不動産投資における消費税還付の仕組みは?受けられるケースや注意点を解説
目次
不動産投資における消費税還付とは「事業者が支払った消費税額」が「受け取った消費税額」よりも多かった際に還付金を受け取れる制度です。
消費税を必要以上に支払ってしまった際に受けられる消費税還付ですが、受けるためには一定の要件を満たす必要があります。そして、一定の要件は令和2年の税制改正によって厳格化されたため、不動産投資で消費税還付を受けるのは非常に難しいのが現状です。
しかし、完全に消費税還付を受けられなくなったわけではありません。そこで本記事では不動産投資で消費税還付を受ける方法や注意点を解説します。
不動産投資での正確な収支計画を立てたいと考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
不動産投資と消費税還付の関係性
不動産投資を始めようとしている方は、正確なキャッシュフローを構築するためにも「不動産投資」と「消費税還付」の関係性をしっかりと把握する必要があります。
不動産投資と消費税還付の関係性について、次の項目から詳しく紹介していきます。
不動産投資と消費税
不動産投資を開始時に賃貸物件を購入する際は以下の費用がかかります。
- 不動産取得費(建物代 + 土地代)
- 仲介手数料
- 登記費用
- 不動産取得税
- 印紙税
- 借入金の利息
上記の費用のうち不動産取得税と印紙税、借入金の利息以外はすべて消費税がかかります。
- 不動産取得費:土地は非課税、建物は課税(事業者から購入する場合のみ)
- 仲介手数料:仲介手数料の上限 = 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
- 登記費用:司法書士報酬に消費税が課税
たとえば物件価格5,000万円、土地価格3,000万円の不動産を購入した場合、消費税は物件のみにかかるため500万円です。(消費税率10%の場合)
不動産投資を始める際はさまざまな費用に税金が発生するとおさえておきましょう。
不動産投資と消費税還付
消費税還付とは事業者が「支払った消費税額」が「受け取った消費税額」よりも多かった際に還付される制度です。つまり、消費税の還付を受けるには「課税売上」が必要になります。
居住物件の場合、入居者が支払う賃料は「消費」という概念にそぐわないため、非課税となり、家賃収入だけでは課税売上が発生しません。同様に管理費や共益費、敷金、礼金なども非課税扱いです。
たとえば建物代金5,500万円(税込み)の居住用賃貸物件を購入する場合、オーナーは500万円の消費税を支払っています。しかし、受け取る家賃は非課税であるため、支払った500万円の消費税は還付されません。
購入する物件によっては消費税還付が受けられない可能性があるとおさえておきましょう。
不動産投資は消費税還付の対象外であることがほとんど
不動産投資は以下の理由から消費税還付の対象外であることがほとんどです。
- 居住用物件の賃料収入は非課税
- 消費税還付を受けられるのは原則として課税事業者
先述の通り、主な不動産投資の投資先として選ばれる居住用物件に投資する場合、賃料収入は非課税扱いとなります。また、消費税還付を受けられるのは原則として課税事業者ですが、不動産オーナーの多くは免税事業者であるため消費税還付の対象外となります。
以前は居住用物件の家賃は課税対象であり不動産オーナーは課税事業者扱いでした。しかしながら、平成3年の税制改正により家賃が非課税になったほか、オーナーは免税事業者になったため、不動産投資で消費税還付を受けるのは困難となりました。
過去には消費税還付を受けられたが、現在は受けられなくなったもの
平成3年の税制改正によって不動産投資で消費税還付を受けるのが困難になりましたが、以降でも消費税還付を受ける方法はいくつか存在していました。
- 自動販売機運用
- 金地金運用
上記の2つは既に規制されていますが、歴史を理解することで税金関係の理解が深まるでしょう。
自動販売機運用
以前までは敷地内に自動販売機を設置し、運用すると消費税還付が受けられました。自動販売機運用で消費税還付を受ける流れは以下の通りです。
- 届出を提出して課税事業者になる
- 物件完成前もしくは物件購入後に物件の敷地内に自動販売機を設置する
- 初年度は物件を賃貸に出さない
- 初年度は課税売上高の割合が100%になる(自動販売機の売上のみ)
- 消費税額が還付される
課税事業者になるには、前々年度の課税売上高が1,000万円を超えていることが条件です。しかし、不動産投資を始めた時点では課税事業者になるための条件を満たせないため、別途手続きをして課税事業者になる必要があります。
初年度は物件を賃貸に出さないのは課税売上高の割合を100%にするためです。課税売上割合が95%以上になると支払った消費税額の全額控除が適用されます。
一方で、不動産の購入後3年間の通算で課税売上の割合が50%以上減少した場合は、還付を受けた消費税を返納するといったルールがあるため、免税事業者になれば返納の必要がありませんでした。
平成22年の税制改正が起きてからは「課税事業者になったのち100万円以上の不動産を購入した場合は、購入から3年間免税事業者に戻れなくなる」というルールが追加され、自動販売機運用による消費税還付はできなくなりました。
金地金運用
金地金運用とは、金地金の売買を繰り返して課税売上を発生させる消費税還付を受ける方法です。現在は違法とされているため行えません。
自動販売機運用は課税売上の割合が50%以上減少することが問題でしたが、金地金運用であれば課税売上の割合が減少する問題を回避できます。
高額な金地金を繰り返し売買することで多くの課税売上が発生するため、結果として課税売上の割合が上がり消費税を返納するリスクはなくなります。
金地金運用で消費税の還付を受けている事業者は数多くおり、平成22年に規制をされた際では不動産投資家は法の穴をついて対応していました。しかしながら、最終的に令和2年の税制改正で居住用不動産に関する消費税還付が完全に禁止されました。
不動産投資において消費税の対象となるもの・ならないもの
令和2年に居住用不動産に関する消費税還付は完全に禁止されましたが、不動産投資において消費税還付制度がなくなった訳ではありません。
一定の要件を満たすと消費税の還付を受けられるため、まずは消費税の課税対象となるものと課税対象外になるものをおさえておきましょう。
消費税の課税対象となるもの
不動産投資において課税対象となるものは以下の通りです。
- 店舗や事務所の家賃
- 入居者から徴収している水道光熱費
- 駐車場費用(駐車場として整備されている場合のみ)
- 退去時の原状回復費用(修繕費用)
家賃のなかで消費税がかからないのは「居住用」賃貸物件のみです。事業として貸している店舗や事務所の家賃は課税対象となるため違いに注意しましょう。
水道光熱費も入居者から徴収する場合はサービスとみなされるため課税対象となります。しかし、水道光熱費は入居者が電力会社やガス会社に直接支払うケースも多いため、一度オーナーが受け取るかどうかは費用対効果を考えたうえで判断しましょう。
また、駐車場として整備されている場所を貸す場合は「土地」ではなく「施設」として判断されるため課税対象となります。賃貸物件の退去時の原状回復費用も課税対象です。
他にも、本来は原状回復は借主が行うものですが、オーナーが代わりに行うことで「サービス」に該当されて課税対象となります。
消費税の課税対象外となるもの
不動産投資において課税対象外となるものは以下の通りです。
- 居住用賃貸物件の家賃
- 社宅の家賃
- 共益費として徴収していた水道光熱費
先述の通り「居住用」賃貸物件の家賃は課税対象外となります。同じ理由から社宅の家賃も課税対象外です。なぜなら、法人に貸している場合であっても目的が「居住用」であるためです。
また、入居者から徴収している水道光熱費は課税対象ですが「共益費」という名目で一定額を徴収している場合は家賃とみなされ課税対象外になるため注意しましょう。
不動産投資で消費税の還付を受ける条件
不動産投資で消費税の還付を受けるには以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 事業用物件であること
- 課税事業者であること
2つの条件について次の項目から詳しく解説します。
事業用物件であること
令和2年の税制改正で居住賃貸物件の消費税還付は禁止されましたが、店舗や事務所といった事業用物件であれば課税売上が発生するため消費税の還付を受けられます。
居住用賃貸物件を事業用として賃貸あるいは売却する場合、建物を取得してから3年以内にのみ還付を受けられます。還付を受ける際には全体の賃料収入のなかで、事業用の賃料収入がいくらあったかを踏まえて計算しなければいけません。
加算調整額 = 居住用賃貸建物にかかった消費税額 × 課税賃貸割合
たとえば、1年目、2年目に居住用として貸していた時期の家賃収入が360万円、3年目に事業用として貸していた時期の家賃収入が240万円としましょう。
上記のケースの課税賃貸割合は以下の通りです。
課税賃貸割合 = 事業用家賃収入240万円 ÷(居住用家賃収入360万円 + 事業用家賃収入240万円)= 40%
物件取得に500万円の消費税がかかった場合は「500万円 × 40% = 200万円」が、加算調整されます。
課税事業者であること
消費税の還付を受けるには課税事業者であることが条件です。事業用賃貸物件を所有して賃料収入を得るだけでは消費税の還付を受けられないため注意しましょう。
課税事業者になるには以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 前々年(法人であれば2期前)の課税売上高が1,000万円を超える
- 消費税課税事業者選択届出書を提出する
- 資本金1,000万円以上で法人を設立する
- 個人事業主の前年上半期の課税売上高が1,000万円を超える
- 法人の前年度の期首から6ヶ月間の課税売上高が1,000万円を超える
不動産投資で消費税の還付を受けるには、課税事業者になり事業用物件を購入して賃貸に出す必要があると覚えておきましょう。
消費税還付を当てにせず賃貸経営で利益を出すようにしよう
不動産投資で消費税の還付を受けるには、課税事業者になり事業用物件を購入して賃貸に出す必要があります。
決して簡単ではないため、消費税の還付だけを目的に不動産投資を行うのはおすすめできません。
不動産投資の基本は賃料収入でキャッシュフローを回すことです。想定通りの賃料収入を得るためにも、購入を検討する際には入念に収支計画を立てましょう。
自分で正確な収支計画を立てる自信がない方は、不動産投資セミナーや個別相談会に参加して不動産経営の能力を高めるのもおすすめです。不動産投資で正確な判断ができるようになるためにも正しい知識を身につけましょう。
まとめ
以前は居住用物件の不動産投資であっても消費税の還付を受けられましたが、法律の抜け穴をつくような手法で消費税の還付を受けるケースが散見され、規制が強化されました。
現在では事業用の不動産かつ、課税事業者でなければ消費税の還付は受けられません。
しかし、不動産と消費税の関係を理解しておくことで正確なキャッシュフローの構築ができ、将来的に事業規模を拡大する際などに役立つでしょう。
不動産は税金の仕組みを押さえることで有利な投資ができます。自分一人だけでは情報収集に限界があるため、不動産のプロのアドバイスを取り入れながら投資を行うのがおすすめです。
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