S造とは?RC造・W造・SRC造との違いや構造別の特徴を解説

目次
不動産投資を始める際には、物件の構造が投資の成果に大きく影響します。S造(鉄骨造)、W造(木造)、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)にはそれぞれ異なる特徴があり、資産価値や維持費、耐震性、耐火性など、運用上のメリット・デメリットもさまざまです。
本記事では、各構造の特徴や選び方のポイントを解説し、投資目的に応じた物件選びに役立つ情報をお届けします。
建物の構造は主に4種類(S・W・RC・SRC)
-1024x683.jpg)
建物の構造とは建物の骨組みに使用されている材料のことで、一般的に鉄骨や木材、コンクリートなど、4つの種類があります。それぞれが異なる特性を持ち、用途や建物の規模に合わせて選ばれています。
- S造(鉄骨造)
- W造(木造)
- RC造(鉄筋コンクリート造)
- SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
それぞれの特徴を解説します。
S造(鉄骨造)
建物の骨組みに鉄骨(Steel)を使用する工法を「S造」や「鉄骨造」と呼びます。鉄骨の厚さによって2種類に分かれ、6mm未満のものを「軽量鉄骨構造」、6mm以上のものを「重量鉄骨構造」と区分します。
S造住宅の法定耐用年数は骨格材の厚さによって異なり、厚さが3mm以下のものは19年、3mmを超えて4mm以下のものは27年、4mmを超えるものは34年と定められています。
軽量鉄骨
軽量鉄骨構造では、一般的に柱・梁・ブレース(筋交い)を組み合わせた「鉄骨軸組工法(ブレース工法)」が用いられます。この工法により、軽量でありながら安定した骨組みを形成し、主に住宅や小規模な建物に適しています。
重量鉄骨
重量鉄骨構造では、柱や梁の接合部を溶接などで接合し一体化させる「鉄骨ラーメン構造」が多く採用されます。この構造は強固で耐震性が高く、大規模な建物や高層建築にも対応できるため、オフィスビルや商業施設などで広く使用されています。
W造(木造)
W造(木造)は、主要構造部に木材を使用した建築工法です。柱や梁などの軸組部材を木材で構成し、それらを金物や継手・仕口で接合して建物の骨組みを形成します。日本の住宅建築において最も一般的な構造で、戸建て住宅では全体の約9割を占めています。
W造は伝統的な在来工法をはじめ、ツーバイフォー工法やプレカット工法など、さまざまな建築工法があります。近年は技術革新により、高層木造建築も可能になってきており、木造建築の可能性は広がりつつあります。特に国産材の活用や環境配慮の観点から、公共建築物でも木造が見直されています。
なお、W造住宅の法定耐用年数は22年と定められています。
RC造(鉄筋コンクリート造
RC造(鉄筋コンクリート造)は、コンクリートと鉄筋を組み合わせた建築構造です。コンクリートは圧縮力に強く、鉄筋は引張力に強いという両者の特性を生かし、高い強度と耐久性を実現します。主にマンションや学校、オフィスビルなど、中高層建築物に採用されています。
建築工程では、鉄筋を組み立てた後に型枠を設置し、そこにコンクリートを流し込んで固める工法が一般的です。施工には専門的な技術と品質管理が必要となります。地震に対する耐震性能が高く、また防火性能にも優れているため、都市部の建築物として広く普及しています。近年は高強度コンクリートの開発により、さらなる可能性が広がっています。
法定耐用年数は、住宅・アパートの場合47年と定められており、木造と比べて長期の使用が想定されています。
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)は、RC造の構造にさらに鉄骨を組み込んだ複合構造です。鉄骨、鉄筋、コンクリートの3つの材料を組み合わせることで、極めて高い強度と耐震性を実現します。主に超高層ビルや大規模商業施設、ホテルなど、大きな空間や高層化が求められる建築物に採用されています。
施工では、まず鉄骨を組み立て、その周りに鉄筋を配置し、最後にコンクリートを打設します。3つの材料を最適に組み合わせることで、RC造よりも柱や梁を細くすることができ、より広い空間を確保することが可能です。特に下層階での大空間の確保や、地震時の変形を抑制する性能に優れているため、都市部の重要建築物に多く採用されています。
法定耐用年数は、住宅・アパートの場合47年とRC造と同様に定められています。
■構造別の法定耐用年数まとめ
構造 | 法定耐用年数 | 備考 |
S造 | 19年 | 厚さ3mm以下 |
27年 | 厚さ3mm~4mm以下 | |
34年 | 厚さ4mm以上 | |
W造 | 22年 | 住宅用 |
RC造 | 47年 | 住宅用 |
SRC造 | 47年 | 住宅用 |
建物の構造別のメリット・デメリット

それぞれの構造には、建築コスト、耐久性、メンテナンス性、居住環境などに違いがあります。ここでは、木造(W造)、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)それぞれの特徴を理解しましょう。
S造のメリット
S造の良い点は、経済性と設計の自由度を両立させた、優れた造りであることです。
大量生産可能な規格化された部材を使用し、現場での組立作業が主体となるため、工期を大幅に短縮できます。建設期間の短縮は人件費の削減につながり、結果として総建築コストの低減を実現します。
また構造的なメリットも豊富です。軽量でありながら優れた強度と靭性を持ち合わせているため、細い柱や梁で建物を支えることができます。その結果、室内空間を効率的に活用でき、多様なプランニングが可能となります。さらに、建物全体の軽量化により、高層建築や大規模な建造物の建設にも適しています。軽量化により基礎工事の負担が軽減されるため、軟弱地盤や特殊な地盤条件の場合でも、適切な基礎工法を選択しやすくなります。
S造のデメリット
まず、鉄は熱に弱いため耐火性能に不安があり、さらに腐食しやすい性質もあるため、特に海沿いなどの潮風が強い場所で使用する際は注意が必要です。こうした弱点には、耐火材や防錆塗装を施すことで対応可能ですが、その分コストが増える点は避けられません。
構造的には、S造は柔軟性が高い反面、地震や強風で揺れやすい性質を持っており、RC造やSRC造と比べると耐震性能は劣ります。ただし近年では、免震構造を取り入れることでこの課題を解決する事例も増えています。
居住面では、遮音性や断熱性が従来の課題とされてきましたが、高性能な間仕切り材や断熱材を採用することで、これらの問題は大幅に改善できます。とはいえ、RC造と同等の性能を得るにはさらなる対策や投資が必要でしょう。
W造のメリット
日本の建築文化に根ざした工法であり、コストパフォーマンスの高さと環境への調和が特徴です。
経済面では、木材を主材料とし、工期が短く済むため、建築コストが抑えられる点がメリットです。これにより、賃貸物件のオーナーは競争力のある賃料設定がしやすくなります。
また、建物が軽量であるため、地盤条件が厳しい狭小地や変形地でも柔軟に建築できます。木材には調湿効果があるため、日本の高温多湿な気候にも自然に適応します。例えば、冬は木材から水分が放出され、梅雨時には湿気を吸収することで、室内環境を整え、快適な居住空間を実現します。
従来のW造には、遮音性や耐震・耐火性に課題がありましたが、2×4工法の採用により、これらの性能が大幅に向上しました。特に耐震・耐火性については、鉄骨造を超える性能を実現しています。
W造のデメリット
W造の課題として、まず気密性の低さが挙げられます。気密性が低いことで空調効率が下がり、光熱費が増加する可能性があります。また、シロアリなどの害虫対策も欠かせません。定期的な点検や薬剤処理など、計画的なメンテナンスが必要です。
さらに、法定耐用年数は22年とRC造やSRC造の47年に比べて短く、資産価値の面で長期的には劣る点も考慮すべきでしょう。ただし、短い耐用年数によって減価償却費を多く計上できるため、不動産投資においては節税効果が期待できるという側面もあります。
RC造のメリット
RC造は気密性が高く、外部や隣室の音を遮る遮音性に優れており、騒音を気にせず快適に過ごしやすい構造です。この高い気密性によって冷暖房の効率も向上し、省エネルギーにもつながります。
引っ張りに強い鉄筋と圧縮に強いコンクリートの特性や継ぎ目のない一体構造によって高い耐震性を確保できます。また、不燃性のコンクリートを使用し、高い気密性により延焼も回避できることから火災にも強い構造といえます。さらに、コンクリートはさまざまな形状に加工しやすく、自由なデザインが可能です。
加えて、法定耐用年数が長いことから、建物としての資産価値を保ちやすいのもメリットです。
RC造のデメリット
コンクリート打設という工程が加わることで、工期が長くなり初期費用は他の工法より高くなります。ただし、鉄とコンクリートの組み合わせは優れた耐久性を発揮し、長期使用による償却を考慮すれば、実質的なコストパフォーマンスは高いともいえるでしょう。
また、気密性が高く、遮音性や省エネ効果が期待できる一方で、適切な換気管理を怠ると結露やカビの原因となることがあります。
さらに、RC造の建物は重量が大きいため、地盤条件への配慮が重要です。軟弱地盤の場合は、地盤改良工事が必要となり、追加コストが発生する可能性があることも検討すべきポイントです。
SRC造のメリット
SRC造は、RC造の耐久性とS造のしなやかさや靭性を組み合わせた、高性能な構造形式です。優れた耐震・耐火性能を実現し、低層から超高層建築まで幅広く対応できる点が特徴です。ただし、高層建築では建物重量をおさえるため、上層階でコンクリートを省略するハイブリッド構造が用いられることもあり、その際には階層ごとの耐震・耐火性能に注意が必要です。
SRC造の設計上の利点は、柱の数を減らし断面を最適化することで、開放的で効率的な空間を設計できる自由度にあります。これにより、広々としたレイアウトが可能になり、設計の幅が広がります。
また、資産価値の面でも、RC造と同じく法定耐用年数が長く、建物の資産価値を維持しやすいことが魅力です。
SRC造のデメリット
鉄骨とコンクリートを組み合わせた複合構造であるため、施工が複雑で工期が長くなりやすい点が課題です。また、建材が多く必要になり、地盤補強も求められることから、他の工法と比べて建設コストが大幅に高くなる傾向があります。
近年の技術革新によって、RC構造でも高い耐震性と強度が実現できるようになり、多くの場面でSRC構造の優位性が薄れてきています。これに伴い、建築業界でのSRC構造の採用率は年々減少していると報告されています。
さらに、SRC構造はRC構造と同様に高い気密性を持つため、換気システムが不十分だと、結露やカビが発生するリスクがあります。建物の維持管理においては、適切な換気対策を行い、室内環境を良好に保つことが不可欠です。
不動産投資をするならどの構造がおすすめ?

不動産投資におすすめの構造は、投資の目的や状況によって変わります。
例えば、節税対策で不動産投資を行う方には木造の中古一棟アパートがおすすめです。木造は法定耐用年数が短いため、減価償却による節税効果が大きくなります。また、土地を所有していて初期費用をおさえて収益物件を建築したい場合も、木造がよいでしょう。前述したとおり、木造は建築費用を抑えることができ、工期も短いため、他の構造の物件と比較して早く収益を得ることが可能です。
マンションはS造・RC造・SRC造が多いことから、区分投資を検討している方は、S造・RC造・SRC造になるでしょう。また、多額の自己資金があり、より大きな資産形成を目的としている方は、S造・RC造・SRC造の一棟物件を購入することで、安定収益を目指すこともできるでしょう。
節税効果 | ランニングコスト | 融資の受けやすさ | |
S造 | △ | ◯ | ◯ |
W造 | ◎ | ◎ | △ |
RC造 | × | △ | ◎ |
SRC造 | × | × | ◎ |
不動産投資の目的に合わせた構造を選ぶことで、より効果的な運用と出口戦略が可能となり、自分の投資計画に合った最適な選択が見えてくるでしょう。
まとめ

投資用不動産を選ぶ際には、利回りや入居率だけでなく、本記事のように建物の構造にも目を向けましょう。構造ごとに異なるメリット・デメリットを理解した上で、自分の投資計画に最適な物件を見極めることで、より効果的な運用が可能です。
不動産投資でお悩みの際は、豊富な取引実績を持つファミリーコーポレーションにご相談ください。構造を含めた物件選びから購入後の運用・売却まで、ワンストップでサポートいたします。
