アパート売却にかかる費用とその目安は?税金についても解説
目次
初めてアパートを売却するにあたり、売却にかかる費用や手順を詳しく知っておきたい方もいるでしょう。費用の目安や税金の種類を把握しておくことで、スムーズに進められます。
そこで本記事では、アパートの売却を「費用」の視点から解説します。条件が合えば特例制度も利用し、余計な出費を削りましょう。
アパート売却にかかる費用の一覧表
アパートを売却すると売却益を得られますが、手続きの際には諸費用がかかります。諸費用の内訳は以下の通りです。
費用 | 目安金額 |
仲介手数料 | 売買代金×3%+6万円+消費税 |
抵当権抹消費用 | ・司法書士への依頼料:1万5,000円程度 ・登録免許税:1,000円〜3,000円程度 |
印紙税 | 1,000円〜6万円程度 |
譲渡所得税 (所得税・住民税) | ・保有期間が5年以下:39.63%(所得税30%、住民税9%、特別復興所得税0.63%) ・保有期間が5年超:20.315%(所得税15%、住民税5%、特別復興所得税0.315%) |
その他費用 | ・ローンの一括返済にかかる手数料:1~3万円程度 ・測量費(土地の境界線を明確にするための費用):50万~100万円程度 など |
詳細は次の項目で解説しますが、上記の中でも注意したいのが譲渡所得税です。不動産の保有期間に応じて課される税率が変わります。
アパート売却にかかる費用の目安
アパートの売却にかかる費用は以下の5つです。ここでは、各費用の概要と金額の目安について、詳しく解説します。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産会社に依頼して不動産を売却した場合に支払う費用です。仲介手数料は、法律によって上限額が決められています。
取引額(不動産の売買価格) | 仲介手数料(法定の上限額) |
200万円以下 | (売却額×5%)+消費税 |
200万円超400万円以下 | (売却額×4%+2万円)+消費税 |
400万円超 | (売却額×3%+6万円)+消費税 |
仲介手数料を計算する際に使用されるのは、土地と建物を合わせた総売却額です。例えば、土地が2,000万円、建物が1,000万円だった場合、3,000万円を取引額として計算します。
抵当権抹消登記費用
抵当権抹消登記費用とは、登記簿謄本に記載された抵当権に関する内容を削除する際に発生する費用のことです。抵当権は、金融機関のような債権者が抵当物件から弁済を受ける権利で、ローンの返済がなくなれば抵当権もなくなります。
- 抵当権抹消登記:1個あたり1,000円
- 司法書士報酬:1万5,000円程度
抵当権抹消登記の手続きは頻雑であるため司法書士に依頼することが多く、報酬金額を含めて1万円〜2万円程度の費用がかかるでしょう。
印紙税
印紙税は、金銭のやり取りに関する文書を作成する際に課される税金です。作成する部数の分だけ貼り付ける必要があります。不動産売買の手続きにかかる印紙税の金額は、売却価格に応じて変動するため注意しましょう。印紙税の令和4年4月1日付の法令では以下のように定められています。
【不動産の譲渡に関する契約書にかかる印紙税額】
契約金額 | 印紙税額 | |
税額 | 軽減措置 | |
1,000万円超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超え | 60万円 | 48万円 |
(参考: 『国税庁 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで』)
譲渡所得税
譲渡所得税は、不動産を売却した際に課される税金(所得税・住民税)です。アパートの保有期間に応じて税率が変わります。
短期譲渡所得税率と長期譲渡所得税率の違いは、アパートの所有期間です。譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得税が、5年を超えていれば長期譲渡所得税が課されます。長く所有すると税率が低くなるように設定されているため、可能であれば保有期間が5年を過ぎてから売却するほうがよいでしょう。
その他費用
アパートの売却時は、その他にもいくつか費用が発生します。費用の概要と目安金額は以下の通りです。
- ローンの一括返済にかかる手数料:1~3万円程度
- 測量費(土地の境界線を明確にするための費用):50万~100万円程度
- 解体費用:木造の坪単価2.5万~6万円、鉄筋コンクリートの坪単価3.5~7万円程度
- 立ち退き料:賃料の3か月~6か月分
アパートを購入した際に借りたローンの返済が残っている場合は、残高を一括返済する必要があります。返済にかかる手数料は、「インターネット経由」や「窓口」など返済方法に応じて変動するケースも多いため事前に確認しておきましょう。
アパート売却の費用をおさえられる特例制度
事業用(投資用)のアパートの売却費用は、以下のような特例制度を利用できれば安くおさえられる可能性があります。
・事業用の資産を買い換えたときの特例
事業用不動産の譲渡後、一定期間内に不動産を取得し、その後1年以内に事業で使用した場合に利用できる制度を「事業用資産の買換えの特例」といいます。譲渡金額よりも取得金額のほうが多いケースにおいて、「譲渡金額×20%」の金額を収入金額に加算して譲渡所得を計算できます(将来に繰り延べするのであって非課税になるわけではありません)。
譲渡金額よりも取得金額のほうが少ない場合は、その差額と買い換えた金額に課税割合をかけた額との合計額を収入金額とします。買い換える資産の金額が小さいほど、繰り延べできる金額も小さくなる仕組みです。
ただし、「譲渡した事業用アパートの所有期間が10年を超えること」や、「買い替えた事業用不動産が特定の地域内にあること」など、一定の要件を満たす必要があります。
(参考: 『国税庁 No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例』)
・平成21年・平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
アパートが建っている土地が平成21年・平成22年に取得したものの場合、「親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではない」「相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済により取得した土地等ではない」といった一定条件をクリアすることで譲渡所得から1,000万円を控除できます。
(参考: 『国税庁 No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除』)
アパートの売却で戻ってくる費用も
アパートの売却に諸費用がかかるのは避けられませんが、中には戻ってくる費用もあります。手取り資金を増やすためにも、戻ってくる費用を把握し、もれなく受け取りましょう。ここでは、返却の可能性がある費用について解説します。
火災保険料
火災保険は、火災や水災、風災といった災害によって一定の損害を受けたときに補償される保険です。火災保険への加入は義務化されていませんが、万が一に備えて加入している方のほうが多いでしょう。
火災保険の保険期間中にアパートを売却すれば、残りの期間の保険料は返金してもらえます。ただし、返金額は保険会社のプランや保険加入期間などによって異なる点に注意しましょう。例えば、保険に加入していた期間があまりにも短いと、保険料が戻ってこない可能性もあります。
固定資産税や都市計画税
固定資産税や都市計画税は、1月1日時点で不動産を所有している者に対して、1年間の納付義務が発生する税金です。年の途中でアパートを売却するときは、残りの期間分の金額を日割りで計算し、買主に負担してもらいます。
ただし、売主と買主で固定資産税・都市計画税を分担することに関して、法的な決まりはありません。場合によっては売主が1年分を支払うことになる可能性もあります。また、日割り計算をする際の起算日においては、地域によって異なることもあります。
アパート売却時の手順
ここでは、実際にアパートを売却する際の流れを紹介します。一般的に、アパートの売却には相応の期間を要するものです。事前に流れを確認しておくことで、スムーズに対応できるようになるでしょう。
1.不動産会社に依頼する
不動産会社の探し方は、「一括査定」や「直接不動産会社に問い合わせる」といった方法が主流です。いくつかの不動産会社にアパートの金額を査定してもらい、金額や条件、接客対応などを比較しながら希望に合う会社を探しましょう。特に売却実績は、重視して不動産会社選びを行うとよいでしょう。
2.媒介契約を締結する
媒介契約とは、アパートなどの不動産を売却・貸出を依頼する際に不動産会社と結ぶ契約です。不動産会社へ支払う仲介手数料や売却の条件などが定められています。媒介契約には以下のような種類があります。
専属専任媒介契約 | 複数の不動産会社との契約ができない また、不動産会社が探した買主以外とは契約できない |
専任媒介契約 | 複数の不動産会社との契約ができないが、 不動産会社が探した買主以外とも契約できる |
一般媒介契約 | 複数の不動産会社との契約ができる また、不動産会社が探した買主以外とも契約できる |
不動産会社が決まったら、売却金額や期間などの方針を固めて、契約を締結しましょう。多くのケースで不動産会社が書類を用意してくれるので、必要事項を記載します。
3.買主と売買契約を結ぶ
媒介契約を交わした後は、契約した不動産会社が買主を探すのが一般的な流れです。
購入希望者と不動産会社が話し合いをして決めた条件に問題がなければ、売買契約を結びます。売買契約の際に必要となる書類の一例は以下の通りです。
- 本人確認書類
- 印鑑証明書
- 収入印紙(電子契約の場合は不要)
- 土地、建物登記済証 など
4.アパート引き渡し
売買契約が完了したら、アパートの引き渡しに進みます。一般的には売買契約後の1.5〜3か月後になりますが、物件の規模によっては6か月以上かかることもあります。
期日までに引き渡せないと違約金が発生するため注意しましょう。また、ローンの残高が残っている場合は一括返済することになります。引き渡し当日の基本的な流れは次の通りです。
1.物件や書類の最終確認
2.残代金の受領
3.税金や諸費用の精算
4.仲介手数料や司法書士への報酬支払い
5.抵当権の抹消登記完了
6.鍵や重要書類の引き渡し
なお、売却によって利益が出た場合は、納税および確定申告をしなければなりません。利益が発生した日が帰属する年の翌年2月16日から3月15日が、確定申告期間です。利用できる控除や特例制度があれば、確定申告の際に必要事項を記載しましょう。
売却時にかかる税金も把握しておこう
アパートを売却した際に発生する税金として「譲渡所得税」が知られていますが、実際はその他にも複数の税金が課税されます。前述した税金も含め、まとめます。
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 登録免許税
- 消費税
課される税金の種類や税率、納付方法などは個人のケースによって異なるため、「何がどれだけ課されるか分からない」と感じる方もいるでしょう。アパートの売却には不動産に関する知識はもちろん、税金や法律に関する知識も必要です。
自身でアパートを売却することに難しさを感じた場合は、専門家に相談しましょう。アパートの売却に向けて、包括的なサポートを受けられます。また、不動産売却時にかかる税金についてまとめた以下の記事も参考にしてみてください。
まとめ
アパートの売却には、譲渡所得税や抵当権抹消費用、仲介手数料など複数の費用が発生します。
また、実績豊富な不動産会社を見つけることも、重要なポイントのひとつです。実績を積んだ不動産会社には「アパートを市場価値に見合った適切な価格で売却できる」「買主との条件交渉がスムーズ」といったメリットがあります。過去の販売・相談数や接客対応、サービス内容などを比較しながら、不動産会社を探しましょう。アパート売却の手順や費用についてまとめた本記事も、ぜひ参考にしてみてください。