アパート経営の節税はどこまで可能?所得税・相続税をシミュレーションで解説
アパート経営は、節税のメリットを享受しながら資産形成を進められる有効な手段です。しかし「どの程度節税できるのか」「自分の年収でも効果があるのか」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、アパート経営で節税できる主な税金と、その効果を最大化する具体的な方法を、シミュレーションを交えてわかりやすく解説します。読み終える頃には、損益通算や減価償却などの仕組みが理解でき、節税効果を得ながら長期的に安定した収益を目指す方法がわかります。
また、アパート経営を成功させるためには、節税だけでなく「収益性の高い物件選び」が欠かせません。
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目次
アパート経営で節税が可能な主な税金

アパート経営で節税が期待できる主な税金は、所得税・住民税、相続税、固定資産税・都市計画税です。
アパート経営を始める前に、それぞれの特徴を把握しましょう。
所得税と住民税
所得税は個人の所得にかかる税金で、住民税は前年の所得などに応じて都道府県や市区町村に納める税金です。
アパート経営は、経費計上や減価償却によって課税所得を抑え、所得税・住民税の負担を軽減できる可能性があります。
不動産所得は、家賃収入から経費を差し引いた「利益」に課税されます。そのため、計上する経費が多いほど、課税対象の所得は小さくなるのです。なかでも減価償却費は、実際の支出を伴わずに経費として計上できる点が特徴です。
減価償却を活用すると、手元のキャッシュフローはプラスでも帳簿上は赤字になるケースがあります。この赤字を給与所得などと損益通算すれば、所得税・住民税の軽減につながります。
具体的な仕組みは「アパート経営が所得税・住民税の節税につながる仕組み」で解説します。
相続税
相続税は、亡くなった人から財産を受け継いだ場合に、その財産の価額に応じてかかる税金です。
アパート経営は、相続税の負担軽減につながる可能性があります。現金を相続する場合と比べて、アパートなどの不動産は相続税評価額が低く算定されるためです。
その結果、同じ1億円の資産でも、現金のまま保有するよりアパートとして保有するほうが、相続税の課税対象額を抑えられる可能性があります。
具体的な評価減の仕組みやシミュレーションは、後述の「アパート経営で相続税を節税できる仕組み」で詳しくお伝えします。
固定資産税と都市計画税
固定資産税と都市計画税は、土地や建物などの不動産を所有している場合に毎年かかる税金です。
アパート経営では、所有する土地や建物に対して固定資産税が課されます。また、物件が市街化区域内にある場合は、原則として都市計画税も課税されます。どちらも不動産を保有している限り継続的に発生し、アパート経営の収支に影響を与える税金です。
アパートの敷地が住宅用地として認められる場合、固定資産税・都市計画税の負担を軽減できます。更地のまま所有する場合と、アパートを建てて賃貸住宅として活用する場合では、土地にかかる税負担が異なります。
具体的な軽減措置の仕組みは「アパート経営で固定資産税・都市計画税を軽減できる仕組み」で詳しく見ていきます。
固定資産税や都市計画税は、アパート経営を続ける限り毎年発生する税金です。住宅用地の特例によって軽減できる場合もありますが、実際の税負担は土地の面積や評価額、建物の規模、物件の所在地によって異なります。
ファミリーアセットコンサルティングでは、アパート経営を検討している方に向けて、税金対策や収支計画、物件選びに関する無料投資相談を実施しています。固定資産税・都市計画税の軽減効果だけでなく、家賃収入や空室リスク、修繕費まで含めて確認できるため、より現実的な経営判断につながります。
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アパート経営が所得税・住民税の節税につながる仕組み

アパート経営が所得税・住民税の節税につながるのは、課税所得を圧縮できる仕組みがあるためです。
所得税・住民税の節税につながる主な仕組みは、次の3つです。
経費計上ができる
アパート経営では、経営にかかった支出を必要経費として計上できます。
家賃収入から必要経費を差し引いた金額が不動産所得です。修繕費や管理委託費、借入金の利息、固定資産税などを適切に計上できれば、税負担の軽減につながる可能性があります。
また、通信費・消耗品費・交通費・接待交際費なども、アパート経営に必要な支出であれば経費として認められる場合があります。ただし、私的な支出は経費にできないため、領収書を保管し、利用目的を記録して、アパート経営との関連性を明確にしなければいけません。
減価償却費を計上できる
減価償却とは、建物などの資産の取得費を法定耐用年数に応じて分割し、毎年経費として計上する会計処理です。
減価償却費は実際に現金の支出を伴わない費用でありながら、帳簿上は経費として扱えるため、不動産所得が赤字になることがあります。そのため、手元の現金を減らさずに「会計上の赤字」を作ることができます。
不動産所得の赤字を損益通算できる
アパート経営で不動産所得が赤字になった場合、その損失は給与所得など他の所得と損益通算できます。
損益通算とは、赤字の所得を他の黒字の所得から差し引く仕組みです。アパート経営では、家賃収入から必要経費を差し引いて不動産所得を計算し、その結果が赤字になった場合に、給与所得などと通算することで課税所得を抑えられる可能性があります。
たとえば、給与所得のある会社員がアパート経営で赤字を出した場合、その損失を給与所得と相殺できれば、所得税・住民税の負担軽減につながります。
ただし、不動産所得の損失のうち、土地を取得するための借入金利子に相当する部分は損益通算の対象外です。建物の取得にかかる部分は対象になるため、節税効果を見積もる際は、借入金利子の内訳を土地分と建物分に分けて確認する必要があります。
なお、減価償却による帳簿上の赤字は節税につながりますが、空室や家賃下落による赤字は単なる収支の悪化です。アパート経営では、健全な黒字経営を前提に節税の仕組みを活用する視点が大切です。
アパート経営で所得税と住民税を節税する方法

アパート経営で所得税・住民税を抑えるには、節税につながる仕組みを順序立てて活用する必要があります。
所得税・住民税の税負担を下げるためのステップは、以下の通りです。
1.経費にできるもの・できないものを把握してもれなく計上する
アパート経営の節税は、認められる経費を正確に、もれなく計上するところから始まります。経費が正しく積み上がるほど課税所得が下がり、所得税・住民税の負担を軽減できます。
不動産所得は「家賃収入 − 経費」で計算されるため、経費をどれだけ適切に計上できるかが節税の要です。認められる経費は多岐にわたり、日々発生する管理コストから税金、修繕費、ローン利息まで幅広く存在します。
以下は、アパート経営で経費として認められる項目です。
| 【購入時】 | |
|---|---|
| 不動産取得税 | 不動産の取得に対し 課税される税金 |
| 登録免許税 | 所有権移転登記・ 抵当権設定登記 にかかる税金 |
| 印紙税 | 売買契約書・ ローン契約書などの 契約書類に課税される税金 |
| ローン保証料 | アパートローンの保証会社に 支払う保証料 |
| 損害保険料 | 火災保険・地震保険料 (初年度分) |
| 運営時(保有期間中) | |
|---|---|
| 固定資産税 | 毎年、所有者に課される税金 |
| 都市計画税 | 原則として、市街化区域内の 土地・建物に課税される税金 |
| 事業税 | 不動産賃貸業が事業的規模の 場合に課される税金 |
| 損害保険料 | 火災保険・地震保険料 (通常1〜5年ごと) |
| 修繕費 | クロス貼り替え・ 軽微な設備修繕の費用 (20万円未満の小規模修繕が目安) |
| 管理委託料 | 管理会社に支払う手数料 (家賃の約5%が一般的) |
| 広告宣伝費 | 入居者募集の広告掲載料 |
| 青色事業専従者給与 | 家族に支払う給与 |
| 水道光熱費 | 共用部の電気代・水道代・ 防犯カメラ・電気代 |
| 通信費 | 管理会社・入居者との 連絡にかかる電話代・郵送費 |
| 交通費 | 物件巡回や打合せで 発生した交通費 |
| 接待交際費 | 管理会社等との 業務に必要な飲食費 |
| 新聞図書費 | 不動産業務に必要な 専門誌・書籍の購入費 |
| 消耗品費 | 文房具・備品・ 10万円未満の購入品 |
| 解体費・立ち退き料 | 老朽化対応の解体費や 立ち退きに必要な費用 |
| 地代 | 借地物件の場合の地代 |
| 借入金利子 | アパートローンの利息部分 |
| 減価償却費 | 建物・設備を耐用年数で 費用化するための計上額 |
以下は、アパート経営の経費として認められない費用です。
| 経費にできないもの | |
|---|---|
| 個人の税金 | 所得税・住民税・法人税など |
| 20万円以上の 大規模修繕費 |
資本的支出で資産計上し、 減価償却で費用化 |
| ローン返済の元本 | 利息のみ経費扱い可 |
経費の漏れは、節税効果を損ないます。アパート経営にかかる支出を隅々まで把握し、認められる経費の正しい計上が節税の基本です。
アパートの修繕費の会計処理に関する詳細は、こちらの記事もご覧ください。
2.減価償却費を計上する
アパート経営で節税効果を高めるうえで重要なのが「減価償却」です。減価償却は現金の支出を伴わずに計上できる経費で、手元にキャッシュフローを残したまま課税所得を圧縮できる可能性があります。
建物は年月の経過とともに価値が減ると見なされ、その分を法律で定められた耐用年数に応じて毎年経費化できます。減価償却は、建物の価値の減少分を計上するための仕組みで、節税インパクトが大きい項目です。
法定耐用年数は建物の構造によって異なり、期間の長さによって1年間に計上できる金額が変わります。
構造別の法定耐用年数は以下の通りです。
| 構造 | 耐用年数 |
|---|---|
| 木造 | 22年 |
| 軽量鉄骨造 | 19年(厚み3㎜以下) 27年(厚み3㎜超4㎜以下) |
| 重量鉄骨造 | 34年 |
| 鉄筋コンクリート造 | 47年 |
(参照:国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表)
減価償却は、アパート経営における節税の核となる仕組みです。木造アパートによる賃貸経営は、短い耐用年数を活かして効率的に節税したい投資家に向いています。
中古アパートの減価償却について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
3.損益通算を活用する
アパート経営で出た赤字は、損益通算によって給与所得などと相殺できるため、所得税・住民税の負担を減らせる可能性があります。不動産所得は給与所得と同じ「総合課税」に分類され、帳簿上で赤字が出れば、そのマイナス分をほかの所得から差し引いて課税所得を下げられます。
ただし、減価償却期間が終わると帳簿上の赤字を出しにくくなるため、損益通算による節税効果も徐々に薄れていきます。そのため、節税に偏り過ぎず、収益性とのバランスが取れた物件選びが重要です。
4.青色申告特別控除を適用する
アパート経営では「青色申告特別控除」により不動産所得から最大65万円が差し引ける場合があります。
青色申告特別控除とは、一定の要件を満たして青色申告を行った場合に、不動産所得や事業所得などから一定額を控除できる制度です。
アパート経営の場合、貸付規模が事業的規模に該当するかどうかによって、適用できる控除額が変わります。一般的には、アパートやマンションで10室以上を貸し付けている場合、事業的規模と判断される目安です。
青色申告特別控除は、不動産所得に控除額が直接反映されます。
| 不動産所得 = (収入金額 − 必要経費) − 青色申告特別控除額 |
アパート経営に適用される控除額は、規模や申告方法によって次のように変わります。
| 現行制度(〜令和8年分) | |
|---|---|
| アパートの規模・申告方法 | 控除額 |
| 事業的規模に満たない貸付 | 10万円 |
| 事業的規模で貸付+複式簿記で 記帳して期限内に申告 |
55万円 |
| 55万円控除の要件を満たす +e-Taxによる申告または 優良な電子帳簿保存 |
65万円 |
なお、令和8年度の税制改正大綱では、令和9年分以後の青色申告特別控除が次のように見直される予定です。
| 改正後(令和9年分〜) | |
|---|---|
| 規模・申告方法 | 控除額 |
| 簡易簿記 (前々年の収入金額1,000万円超) |
0円 |
| 簡易簿記 (前々年の収入金額1,000万円以下) |
10万円 |
| 上記以外で、 65万円・75万円の 要件を満たさない青色申告者 |
10万円 |
| 事業的規模での貸付+ 複式簿記で記帳+ e-Taxで期限内申告 |
65万円 |
| 事業的規模での貸付+ 複式簿記で記帳+e-Tax+ 優良な電子帳簿保存 |
75万円 |
改正後は、最大控除額が65万円から75万円へ引き上げられますが、そのためには10室以上の事業的規模・複式簿記による記帳・e-Tax・優良な電子帳簿保存が必要です。
また、これまで書面申告でも受けられた55万円控除は廃止されます。さらに、簡易簿記で前々年の不動産所得にかかる収入金額が1,000万円を超える場合は10万円控除も受けられず、控除額は0円です。
このため、10室以上のアパートの経営を始める方は、複式簿記による記帳・e-Tax・電子帳簿保存まで見据えて準備しておくとよいでしょう。
5.家族へ青色事業専従者給与を支払う
10室以上の事業的規模によるアパート経営で、節税効果を高めたいなら、家族に支払う「青色事業専従者給与」の活用が有効です。家族へ給与として支払った分を経費にできるため、課税所得を軽減できます。
青色申告では、生計をともにする15歳以上の配偶者や親族がアパート経営の業務を手伝っている場合、その労働に応じた給与を経費として計上できます。一方で白色申告では、配偶者86万円・その他の親族50万円までの「事業専従者控除」に制限されており、節税余地はあまり大きくありません。
事業的規模でアパート経営をしているオーナーは、家族が入出金チェックや入居者対応、物件巡回などの業務を担当している場合、その労働に見合った給与を支払うことができます。給与として支払った金額は必要経費に算入されるため、課税所得が下がり、所得税・住民税の負担を軽減できるのです。
ただし、業務に従事していない家族への形式的な給与の支払いや、相場より不自然に高い給与の設定は、税務署に認められない可能性があるため避けてください。
家族への給与が経費として扱える「青色事業専従者給与」は、節税対策として検討に値する手法といえます。
アパート経営は、節税だけでなく将来の安心を設計できる投資です。とはいえ、老後資金を意識した経営計画を立てるには、安定して収益が得られる物件選びが欠かせません。
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アパート経営で相続税を節税できる仕組み

アパート経営は、相続税の節税につながる可能性があります。
ここでは、アパート経営で相続税を節税できる仕組みを、次の項目に分けて解説します。
- 現金より不動産の相続税評価額は低くなりやすい
- 貸家建付地によって土地の評価額を下げられる
- 借家権割合で建物の相続税評価額が下がる
- 小規模宅地等の特例を活用できる場合がある
- 令和8年度税制改正大綱による注意点(取得から5年以内の評価見直し)
- アパート経営による相続税評価額のシミュレーション
現金より不動産の相続税評価額は低くなりやすい
アパート経営は、現金をそのまま保有する場合と比べて、相続税評価額を抑えやすい点が特徴です。
不動産の相続税評価額は、土地は路線価、建物は固定資産税評価額をもとに算出されます。一般的に、路線価は公示価格の約8割、建物の固定資産税評価額は建築価格より低くなる傾向があるため、現金よりも相続税評価額を抑えられる可能性があります。
たとえば、1億円を現金で相続する場合、原則として相続税評価額は1億円です。一方、同じ1億円相当のアパートを相続する場合は、土地や建物の評価額が購入価格・建築価格より低く算定されるケースがあります。
このように、アパート経営は不動産評価の仕組みによって、現金よりも相続税評価額を抑えやすい資産といえます。
貸家建付地によって土地の評価額を下げられる
アパートの敷地は、貸家建付地として評価されると、土地の相続税評価額を下げられる可能性があります。
貸家建付地とは、自分が所有する土地に建てたアパートなどの賃貸用建物を、第三者に貸している場合の敷地を指します。賃貸中の土地は、入居者の権利があるため、所有者が自由に使用したり処分したりしにくくなるのです。この制約が相続税評価額に反映されるため、自用地よりも低く評価される仕組みです。
貸家建付地の評価額は、次の計算式で求めます。
| 固定資産税評価額 ×(1-借家権割合 × 賃貸割合) |
借家権割合は全国一律30%です。賃貸割合は、課税時期に実際に賃貸されている割合をもとに計算します。
たとえば、建物全体を賃貸しており、賃貸割合が100%の場合、建物の相続税評価額は固定資産税評価額の70%相当です。このように、建物は借家権割合によって評価額を圧縮できる点が、アパート経営が相続税対策として活用される理由です。
借家権割合で建物の相続税評価額が下がる
賃貸中のアパートは、借家権割合によって、建物の相続税評価額を下げられます。
賃貸物件には入居者の借家権があるため、オーナーが自己使用の建物のように自由に使ったり、処分したりしにくい性質があります。その制約が相続税評価額に反映されるため、賃貸中の建物は自己使用の建物よりも低く評価される仕組みです。
貸家の建物評価額は、次の計算式で求めます。
| 固定資産税評価額 ×(1-借家権割合 × 賃貸割合) |
借家権割合は全国一律30%です。賃貸割合は、課税時期に実際に賃貸されている割合をもとに計算します。
たとえば、建物全体を賃貸しており、賃貸割合が100%の場合、建物の相続税評価額は固定資産税評価額の70%相当です。このように、建物は借家権割合によって評価額を圧縮できる点が、アパート経営が相続税対策として活用される理由です。
小規模宅地等の特例を活用できる場合がある
アパートの敷地は、小規模宅地等の特例の活用で、相続税評価額をさらに下げられる可能性があります。
小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす宅地について、相続税評価額を減額できる制度です。土地の使い方によって区分が分かれており、主な内容は次の通りです。
| 区分と減額内容 | 対象となる土地 |
|---|---|
| 特定居住用宅地等 330㎡まで80%減額 |
被相続人が自宅として 住んでいた土地 |
| 特定事業用宅地等 400㎡まで80%減額 |
被相続人が個人事業に 使っていた土地 |
| 特定同族会社事業用宅地等 400㎡まで80%減額 |
被相続人や親族が経営する 同族会社の事業に使われていた土地 |
| 貸付事業用宅地等 200㎡まで50%減額 |
アパート・マンション・ 駐車場など第三者に 貸していた土地 |
賃貸アパートの敷地は、上記のうち「貸付事業用宅地等」に該当する場合があります。要件を満たせば、200㎡まで50%の評価減を受けられるため、相続税評価額を抑えられる可能性があります。
また、アパートの敷地では、貸家建付地としての評価減と、小規模宅地等の特例をあわせて検討できる点も特徴です。貸家建付地として評価額を下げたうえで、小規模宅地等の特例を適用できれば、相続税負担の軽減につながりやすくなります。
ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付事業を始めた宅地等は、原則として貸付事業用宅地等の特例対象外です。相続税対策を目的に短期間だけ賃貸事業を始めても、特例を受けられない可能性があります。
なお、被相続人が相続開始まで3年を超えて事業的規模(おおむね5棟10室以上)で貸付事業を行っていた場合は、3年以内に取得した宅地でも対象です。
(参考:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例))
令和8年度税制改正大綱による注意点(取得から5年以内の評価見直し)
令和8年度税制改正大綱により、相続開始前5年以内に有償で取得または新築した一定の貸付用不動産は、相続税評価額が高くなる可能性があります。
この大綱では、被相続人等が課税時期前5年以内に有償で取得した一定の貸付用不動産について、課税時期における通常の取引価額に相当する金額で評価する方向性が示されました。取得価額をもとに地価変動等を考慮した価額の80%相当額で評価できるとされています。
たとえば、相続開始の直前に購入や新築したアパートが、新ルールの対象になれば、期待していたほどの節税効果を得られない可能性があります。
この見直しは、令和9年1月1日以後に相続等で取得する財産の評価に適用される予定です。ただし、改正を通達に定める日までに、被相続人等が5年以上所有している土地に新築した家屋などは、一定の経過措置により対象外となる場合があります。
そのため、アパート経営を相続税対策として検討する際は、従来の評価減だけを前提にせず、取得時期・新築時期・保有期間・税制改正の適用時期を確認したうえでの判断が大切です。
アパート経営による相続税評価額のシミュレーション
ここでは、1億円の現金を相続した場合と、1億円相当のアパートを相続した場合で、どの程度相続税額に差が出るかをシミュレーションします。
なお、本シミュレーションは、取得から5年を超えて保有し、従来の評価方法が適用される前提での試算です。
1億円の現金を相続したときの相続税シミュレーション
現金1億円を子ども1人が相続する場合、現金は額面どおり相続税評価額に反映されるため、不動産のような評価減はありません。
まずは基礎控除額3,600万円を差し引き、課税遺産総額を求めます。
| 1億円 − 3,600万円 = 6,400万円 |
今回のシミュレーションでは、子ども1人が課税遺産総額6,400万円を取得するとして、国税庁 相続税の速算表により相続税率30%と控除額700万円を適用します。
| 6,400万円 × 30% − 700万円 = 1,220万円 |
この条件で計算すると、現金1億円を相続したときの相続税の概算は1,220万円です。現金は評価額を圧縮しにくいため、相続税負担が大きくなりやすい傾向があります。
1億円のアパートを相続したときの相続税シミュレーション
このシミュレーションでは、取得価格の内訳を土地4,500万円、建物5,500万円、合計1億円のアパート(築年数が経過した中古物件を想定)を相続した例で試算します。
土地は路線価評価により取得価格の80%である3,600万円とし、そこに貸家建付地の評価方法を反映します。借地権割合を70%、借家権割合を30%、賃貸割合を100%とすると、土地の相続税評価額は約2,844万円です。
建物は、固定資産税評価額を取得価格の35%である1,925万円とし、さらに借家権割合30%、賃貸割合100%を反映して貸家評価を行います。その結果、建物の相続税評価額は約1,348万円です。
この土地と建物の相続税評価額の合計は約4,192万円です。
※実際の路線価や固定資産税評価額は、所在地・構造・築年数などによって異なります。
固定資産税評価額の取得価格に対する割合は、新築の場合は5〜6割程度、築年数が経過した中古の場合はそれより低くなる傾向があります。なお、本試算では、わかりやすさのために小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)は適用していません。要件を満たして特例を適用できる場合は、土地の評価額がさらに下がり、相続税はより少なくなります。
子ども1人が相続する前提で、基礎控除額3,600万円を差し引き、課税遺産総額を計算します。
| 約4,192万円 − 3,600万円 = 約592万円 |
約592万円は相続税の速算表で「1,000万円以下」に該当するため、税率10%を適用します。
| 約592万円 × 10% = 約59万円 |
この前提では、現金1億円を相続した場合の相続税1,220万円に対し、アパートの相続税は約59万円で、差額は約1,161万円です。
アパートは、土地・建物の評価方法や賃貸中であることによる評価減の影響で、現金より相続税負担を抑えられる可能性があります。
実際の税額は借入残高や小規模宅地等の特例の適用有無、令和8年度税制改正による評価見直しの対象になるかどうかによって変わります。
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アパート経営で固定資産税・都市計画税を軽減できる仕組み

アパート経営では、住宅用地の特例によって、土地にかかる固定資産税・都市計画税を軽減できる可能性があります。アパートの敷地が住宅用地として認められると、土地の課税標準額が引き下げられるためです。
ここでは、アパート経営で固定資産税・都市計画税を軽減できる仕組みを解説します。
住宅用地の特例で固定資産税・都市計画税が軽減される
アパートの敷地が住宅用地として認められる場合、住宅用地の特例によって土地の課税標準額が軽減されます。小規模住宅用地に該当する部分は、固定資産税の課税標準額が6分の1、都市計画税の課税標準額が3分の1に減額されます。
また、小規模住宅用地を超える一般住宅用地についても、固定資産税の課税標準額は3分の1、都市計画税の課税標準額は3分の2に軽減されます。
| 区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 課税標準額が 6分の1 |
課税標準額が 3分の1 |
| 一般住宅用地 | 課税標準額が 3分の1 |
課税標準額が 3分の2 |
更地のまま土地を所有している場合は、原則として住宅用地の特例を受けられません。しかし、その土地にアパートを建てて住宅用地として認められれば、土地にかかる固定資産税・都市計画税の負担を抑えられる可能性があります。
アパート経営は家賃収入を得ながら、土地の固定資産税・都市計画税を軽減できる点がメリットです。
住戸数に応じて軽減対象となる土地面積が広がる
複数の住戸をもつアパートは、住戸数に応じて軽減を受けられる土地面積が広がります。
住宅用地の特例のうち、課税標準額が軽減される小規模住宅用地は1戸あたり200㎡までです。しかし、アパートのように複数の住戸がある場合は、200㎡の枠が住戸数分だけ拡大します。
たとえば、10戸のアパートであれば、200㎡×10戸=2,000㎡までが小規模住宅用地として扱われ、固定資産税の課税標準額が6分の1、都市計画税が3分の1に軽減されます。
このように、住戸数が多いほど小規模住宅用地の枠が広がる点は、複数の住戸を持つアパートならではの特徴です。
更地の固定資産税が高い理由について詳しく知りたい方は、こちらの記事もお読みください。
課税所得900万円超のサラリーマンは節税メリットを実感しやすい

アパート経営による節税効果が実感しやすいのは、課税所得が900万円を超える高収入層です。
所得税の税率は累進課税で、900万円超の所得に適用される税率は33%以上と高いため、高所得者ほどアパート経営の赤字で生じる節税の恩恵をより実感できます。さらに、赤字によって税率区分が一段階下がるケースでは、節税効果がいっそう高くなる可能性があります。
課税所得900万円未満の層は税率が23%以下で、所得を圧縮しても減税額は限定的な場合が多いです。そのため、課税所得が900万円未満の方がアパート経営にチャレンジする際は、節税よりもキャッシュフローの黒字や将来の資産形成を重視する方針で運営するのが現実的だといえます。
以下は、所得税の速算表です。
| 課税される 所得額 |
税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超 330万円以下 |
10% | 9万7,500円 |
| 330万円超 695万円以下 |
20% | 42万7,500円 |
| 695万円超 900万円以下 |
23% | 63万6,000円 |
| 900万円超 1,800万円以下 |
33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円超 4,000万円以下 |
40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
(参照:国税庁 令和7年分の年末調整のための算出所得税額の速算表)
たとえば、課税所得1,000万円(所得税率33%)のサラリーマンが、不動産所得の赤字150万円を他の所得と損益通算すると、課税所得は850万円(所得税率23%)となり軽減できる税額は 44万5,000円です。このほか、課税所得の減少分に応じて住民税も軽減されます。
課税所得が1,000万円のサラリーマンの所得税
| 1,000万円 × 33% -153万6,000円=176万4,000円 |
不動産所得で150万円の赤字が出た場合
| (1,000万円-150万円)×23%-63万6,000円=131万9,000円 |
削減できた税金
| 176万4,000円-131万9,000円=44万5,000円 |
課税所得が1,900万円(所得税率40%)の会社員が、不動産所得で同じく150万円の赤字を出した場合、課税所得が1,750万円(所得税率33%)となり、税金を56万5,000円少なくできます。さらに、住民税も軽減されます。
課税所得が1,900万円のサラリーマンの所得税
| 1,900万円 × 40% -279万6,000円=480万4,000円 |
不動産所得で150万円の赤字が出た場合
| (1,900万円-150万円)× 33% -153万6,000円=423万9,000円 |
削減できた税金
| 480万4,000円-423万9,000円=56万5,000円 |
このように所得額が上がるほど税率も上昇するため、高収入のサラリーマンほど、節税の恩恵を受けやすいのです。
法人化でアパート経営の節税効果を高められる場合がある

法人化でアパート経営の節税効果を高められる場合があります。
法人化とは、法人を設立し、法人名義でアパートを取得・保有して賃貸経営を行う方法です。
個人の所得が高い場合、アパート経営の利益も給与所得などと合算され、高い税率が適用されることがあります。しかし、法人でアパートを所有すれば、アパート経営の利益は法人の所得として扱われるため、税率差を活用できる可能性があります。
また、法人化によって所得を家族に分散できる点も特徴です。たとえば、配偶者や子どもを法人の役員にして、その家族に役員報酬を支払うことにより、オーナー個人に所得が集中するのを避けられる場合があります。所得を分散できれば、個人の所得税・住民税の負担を抑えやすくなるのです。
ただし、法人化には設立費用や税理士報酬、法人住民税などの維持コストがかかります。家賃収入や利益が少ない段階で法人化すると、節税効果よりもコストのほうが大きくなる可能性もあります。
そのため、法人化は節税効果だけで判断せず、家賃収入の規模、所得状況、家族への所得分散、相続対策、将来の売却方針まで含めて検討する必要があるでしょう。
法人化は、所得税・住民税の負担軽減や家族への所得分散につながる可能性があります。しかし、家賃収入や利益の規模によっては、設立費用や維持コストが節税効果を上回り、かえって手残りが減ってしまうケースも少なくありません。
一方で、自分の所得状況や保有資産、将来の相続対策まで踏まえて法人化を検討できれば、税負担を抑えながら、より安定したアパート経営を目指せます。
ファミリーアセットコンサルティングでは、アパート経営を検討している方に向けて、無料投資相談を実施しています。法人化の必要性だけでなく、収支計画や税金対策、物件選びまで専門家に相談できるため、自分に合った投資方針を整理できます。
法人化すべきか迷っている方や、節税と収益性を両立できるアパート経営を始めたい方は、まずは無料投資相談で、ご自身に合った経営プランを確認してみてください。
節税を重視し過ぎると本末転倒になることも

アパート経営で節税メリットばかり優先すると、手元資金が不足し経営そのものが不安定になる恐れがあります。
そこで、節税重視のリスクと、アパート経営が本来目指すべきゴールについてお伝えします。
赤字経営は2棟目の融資を不利にする
実際に赤字経営を続けてしまうと、将来の資金調達や規模拡大の選択肢が狭まり、次の投資機会を逃す可能性があります。金融機関から「収支が安定していない」と見なされ、2棟目以降の融資が通りにくくなる場合があるからです。
その結果、収益性の高い物件に出会っても資金調達が進まず、規模拡大のチャンスを逃してしまうかもしれません。
アパート経営の本質は「利益を生み、結果として税負担も抑えられる」という仕組みにあります。だからこそ、節税ありきではなく、安定した黒字を維持できる経営基盤の構築が大切です。
減価償却や損益通算の効果は一時的
減価償却や損益通算による節税効果は永続的なものではなく、期限が存在します。耐用年数を過ぎると減価償却費を計上できなくなるため、キャッシュフローが出ている物件であれば、帳簿上も黒字になる可能性が高いでしょう。
節税はあくまで一定期間だけのボーナスのようなものです。単年の税軽減だけを意識するのではなく、物件保有期間全体の収支を通して、継続的に資産が積み上がるかの見極めが重要です。
デッドクロスが起こると税負担が重くなる
デッドクロスが起こると、帳簿上の利益が増え、所得税・住民税の負担が重くなる可能性があります。
デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態です。
減価償却費が多いうちは、実際の手元資金を残しながら帳簿上の利益を抑えやすいですが、減価償却期間が終了すると、経費にできる金額が減少します。
その結果、家賃収入が変わらなくても帳簿上の利益が増え、所得税・住民税の課税対象額が大きくなる場合があります。税負担が増える一方で、ローンの元金返済による現金支出は続くため、手元資金が減り、キャッシュフローが悪化しやすくなるのです。
節税効果を期待してアパート経営を始めるなら、購入時点の税負担だけでなく、減価償却期間終了後のキャッシュフローについてもシミュレーションする必要があるでしょう。
不動産投資のデッドクロスについての原因と対策は、こちらの記事をご覧ください。
利益を出す経営こそが大切
アパート経営で重要なのは、キャッシュフローで黒字を確保しつつ、減価償却費などを活用して節税効果を高める健全な経営です。
毎年安定してキャッシュフローの黒字を確保できているオーナーは、手元に残る利益を次の物件購入に充てられるため、資産が積み上がっていきます。
アパート経営は、「キャッシュフローの黒字」と「帳簿上の赤字による節税」の組み合わせが資産の拡大をもたらします。
アパート経営の節税に関するよくある質問

これからアパート経営を始める方から多く寄せられる、節税に関する質問にお答えします。
節税できる税金の種類や経費にできるもの、相続税対策としての効果などを事前に確認し、アパート経営を検討する際の参考にしてください。
Q1.アパート経営でどの税金を節税できますか?
アパート経営で節税効果が期待できる税金は、主に所得税・住民税・相続税・固定資産税・都市計画税です。
所得税や住民税は、減価償却費や修繕費などの経費計上によって負担の軽減が可能です。
また、相続税は、現金や更地で保有する場合に比べて、不動産や貸家建付地として評価額を下げられる可能性があります。
さらに、アパートの敷地が住宅用地として認められれば、固定資産税や都市計画税の軽減措置を受けられます。
アパート経営も含めた不動産投資の節税方法について知りたい方は、以下の記事もお読みください。
Q2.サラリーマンでもアパート経営で節税できますか?
サラリーマンでもアパート経営による節税は可能です。
給与所得がある方は、アパート経営で生じた不動産所得の赤字を、給与所得と損益通算できます。損益通算によって課税所得を圧縮できれば、所得税や住民税の負担を軽減できます。
サラリーマンの不動産投資による節税対策についての詳細は、次の記事も参考にしてください。
Q3.法人化すればアパート経営の節税効果は高まりますか?
法人化すると、アパート経営の利益にかかる税率を抑えられる場合があります。
個人所有では、不動産所得が給与所得などと合算されるため、所得が高いほど高い税率がかかりやすくなるのです。一方、法人所有では法人の所得として扱われるため、所得規模によっては税負担を抑えられます。
ただし、法人化には設立費用や維持コストがかかり、売却時には個人よりも税負担が増加する場合もあるため、規模や出口戦略を踏まえた判断が必要です。
法人化をしたほうがよいか詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
Q4.節税目的のアパート経営は危険ですか?
節税だけを目的にアパート経営を始めるのは危険です。
アパート経営では、不動産所得の赤字や減価償却費によって所得税・住民税を抑えられる場合があります。しかし、そもそもキャッシュフローがマイナスになってしまう場合は、収益性の低い物件を保有しているともいえます。
そのため、節税効果だけで判断せず、収益性・空室リスク・修繕費・将来の売却まで含めた収支計画の立案が大切です。
アパート経営は、空室や修繕費、売却時の税負担によって、想定より収支が悪化するおそれがあります。「自分の場合はどのくらい節税できるのか」「節税効果と収益性のバランスは取れているのか」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
ファミリーアセットコンサルティングでは、アパート経営を検討している方に向けて、収支計画や税金対策、物件選びに役立つ情報を提供しています。アパート経営で後悔しないためにも、まずは無料会員登録をして、節税対策と収益性の両面から情報収集を始めてみてください。
まとめ

本記事ではアパート経営で節税ができる仕組みや、所得税・住民税を軽減する方法について解説しました。
アパート経営は、節税効果を活用しながら資産形成を進められる有効な手段です。所得税や住民税の負担軽減だけでなく、相続税対策としてもさまざまなメリットがあります。
しかし、節税はあくまで目的ではなく、堅実な経営の結果として得られる副次的なメリットです。長期的な視点で収益と節税の両立が、成功するアパート経営の理想のかたちといえるでしょう。
いくら節税できたとしても、空室が続いたり家賃が下がったりすれば、経営は不安定になってしまいます。逆に、立地・利回り・賃貸需要を見極めた物件を選べば、節税しながら資産の拡大が可能です。
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