幅広い節税対策が期待できる資産です。
不動産の節税効果が高い理由として挙げられるのは以下の2つです。
- 不動産所得は総合課税に分類され、他の所得と損益通算できる
- 不動産は現金よりも評価額が低くなる
不動産から得られる利益(家賃収入 ー 必要経費)は「不動産所得」に該当します。不動産所得は総合課税に分類されるため、赤字が発生した際に給与所得などと損益通算が可能です。
たとえば不動産を購入した年や大規模なリフォームをした年は多くの費用がかかり赤字になるのが一般的です。しかし総合課税である不動産所得の赤字は給与所得と損益通算できるため、所得税や住民税を計算するもとになる「課税所得」をおさえられます。
また、不動産投資は購入時の価格を耐用年数に応じて経費計上する「減価償却」があるため、実際に支払った費用よりも多くの金額を経費計上できます。
さらに不動産は現金で相続するよりも2〜3割ほど評価額が低くなるため相続税や贈与税も節税可能です。たとえば1億円の現金を相続した場合は全額に対して税金が課されますが、時価1億円の不動産を相続した場合は7,000〜8,000万円の資産として課税されます。
不動産を長く運用するうえで節税は重要なポイントです。そのため投資効率を上げるには税金への理解を深める必要があります。
生命保険代わりになる
不動産を購入する際は団体信用生命保険に加入するのが一般的であるため、生命保険の代わりとして役立ちます。団体信用生命保険とは加入者が死亡または高度障害になった際に保険金が支給されローンが弁済される保険です。
万が一加入者が亡くなった場合に、家族へローン残債なしの不動産を遺せるため家賃収入を得られるメリットがあります。高度障害になった場合も家賃収入で生活費を補えます。なお、家賃収入を得るだけでなく不動産を売却してまとまった資金の獲得も可能です。
しかし不動産は固定資産税や都市計画税がかかり、さらにマンションであれば管理費や修繕積立金などの固定費もかかるため、入居者が退去した場合は支出だけが残ってしまいます。そのため、不動産を相続したあとは不動産を所有し続けるか売却するかの話し合いが必要です。
自己資金が少ない人でも始めやすい
不動産が担保になり家賃収入が返済原資であるため、自己資金が少ない方でも不動産投資ローンを利用すれば投資を始められます。一方で、株式の現物投資やREIT、金(ゴールド)などは原則自己資金のみで投資するため、まとまった利益を得るには多くの自己資金を用意する必要があります。
たとえば500万円の自己資金を年利3%の株式で運用する場合、年間の収益は15万円です。しかし500万円の自己資金をもとに2,500万円のローンを組み、3,000万円の不動産を運用する場合は、同じ3%の利回りであっても年間90万円の収益になります。
同じ自己資金であってもローンを組むとより効率的な投資が可能です。また自己資金が少なくても優良物件であれば、レバレッジ効果によって効率的に不動産投資の利益を得られます。
なお、レバレッジ効果とは借入金など他人資本を使っての投資を意味します。たとえば500万円の自己資金で2,500万円分の投資を行う場合は「5倍のレバレッジをかける」と表現します。
不動産はローンにより効率的に資産運用できますが、個人の年収や勤続年数などの属性面や物件の評価などで総合的に判断されるため、ローンを組めない可能性がある点に注意が必要です。
金融機関は不動産を担保にして融資するため物件の担保評価を細かくチェックします。担保価値が低く評価されてしまうと融資を受けられない、もしくは希望融資価格から減額される場合もあるため物件選びは大切です。
本業と両立しやすい
不動産投資に必要な業務の多くは外部に委託できるため、本業が忙しい方でも両立しやすい特徴があります。
不動産投資で必要になる具体的な業務は以下の通りです。
- 賃貸募集
- 賃料回収・督促
- 清掃
- 見回り
- トラブル対応
- 修繕
上記の内容を一人で行うのは多くの手間と時間がかかるため日常管理は不動産管理会社への委託をおすすめします。
とくに家賃滞納が発生した場合は、どのように対処するべきかわからず対応が後手に回ってしまいがちです。トラブルの連絡もいつ入るか予測ができず、場合によっては深夜や早朝に対応しなければいけないケースもあります。
不動産を一人で管理するのは難しいため、手間を減らしたい方は管理のプロである賃貸管理会社に委託するのがおすすめです。賃貸管理会社に委託すれば管理の手間を省けるうえに家賃滞納が発生した際にプロへ回収を任せられるため安心です。
信頼できる不動産会社を見つけられれば本業に専念でき、自動的に家賃収入(不労所得)を得られる仕組みも作れます。資産状況によっては早期退職も検討可能です。修繕や売却に適したタイミングのアドバイスも受けられるため、資産価値の維持や向上にもつながります。
なお、賃貸管理会社に支払う管理委託手数料の相場は家賃の5%程度です。
収支予測ができるため、資金計画を立てやすい
家賃収入をメインにしたインカムゲインの不動産投資は収入(家賃、更新料、礼金など)と諸経費(修繕費、水道光熱費など)をある程度把握でき、収支予測しやすいため資金計画を立てやすい特徴があります。
不動産投資をする際は以下の項目の収支予測を踏まえて資金計画を立ててみましょう。
- 家賃
- 共益費
- 更新料
- 礼金
- 修繕費
- 固定資産税・都市計画税
- 毎月のローン返済
- 管理費・修繕積立金(マンションの場合)
- 家賃下落率
不動産投資で気をつけなければならない要素は家賃下落率です。不動産投資では同額の収支が何年もの間継続するわけではありません。築年数が経過するごとに家賃は下落していくため周辺の家賃相場を踏まえて収支予測を立てる必要があります。
単純な不動産の収入と支出だけであれば個人でも簡単に計算できますが、家賃下落率を踏まえたシミュレーションは不動産会社に作成してもらうのがおすすめです。自身の年齢や収入、月々いくらの家賃収入を得たいかなどをもとに資金計画を考えてみましょう。
インフレ対策につながる
不動産は現物資産であるためインフレ対策につながります。インフレとは物価が上がり、相対的にお金の価値が減少する状態です。たとえば1個100円の商品は1,000円で10個購入できますが、1個200円に値上がりすると同じ1,000円でも5個しか購入できません。
物価の上昇に合わせてお金も増えれば問題ありませんが、現金や銀行預金ではほとんどお金が増えないためインフレに対応できません。現金ではなく物での資産保有が重要であり、現物資産に該当するのが不動産です。
現物資産である不動産は日々価格が変動しています。インフレ時には不動産価格が上昇するうえ家賃も上がるためインフレ対策になり、市況とタイミングによっては売却益も獲得可能です。
しかし物価が上昇する状況ではローン金利の上昇に注意が必要です。インフレが加速し過ぎると抑制するために金利を引き上げるのが一般的です。変動金利を選択している場合はローン返済額が増えてしまうため注意しなければなりません。
不動産投資のデメリット
不動産投資は多くのメリットがある一方で、デメリットも伴います。不動産投資を検討する際は以下のリスクを把握したうえでリスクヘッジを心がけましょう。
- 家賃下落リスク
- 空室リスク
- 自然災害リスク
- 家賃滞納リスク
- 金利変動リスク
- 資産価値下落リスク
- 修繕リスク
次の項目では不動産投資のリスクを詳しく解説します。
家賃下落リスク
不動産投資では投資開始時の家賃がずっと続くわけではありません。築年数の経過や類似物件の増加によって家賃を下げなければならない事態も起こり得ます。家賃下落を想定せずに収支計画を立ててしまうとローンの返済計画に支障が生じる恐れもあるため注意が必要です。
たとえば毎月の家賃収入が10万円でローン返済が7万円、諸費用が2万円の新築物件があるとします。毎月1万円の利益が出ている状態ですが、5年後に家賃が1万円下落すると利益は0になってしまいます。
さらに下落すると赤字に陥るため必ず家賃下落を踏まえた収支計画を立てる必要があります。場合によっては繰り上げ返済を組み込みながら収支計画を立てるのも有効です。とくに新築不動産は築10年目まで家賃が大きく下落する傾向にあるため、新築不動産を購入して投資する場合は注意しなければなりません。
一方で、中古不動産の家賃の下落幅は新築不動産と比べると小さいものの、築年数の経過によって徐々に家賃は下がっていきます。概ね築20年程度で安定しますが、家賃下落を踏まえた収支計画を立てる必要があります。
なお、需要が高い不動産ほど家賃は下落しにくいです。都心の主要駅の近くにある不動産を購入するなど立地条件の良い不動産に投資するのも家賃下落に対するリスクヘッジに役立ちます。
空室リスク
不動産投資では想定していた入居状況が続くとは限りません。空室期間が長引いた場合、家賃収入が大幅に減少してしまいローン返済に支障が出る恐れがあります。ローン返済に支障が出ると最悪の場合不動産を差し押さえられ、競売などで手放す事態につながりかねません。
また築年数が浅い物件であっても賃貸の繁忙期である新生活シーズンを逃すと長期間空室になってしまう恐れがあるため要注意です。
少しでも空室リスクを減らすには賃貸需要が高いエリアの物件に投資する必要があります。たとえば複数路線が通る主要駅から徒歩圏内の物件や人口が増加傾向にある街の物件などです。
また空室を発生させたくない方は家賃保証付きサブリース契約という選択肢もあります。
サブリース契約とは不動産会社が物件を借り上げて転貸する契約形態です。不動産オーナーは不動産会社に物件を貸しているため物理的にはその部屋が空室の期間中であっても家賃収入を得られます。
サブリース契約をすると安定した家賃収入を得られますが、直接入居者と賃貸借契約を結ぶよりも賃料が低くなる点にも注意しなければなりません。また、サブリース契約では更新時における家賃の見直しにより家賃が下がるリスクもあるため、契約内容をしっかりと理解したうえで契約先を決定する必要があります。
自然災害リスク
現物資産である不動産は地震や津波、洪水、火災などの災害リスクが伴います。災害で倒壊や焼失などの被害を受けた場合、修繕や建て替えに膨大な修繕費と時間がかかります。
保険が適用される被害であれば費用の心配は少ないですが、修繕や建て替え期間中は家賃収入を得られません。家賃収入がない中でもローンは返済しなければならないため返済計画に支障が生じる可能性が高くなります。
災害リスクを少しでも減らすには物件と保険選びが重要です。物件選びではハザードマップなどで自然災害リスクが高くないかしっかりと確認しましょう。近くに河川がある場合などはとくに注意が必要です。不動産購入時の重要事項説明の際にハザードマップに関する説明はありますが、自分でも過去の災害記録などを確認することが必要です。
また、ローンを組む場合は火災保険への加入が必須であるケースが一般的ですが、地震保険は任意です。しかし地震保険は単体で加入できないため火災保険の特約として加入する必要があります。
なお、地震保険の保険金額は火災保険金額の30%~50%で設定し、損害の程度によって支払われる割合が変わります。地震保険における保険金額の目安は以下の通りです。
- 全損:100%
- 大半損:60%
- 小半損:30%
- 一部損:5%
地震の多い日本で長期間安定的に不動産投資をしたい方は地震保険への加入も検討することをおすすめします。
家賃滞納リスク
入居者がいる状態であっても家賃滞納が発生すると空室と同じ状態となり、家賃収入が減少してしまいます。家賃滞納はローンの返済計画に支障が出るだけでなく入居者とのやり取りに時間を割かれてしまうため、入居時は入居者の勤務先や年齢、過去の経歴などの確認が必要です。
しかし入居時には問題のない方であっても入居後に離職などが原因で家賃を滞納するケースもあります。実際に新型コロナウイルスによる雇い止めなどで2020年4〜6月は住居確保給付金の支給決定件数が6.5万件を超えました。経済情勢の変化などによっても家賃滞納は発生するため対策が必要です。
家賃滞納リスクに備えるには連帯保証人もしくは家賃保証会社をつけるのがおすすめです。家賃保証会社とは入居者が家賃を滞納した際に代わりに家賃を支払ってくれる会社です。入居者に家賃保証会社へ加入してもらえれば連帯保証人をつける必要はなくなります。
金利変動リスク
不動産投資ではローンを組んで効率良く投資できますが、金利変動リスクに注意しなければいけません。金利変動リスクとは経済情勢によるローン金利の変動です。
たとえば好景気になりインフレが発生すると過度なインフレを抑制するために金利が上昇します。変動金利でローンを組んでいる場合は金利が上昇すると毎月の返済額が増えるため返済計画に支障が出てしまう恐れがあります。
金利上昇リスクを回避したい場合は金利の変動の影響を受けずに安定した返済計画を立てられる固定金利でローンを組むのがおすすめです。
しかし固定金利は変動金利よりも金利が高く設定されているため、金利変動で変動金利が固定金利を上回らない限り返済額が多くなります。また、借入後に金利が下落した場合には変動金利であれば返済額が減少しますが、固定金利は金利下落の恩恵を受けられません。
変動金利は経済状況によって金利が変わり返済額も変動するためローンを組む際は変動金利と固定金利の比較検討が大切です。また、金融機関によって融資条件(金利、返済期間、金利プランなど)に差があるため多くの金融機関での比較も必要です。
資産価値下落リスク
修繕の有無や立地状況により異なるため一概には言い切れませんが、建物の価値は築年数の経過とともに下落するのが一般的です。
不動産投資の成功は人によって異なりますが、不動産の購入・運用・売却の一連の流れで最終的な収支がプラスであることが1つの指標となります。
不動産投資における収支の計算式は以下の通りです。
家賃収入 + 売却代金 - 取得価格
不動産投資で成功をおさめるには上記の計算結果がプラスになっている必要があります。
資産価値の下落が大きいと購入時よりも売却時の物件価格が下がり、最終収支がマイナスになる恐れがあるため注意しなければなりません。たとえば不動産を購入してから売却までに1,000万円の家賃収入があったとしても、売却時の価格が購入時よりも1,000万円以上下落していた場合、不動産投資で利益は得られません。
不動産投資は家賃収入や利回りだけでなく最終的な売却価格が重要であるため、資産価値の下落リスクが低い物件を選びましょう。立地が良く、築年数が経過した不動産であれば資産価値下落リスクが低く、資産価値(売却価格)が下がりにくいです。
また、建物の価値は築年数に応じて減少しますが、土地の価値は経済情勢や需要と供給で変動します。土地の価格が上昇すれば売却益も狙えるため都心の物件や駅からの距離が近い物件など立地を重視するのがおすすめです。
修繕リスク
不動産投資では家賃下落だけでなく修繕費用などの支出の増加によっても収益性が低下します。
築年数が経過するごとに修繕箇所が増えるため将来的に修繕費用は増加していく傾向にあります。できる限り修繕費用はおさえたいところですが、修繕を怠ると室内の状況が悪化し、空室リスクの増加につながるため注意が必要です。
賃貸需要を高めるにはリフォームやリノベーションが必要であるため購入する前に修繕費用を踏まえた資金計画を立てましょう。設備の耐用年数などから算出し、どれほどの頻度で大規模な修繕を実施するべきかなど計画の立案が重要です。
しかし設備はいつ故障するかわからないため、必ずしも当初立てた計画通りに進むとは限りません。急な支出に備えるためにも家賃収入の一部を修繕費として貯めておくのが最適といえます。
不動産会社に相談すると過去のノウハウや設備の耐用年数をもとに修繕計画のアドバイスを受けられるためおすすめです。
不動産投資で押さえておくべきポイント
不動産投資では成功が保証されているわけではありません。
そこで不動産投資で成功する確率を高めるためは以下の3つのポイントを押さえる必要があります。
- 物件別の特徴を把握しておく
- 不動産投資に必要な知識を身につける
- 利回りだけにこだわらず収支計画を立てる
次の項目では不動産投資における3つのポイントを詳しく解説します。
物件別の特徴を把握しておく
不動産投資をする際は物件別の特徴の把握が大切です。
不動産は新築と中古に分けられ、さらに一戸建て、区分マンション、一棟物件といった種類に区分されます。新築と中古物件には初期投資の額や利回り、賃貸需要、修繕費用の部分に違いがあります。
物件種別ごとの違いは以下の通りです。
一戸建てや区分マンションであれば複数物件を所有してリスクヘッジする方法もあるため、各物件種別の特徴を把握して投資の計画を立てましょう。
不動産投資に必要な知識を身につける
不動産投資を検討している方は不動産投資に必要な知識を身につける必要があります。
不動産投資では賃貸管理会社や家賃保証会社など、プロに委託しながら資産運用できますが、任せきりにするのはリスキーです。委託先からはさまざまなアドバイスを受けられますが、最終判断は自分で下さなければいけません。判断を誤った結果、資産を大きく減らしてしまう恐れもあるため幅広い知識が必要です。
不動産投資に必要な知識を身につけるおすすめの方法は以下の3つです。
- 本を読む
- インターネットで調べる
- セミナーや相談会に参加する
本は筆者の知見がまとまっており不動産投資を体系的に学べますが、情報が古い場合もあるため出版日の新しいものを読むのがおすすめです。一方で、インターネットは多くの情報に無料でアクセスできますが、情報が正確でない場合もあるため注意しなければなりません。
より詳しい不動産投資の知識や現在の市況などを知りたい方は、セミナーや相談会への参加がおすすめです。
利回りだけにこだわらず収支計画を立てる
不動産投資では利回りだけでなく、さまざまな要素を含めて収支計画を立てます。物件を選ぶ際は利回りに目が行きがちですが、利回りの高い物件は初期投資の回収が早い可能性があるだけで良質とは言い切れません。
投資の世界においてリスクとリターンは表裏一体の関係にあるため、利回りが高い物件ほどリスクも潜んでいます。たとえば築年数が経過している物件を売却する場合、新築物件と同じ利回りでは買い手がつきません。ほかの物件と差別化するためにも、物件価格をおさえて利回りを高くする必要があります。
「築年数がかなり経過している」「まとまった退去が控えている」など訳あり物件の可能性も考えられます。
利回りにこだわるのではなく綿密な収支計画の立案が必要であり、立地条件や入居状況、築年数などの総合的な観点から購入する物件を判断しましょう。購入を検討する物件の収支シミュレーションを行う場合は、空室リスクや修繕費の発生等、様々な要素を盛り込んでおくことが不動産投資の成功につながります。
不動産投資に向いている人はどんな人?
不動産投資に向いているのは以下3つの条件に該当する方です。
- サラリーマンや公務員
- 物事に対し恐れたり気後れしたりしない人
- 判断力のある人
次の項目では不動産投資に向いている方の3つの条件を詳しく解説します。
サラリーマンや公務員
不動産投資はサラリーマンや公務員など企業に属して安定した給与収入が見込める方に向いています。
サラリーマンや公務員の方に不動産投資がおすすめである理由は大きく分けて以下の2つです。
- 融資審査に通りやすい
- 万が一の際にも収入を得られる
金融機関は融資をする際に返済能力を重視しており、収入が不安定な自営業者よりもサラリーマンや公務員のほうが融資審査に通りやすい傾向にあります。また万が一家賃滞納や空室が発生した際にも、給与からローンの返済に回せるため金融機関は安心して資金を貸し出しできます。
物事に対し恐れたり気後れしたりしない人
不動産投資は物事に対して恐れたり気後れしたりしない方に向いています。不動産投資ではローンを組んで数千万円以上の債務を負うため、人によっては不安を感じてしまい決断し損ねる場合があります。
投資への取り組みでは「ローンを借金として捉えるのではなく、収益を生み出すための投資である」という前向きなマインドが大切です。物事をポジティブに捉えて投資を拡大し、収益獲得を目指しましょう。
判断力のある人
不動産投資では物件選びや売却のタイミングなど客観的事実に基づいた判断力が重要です。不動産購入は基本的に早い者勝ちであるため、購入の判断に時間がかかってしまう方は優良物件を買い逃してしまう可能性があります。
また、売却時にも市況を踏まえた適切な判断ができなければ売り時を逃してしまいます。不動産投資では機会損失を避けるためにしっかりとした市場調査や賃貸ニーズの高いエリアを調査して物件を購入して、不動産価格の下落タイミングや減価償却期間の満了後に売却するなどの判断力が求められます。
不動産投資を行うなら個人と法人のどちらが良い?
不動産投資では個人と法人で持つ場合のメリットとデメリットは異なります。次の項目では個人と法人それぞれにおけるメリット・デメリットを詳しく解説します。
個人で不動産投資を行うメリット・デメリット
個人での不動産投資は法人よりも手間やコストがかからないメリットがあります。法人を作る場合は設立費用や維持費用、法人決算などが必要ですが、個人で不動産投資を行う場合には必要ありません。
また、不動産所得は総合課税であるため給与所得と損益通算が可能です。サラリーマンや公務員の方であれば損益通算を活用すると所得税や住民税の節税効果を得られます。
しかし個人の場合は所得税が累進課税であるため不動産投資の規模を拡大するにつれて税金も多くなるのがデメリットです。法人税の税率は一律で23.2% であるため、個人の所得税率が23%を超える状態(課税所得が900万円以上)になった場合は法人化の検討をおすすめします。
法人で不動産投資を行うメリット・デメリット
法人で不動産投資を行うメリットは2つあります。
- 経費として認められる範囲が広い
- 税率が一律
法人を設立すると個人で投資するよりも経費として認められる範囲が広くなるため節税効果が高まります。
経費として認められる費用は以下の通りです。
- 自宅を役員社宅にする
- 退職金を経費にする
- 生命保険の保険料を経費にする
法人化する場合は経費計上のコントロールがしやすく現在の支出のなかで何を経費にできるかを考えやすいです。また法人はどれだけ利益を出したとしても税率が一律であるため、規模の大きな投資をする場合は個人で行うよりも税金を安くおさえられます。
一方で、法人は個人よりも手間やコストがかかる点がデメリットです。法人を設立するための書類作成や登記、印鑑登録が必要であるうえ、法人は赤字であっても毎年住民税が課されます。また、専門知識が必要な法人決算なども必要になるため税理士に依頼する費用も考えなければなりません。
まとめ
不動産投資は継続的で安定的な収入や節税効果が期待できるうえ生命保険代わりやインフレ対策にもなるバランスに優れた投資です。「月々のキャッシュフローを改善したい」「老後の生活に備えたい」といった目的を持っている方に適した投資先と言えます。
また、本業などで忙しい方でも管理会社に管理を委託することで、手間をかけずに投資できます。一方で、空室リスクや家賃下落リスクなどもあるため、長期的な資金計画が欠かせません。個別具体的な資金計画を立てるためにも、専門家に相談するのがおすすめです。
本記事で解説した内容から「自分に不動産投資が向いている」と感じた方は実際に物件探しやローンの相談を始めてみましょう。
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