相続したアパートを売却するなら要確認!売らないと損をするケースも解説
目次
親からアパートを相続した方、または今後相続する予定がある方の中には、「相続はした(する)けれども経営するつもりはない」「売却したいけど良い方法が分からない」という方もいるでしょう。
そこでこの記事では、相続したアパートを売却する方法や、売却にかかる費用を紹介します。売却する際の注意点や売却すべき理由、高く売るためのポイントなども併せて解説するため、アパートの管理にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
相続したアパートの売却を検討している際はここを確認!
アパートを相続した場合、「自分では管理できない」と考え、売却を選ぶ方も少なくありません。ここでは、アパートを売却したいと考えている方が確認しておきたい、以下のポイントについて詳しく解説します。
- 売却するタイミングは適切か?
- 共有名義にして後悔しないか?
- 入居者はいるか?立ち退きの必要はあるか?
- 譲渡所得税の特例や特別控除を受けられるか?
売却するタイミングは適切か?
まずは、不動産価格の動向をチェックしましょう。国土交通省が不動産の取引価格情報をもとにして作成した「不動産価格指数」を見れば、不動産価格がどのように変動しているかを確認できます。
また、相続したアパートの築年数や税金面なども考慮したいポイントです。アパートに限らず、不動産は築年数が経つにつれて、市場価値が下がっていきます。相続したアパートの市場価値が下がると判断した場合は、早めに売却するのも方法のひとつです。需要のあるうちに手放すことで高く売却できる可能性が高まります。
税金面においては、不動産の保有期間や相続してから売却するまでの期間によって、譲渡所得税額が変わるため、その点にも注意が必要です。詳細は後述の「アパートを売却する際にかかる費用を把握」の項目で解説します。
共有名義にして後悔しないか?
これから相続をする予定の方の中には、アパートの経営や管理をひとりで担うことに不安を感じ、共有名義にする方もいるでしょう。しかし、兄弟などの親しい間柄であっても、アパートを共有名義にすることでトラブルに発展するケースも少なくありません。
共有名義で保有している不動産は、売却などの手続きの際に名義人全員の許可が必要となるため、手続きがスムーズに進行できない可能性があります。共有名義のうちの誰かがアパートの売却に反対すれば、売却をすることは困難になります。
また、共有名義を解消する場合は、名義を解消した方から単独名義になる方への贈与と見なされ、贈与税が発生します。アパートをどのように管理していくのが適切か、相続人同士でしっかりと話し合い名義人を決めましょう。
入居者はいるか?立ち退きの必要はあるか?
第三者に貸し出ししている賃貸物件を相続し、アパートを取り壊して建て直す場合や不動産を別の用途に使用する場合は、立ち退きをしてもらうことになるでしょう。
入居者の立ち退きが必要であれば、できるだけ早く通告をするのが得策です。時期が迫って無理に立ち退かせようとすると、トラブルに発展する可能性があります。最低でも売却予定日の半年前に通知しなければなりません。
譲渡所得税の特例や特別控除を受けられるか?
特例制度や特別控除を利用すれば、譲渡所得税の負担をおさえられます。自身のケースに適用される制度があるか、一度確認してみましょう。主な特例制度・特別控除は以下の通りです。
【特例制度】
・取得費の特例(相続の際に納めた税金の一部を譲渡所得税から控除する制度)
【特別控除】
・公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
・平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例
・マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
・被相続人の居住用財産(空き家)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
・低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例 など
控除額が大きいものもあり、節税効果を期待できます。ただし、適用条件に合致する場合でなければ利用できません。詳しい条件は国税庁のホームページからご確認ください。
(参考: 『国税庁 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例』)
(参考: 『国税庁 譲渡所得の特別控除の種類』)
損をする可能性大?相続したアパートを売却したほうがよいケース
相続したアパートをそのまま維持させるか、売却するか悩む場合は、そのアパートが売却に適しているかどうかを確認しましょう。売却をしたほうがよいのは、以下のような場合です。
- アパート経営の知識や経験がない
- アパート経営に時間をかけられない
- リフォームや修繕に多額の費用がかかる
- 資産価値を維持しにくい状況にある
- 毎月の収支がマイナスになっている
ここでは、それぞれのケースについて詳しく解説します。「自分で決められない」「判断が難しい」と感じている方は参考にしてみてください。
アパート経営の知識や経験がない
知識が乏しい状態でアパート経営を始めるのはおすすめしません。アパート経営はミドルリスク・ミドルリターンの投資ではありますが、投資である限りリスクも含みます。例えば、次のようなリスクです。
- 修繕費やリフォーム費用がかかる
- 空室が埋まらなくなり収益が下がる
- 管理不足などの要因により不動産価値が下がる
管理会社や不動産会社のサポートを受けつつ経営をすることも可能ですが、所有者が自ら行動・判断しなければならないことも多々あります。アパート経営への取り組みを検討したことがない場合、安定的にアパートを経営することは、簡単ではありません。
反対に、アパート経営の知識や経験があり、アパートの状態や立地、リスクなどを考慮して判断できる場合は、経営を続けても問題ないでしょう。
アパート経営に時間をかけられない
アパート経営に必要な業務の多くは、外部に委託することで負担を減らすことが可能です。しかし、管理を委託した不動産会社からの定期連絡や報告には対応する必要があり、ある程度の手間はかかってしまいます。
管理業務を委託せずに自身で経営することになれば、大きな負担となるケースもあるでしょう。そのため、本業が忙しい方は注意が必要です。
リフォームや修繕に多額の費用がかかる
築年数の古いアパートは、経年劣化を起こしやすいため注意が必要です。アパートを安定的に経営するにあたって、維持費の負担が大きくなる恐れがあります。
建物の築年数や修繕状況によっては入居者を確保するためにリフォームを行う必要があり、予想以上に大きな出費になることも少なくありません。
アパートを相続した場合のキャッシュフローを計算し、収支が見合わないと感じたときは売却を検討しましょう。
資産価値を維持しにくい状況にある
建物の状況や立地条件が悪いと、「収益が見込めない」、あるいは「資産価値の上昇が見込めない」こともあります。資産価値が下がりやすいのは、以下のような条件に合致するケースです。
- 不動産のある地域の人口が減少している
- 不動産周辺に空き家が増加している
- 三大都市圏ではない地域にある など
将来的に資産価値が低下する可能性が高いときは、早めに手放すことで損失を小さくおさえられます。
一方、空室リスクが少なく収益性が高い物件であれば、継続して経営するのが得策です。収益性が高い物件には以下のような特徴があります。
- 利便性がよく立地条件が優れている
- 三大都市圏にあり、人口増加が見込める
- 修繕や維持にお金がかからない など
相続したアパートがどちらの条件に当てはまるか確認しながら、適切な管理方法を選択しましょう。
毎月の収支がマイナスになっている
ローンが残っているときは、アパートを相続する際に返済義務も受け継がなければなりません。ローンの返済額や空室が多い等で物件の収支がマイナスの場合、出ていくお金が増えることで家計が苦しくなる可能性があります。
アパートを売却する方法
相続したアパートを売却することに決めたら、どのような方法で売却するかも決めましょう。不動産の売却方法には、「仲介」「不動産会社による買取」「個人売買」「任意売却」の4つのパターンがあります。売却方法の詳しい解説を見ながら、自身の希望や状況に合った手続き方法を選びましょう。
仲介
仲介は、不動産会社に取り持ってもらいながら、アパートの買主を探す方法です。不動産の売却方法の中では最も一般的です。仲介でアパートを売却する際の主なメリット・デメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
・自分で買主を探す時間と手間を省ける ・手続きに不備が発生するリスクをおさえられる ・市場価値に見合った価格で売却できる | ・仲介者を探す手間が発生する ・仲介手数料がかかる |
仲介によって売却するメリットは、買主を探すための時間や手間を省けることです。また、不動産会社は売却に関わる手続きまで代行してくれるケースが多く、不備が発生するリスクを軽減できます。ただし、仲介手数料はかかります。
不動産会社による買取
不動産会社に買取を依頼するのも方法のひとつです。不動産会社が買主となり、直接アパートを購入します。
メリット | デメリット |
・買主を探す時間を削減できる ・仲介手数料がかからない ・手続きの手間が減る | ・販売価格が仲介よりも安くなる傾向がある ・買取先の不動産会社を探すための手間が発生する |
買主を探す必要がないため、スピーディーに売却できるのが主なメリットです。また、仲介手数料も発生しません。ただし、不動産会社は買取後にリフォーム等を行い、付加価値を高めた上で販売価格を決めます。相応の予算がかかることから、個人売買や仲介よりも売却価格が下がることもあります。
個人売買
個人売買は、自分で買主を探して売却まで進める方法です。個人売買は合法化されているため、正確に手続きを進められるのであれば個人間で不動産を売買しても問題ありません。
メリット | デメリット |
・仲介手数料がかからない ・販売価格を比較的自由に決められる ・スムーズに話を進められるケースも | ・トラブルに発展する恐れがある ・買主を探す手間が発生する ・不動産売買に関する知識や経験が必要 |
自分の希望で自由に販売価格を決定できるのはうれしいポイントです。話がうまく進めば、相場よりも高く売れる可能性があります。
ただし、自分で全ての手続きを進めなければなりません。また、万が一買主とトラブルに発展したとしても、誰にも助けを求められません。個人売買にはこのような注意点も多いため、不動産の知識がありすでに買い手が決まっている方に適した売却方法といえます。
任意売却
任意売却は、相続したアパートにローンが残っており、ローンの返済を滞納した場合に適用される売却方法です。債権者と債務者、双方の同意のもとで売却を進めます。
メリット | デメリット |
・ローン残高のあるアパートでも売却できる ・「仲介」による通常ケースの売却価格と同じくらいの金額で売却できる | ・トラブルが発生する恐れがある ・信用情報センターに金融事故の情報が登録される ・仲介手数料がかかる |
通常、ローンを滞納した不動産は競売にかけられ、市場価値よりも安く売られるケースがほとんどです。しかし、任意売却を選べば「仲介」による売却価格と同じくらいの金額で売れる可能性があります。
アパートを売却する際にかかる費用を把握
アパートの売却時には、費用や税金がかかります。ここでは、アパートの売却にかかる費用の種類と目安金額を紹介します。どの費用の出費が多いのか分析しながら、出費を減らすための対策を立てましょう。
税金
アパートの売却によって得た利益に課される税金は譲渡所得税です。譲渡収入金額から取得費用と譲渡費用を差し引いた金額が譲渡所得と見なされます。
アパートを売却した年の1月1日時点で保有期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」、5年を超えていれば「長期譲渡所得」です。
譲渡所得税の税率
・短期譲渡所得:39.63%(所得税30.63%、住民税9%)
・長期譲渡所得:20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
※2037年までは復興特別所得税が課される
また、相続した不動産の場合は、3年以内に譲渡することで、課税された相続税を取得費に加算できる特例が利用できます。取得費が増えることで譲渡所得が減るため、収めるべき譲渡所得税を減らすことができます。
・適用要件
1.相続や遺贈により財産を取得した者であること
2.その財産を取得した人に相続税が課税されていること
3.その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
・計算方法
譲渡した人の相続税額×譲渡資産の相続税の課税価格÷取得した相続財産の課税価格= 取得費に加算する相続税額
(参考: 『国税庁 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例』)
また、収入印紙税も発生します。収入印紙税は、売買契約書など経済的な取引に伴って作成した書類にかかる税金です。不動産の売却時は、収入印紙を購入し、契約書に添付して提出する必要があります。収入印紙税の金額は以下の通りです。
【不動産売買契約書にかかる印紙税額】
記載された契約金額 | 税額 | 軽減措置 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 | - |
(参考: 『国税庁 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで』)
仲介手数料
不動産会社にアパート売却の仲介を依頼するときは、仲介手数料がかかります。仲介手数料は宅地建物取引業法により上限が定められており、不動産会社は上限額を超える仲介手数料の請求を行ってはいけません。
【仲介手数料の速算式】
売買価格 | 仲介手数料の上限額 |
200万円以下 | 売却価格×5%(+消費税) |
200万円超400万円以下 | 売却価格×4%+2万円(+消費税) |
400万円超 | 売却価格×3%+6万円(+消費税) |
上記の速算式の通り、不動産の売却価格に応じて仲介手数料が変わります。例えば、売却価格が1,000万円だったとしましょう。この場合、1,000万円×3%+6万円(+消費税10%)=39万6,000円が仲介手数料の上限額となります。
その他諸費用
税金や仲介手数料以外にも、登記費用やローンの一括返済手数料、抵当権抹消費用などの支払いが必要です。
【費用目安】
・登記費用(登録免許税): 1,000円〜3,000円程度
・ローンの一括返済手数料:1〜3万円程度
・抵当権抹消費用: 1〜3万円程度(司法書士への依頼料/司法書士による)
ローンの一括返済にかかる手数料は金融機関によって異なります。費用をおさえたいときは、借入先の金融機関であらかじめ手数料を確認した上で返済方法を決めましょう。
相続したアパートをなるべく高く売却するには
アパートの売却時は、できるだけ手元に入る資金を増やしたいものです。出費をおさえるだけでなく「修繕する」「入居率を高める」といった方法で不動産の価値を高めることで、売却価格の上昇が見込めます。また、信頼できる不動産会社を探すのもひとつの手です。ここでは、高くアパートを売却するためのポイントを3つ紹介します。
修繕して物件の価値を高める
買主にとって気になるのは老朽化に伴う修繕リスクです。アパートを購入したものの、近々修繕費がかかることが目に見えていれば、買主から値下げ交渉が入るかもしれません。
そのため、できるだけ修繕の必要がない状態にしておくことが大切です。きれいな物件であれば購入希望者も増え、アパートとしての価値が高まり売却しやすくなります。
入居率を高めて収益性を改善する
空室や滞納が少ない状態を維持することも、高く売るために欠かせないポイントです。空室リスクや入居者信用リスクが高いと、購入希望者がその後の経営を不安視して購入を渋る可能性があります。
ただし、入居率を高めるために、安易に家賃を下げるのは避けましょう。家賃収入が下がると利回りも下がるため、投資物件としての価値が低下します。入居率を高めることに難しさを感じたら、管理会社や不動産会社に相談するのが得策です。アパート管理に関する的確なアドバイスをもらえるでしょう。
信頼できる不動産会社に相談する
アパートの売却を検討する際は、信頼できる不動産会社を見つけましょう。実績が豊富な不動産会社であれば、これまでに培ってきた知識やノウハウを生かして、高く売るために何をすべきかを迅速に判断できます。
また、実績豊富な不動産会社は、収益物件の購入を希望している顧客を保有している可能性が高いです。売却までスムーズに進められるでしょう。ホームページをチェックしながら、不動産会社の販売・契約実績を比較してみてください。
まとめ
アパートを売却する際は、「仲介会社に依頼する」「買取してもらう」「個人売買する」「任意売却する」といった方法があります。ただし、知識が乏しい状態で売却すると、思うように売却益を確保できない可能性もあるため注意が必要です。
アパートを高く売るためにも、信頼できる不動産会社に相談しましょう。実績が豊富な不動産会社から的確なアドバイスをもらうことで、高値で売却できる可能性が上がります。また、高く売るためのポイントやアパートの売却方法を紹介した今回の記事も、ぜひ参考にしてみてください。