【早見表】年収別の税金内訳!実は年収◯◯万円は損している?
目次
税金の負担は年収によって大きく変わります。また、年収が一定額を超えると税負担が急増する「年収◯◯万円の壁」と呼ばれる境目もあります。
「年収が増えたのに手取りが減った」という事態を避けるためにも、年収と税金の関係を理解しておきましょう。本記事では、年収から引かれる税金の種類や年収別の税金内訳、税負担から見た得する・損する年収帯などを紹介します。
年収から引かれる税金の種類とは?
年収から引かれる税金には、所得税、住民税、社会保険料の3種類があります。
所得税は国税で、その年の1月から12月までの所得に対して課税されます。税率は所得に応じて5%から45%まで7段階に分かれており、所得が多いほど高い税率が適用される累進課税制度となっています。
住民税は地方税で、前年の所得に基づいて課税されます。都道府県民税と市町村民税の合計で構成され、基本的に一律10%ですが、これに加えて均等割額が課されます。
社会保険料は厳密には税金ではありませんが、給与から天引きされる点で税金と同様の負担感があります。健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険などがあり、通常は労働者と事業主で折半して負担します。
これらの負担は給与支払い時に源泉徴収として天引きされるため、実際の手取り額は年収よりも少なくなります。なお、各種控除の適用や確定申告により、所得税の還付を受けられる場合もあります。
【早見表】年収別の税金内訳
ここでは、所得税・住民税・社会保険料の概算を早見表にまとめました。あくまで下記の条件での概算であり、実際の金額は個々の状況(家族構成や勤務形態、勤務先の福利厚生など)により変わります。
- 給与所得者(サラリーマン)
- 扶養親族なし
- 給与所得控除、基礎控除、社会保険料控除のみを考慮
- 千の位で四捨五入
年収 | 所得税 | 住民税 | 社会保険料 |
300万円 | 6万円 | 12万円 | 43万円 |
350万円 | 7万円 | 14万円 | 50万円 |
400万円 | 9万円 | 18万円 | 57万円 |
450万円 | 11万円 | 21万円 | 65万円 |
500万円 | 14万円 | 24万円 | 72万円 |
550万円 | 17万円 | 27万円 | 79万円 |
600万円 | 18万円 | 31万円 | 86万円 |
650万円 | 24万円 | 34万円 | 93万円 |
700万円 | 32万円 | 38万円 | 101万円 |
750万円 | 39万円 | 41万円 | 108万円 |
800万円 | 47万円 | 45万円 | 113万円 |
850万円 | 56万円 | 50万円 | 116万円 |
900万円 | 65万円 | 54万円 | 118万円 |
950万円 | 75万円 | 59万円 | 121万円 |
1,000万円 | 82万円 | 64万円 | 123万円 |
1,050万円 | 93万円 | 69万円 | 126万円 |
1,100万円 | 104万円 | 73万円 | 129万円 |
1,150万円 | 115万円 | 78万円 | 131万円 |
1,200万円 | 118万円 | 83万円 | 134万円 |
1,250万円 | 134万円 | 88万円 | 136万円 |
1,300万円 | 149万円 | 92万円 | 139万円 |
1,350万円 | 165万円 | 97万円 | 142万円 |
1,400万円 | 181万円 | 102万円 | 144万円 |
1,450万円 | 196万円 | 107万円 | 147万円 |
1,500万円 | 212万円 | 111万円 | 149万円 |
1,550万円 | 228万円 | 116万円 | 152万円 |
1,600万円 | 243万円 | 121万円 | 155万円 |
1,650万円 | 259万円 | 125万円 | 158万円 |
1,700万円 | 275万円 | 130万円 | 158万円 |
1,750万円 | 291万円 | 135万円 | 158万円 |
1,800万円 | 308万円 | 140万円 | 159万円 |
1,850万円 | 324万円 | 145万円 | 159万円 |
1,900万円 | 341万円 | 150万円 | 159万円 |
1,950万円 | 357万円 | 155万円 | 159万円 |
2,000万円 | 374万円 | 160万円 | 159万円 |
2,100万円 | 399万円 | 170万円 | 160万円 |
2,200万円 | 439万円 | 180万円 | 160万円 |
2,300万円 | 479万円 | 190万円 | 160万円 |
2,400万円 | 519万円 | 200万円 | 160万円 |
2,500万円 | 559万円 | 210万円 | 161万円 |
2,600万円 | 605万円 | 222万円 | 161万円 |
2,700万円 | 658万円 | 234万円 | 161万円 |
2,800万円 | 698万円 | 244万円 | 162万円 |
2,900万円 | 738万円 | 254万円 | 162万円 |
3,000万円 | 778万円 | 264万円 | 162万円 |
所得税と住民税の具体的な計算方法については、次の章で詳しく解説します。
年収から引かれる所得税の計算方法
ここでは、会社員の方を対象として、年収から引かれる所得税の計算方法を段階的に説明します。所得金額の算出から始まり、課税所得金額の計算、税率の適用、そして税額控除による最終納付額の計算までの流れを分かりやすく解説します。
1.まずは所得金額を求める
所得金額は、総収入金額から必要経費を引くことで算出できます。会社員の場合は、年収(給与収入)から給与所得控除額を引いてください。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
162万5,000円まで | 55万円 |
162万5,001円~180万円まで | 収入金額×40%-10万円 |
180万1円~360万円まで | 収入金額×30%+8万円 |
360万1円~660万円まで | 収入金額×20%+44万円 |
660万1円~850万円まで | 収入金額×10%+110万円 |
850万1円以上 | 195万円(上限) |
(参考: 『給与所得控除|国税庁』)
例えば年収1,000万円の場合は-195万円なので、所得金額は805万円になります。
2.課税所得金額を求める
所得金額から各種所得控除を引きます。主な所得控除には基礎控除(48万円)、社会保険料控除(実際に支払った金額)などがあります。この結果が課税所得金額となります。
■基礎控除
納税者本人の合計所得金額 | 控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超 2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超 2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0万円 |
(参考: 『基礎控除|国税庁』)
例えば、所得金額が805万円(年収1,000万円)で社会保険料が123万円の方の場合、課税所得金額は634万円(805万円 - 123万円 - 48万円)になります。
基礎控除以外に、次の所得控除があれば、それぞれの金額をマイナスして算出します。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
3.税率をかけて税額を求める
課税所得金額に所得税率をかけます。所得税率は課税所得金額に応じて5%から45%まで7段階あります。
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
1,000円~194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
(参考: 『国税庁 所得税の税率』)
例えば課税所得が634万円の場合の税額は、634万円×20% - 42万7,500円で84万500円となります。
4.税額から税額控除を引いて納付額を計算する
税額控除がある場合は、所得金額から差し引くことがあります。主な税額控除は次の通りです。
- 配当控除
- 分配時調整外国税相当額控除
- 外国税額控除
- 政党等寄附金特別控除
- 認定NPO法人等寄附金特別控除
- 公益社団法人等寄附金特別控除
- 住宅借入金等特別控除
税金に明るくない方でも、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は耳にしたことがあるのではないでしょうか。この控除は、住宅購入や増築時に条件を満たすことで利用でき、年末のローン残高の0.7%を最長13年間所得税から控除できます。
これらの控除を適用した後の金額が、最終的な所得税の納付額です。
年収から引かれる住民税の計算方法
住民税の計算方法には所得税とは異なる点がいくつかあります。特に、控除額や税率の違いに注意が必要です。ここでは、会社員の方を対象として、年収から引かれる住民税の計算方法を段階的に説明します。
1.所得金額から各種所得控除額を引き課税所得金額を求める
所得税の計算と同じく、まずは所得金額を求めた上で各種所得控除を引きますが、注意が必要なのは控除額です。住民税を求めるときの控除額は、所得税の計算に使った額とは異なるものがあります。例えば、所得税の基礎控除(限度額)は48万円に対し、住民税は43万円です。
■住民税・所得税で違う控除額の一例
所得控除 | 住民税 | 所得税 |
基礎控除(限度額) | 43万円 | 48万円 |
生命保険料控除(限度額) | 7万円 | 12万円 |
地震保険料控除(限度額) | 2万5,000円 | 5万円 |
扶養控除 | 33万円 | 38万円 |
特定扶養控除 | 45万円 | 63万円 |
仮に所得金額が805万円(年収1,000万円 - 195万円)で、社会保険料が123万円の方の場合、基礎控除だけを計算に入れると639万円(805万円 - 123万円 - 43万円)が課税所得金額になります。
2.所得割を求める
課税所得金額が分かったら、次の計算式に当てはめて所得割を求めます。
所得割 [課税所得金額 × 税率(10%) - 税額控除額] + 均等割(4,000円)
所得割とは前年の所得金額に応じて負担する税のことです。課税所得金額に税率10%(都道府県民税4%、市区町村民税が6%)をかけた上で、税額控除額を差し引いて求めます。
課税所得金額が241万円の場合で、使える税額控除がない場合の所得割は、24万1,000円 になります。
3.均等割額を合計する
均等割は、前年の所得金額にかかわらず、一定の所得がある方全員が均等に負担する税です。通常は4,000円(市町村民税3,000円、道府県民税1,000円)です。したがって、所得割が24万1,000円の方の場合、合わせて24万5,000円が住民税額になります。
なお、令和6年度より、個人住民税均等割と併せて森林環境税(国税)が1,000円徴収されています。
年収の境目によって変わる税金の負担
「年収が増えると手取りも増える」と期待してしまいますが、実際には一定の年収を超えると税金や社会保険料の負担が大きく変わる「年収の壁」に直面することがあります。ここでは、年収の境目によってどのような変化が起こるのか、代表的な年収の壁を紹介します。
年収106万円の壁:社会保険加入義務が発生する
106万円の壁とは、パートタイムで働く社会人(夜間学生を含む)が特定の年収を超えると、雇用先の社会保険に加入する義務が生じる年収目安のことです。具体的には、従業員が101人以上いる企業に勤務し、かつ年間の収入が約106万円以上となる場合、この条件に該当します。
労働者が適切な社会保険に加入し、医療や年金などの保障を受けることを目的としていますが、この壁を超えると、配偶者など社会保険の扶養に入っている方は扶養から外れることになります。自分で社会保険料を支払わなければならないため、年収が106万円を少し超える程度だと社会保険料の負担が増え、手取り収入が減る可能性があります。
この状況を避けて手取り収入を増やしたい方は、ひとつの雇用先で106万円を超えるのではなく、複数の雇用先で働くことを検討するとよいでしょう。
年収130万円の壁:扶養家族の範囲外に
扶養に入っている方が年収130万円を超えると、配偶者や親の社会保険の扶養から外れ、自分で社会保険料を支払わなければなりません。勤務先の健康保険や厚生年金保険などに加入する必要があるため保険料負担が生じ、手取り収入が減る可能性があります。
106万円の壁と同じく、年収が130万円を少し超える程度だと損をした気分になるかもしれません。このため、収入を調整して130万円未満におさえるか、反対に130万円を大幅に超える収入を目指すという選択もあるでしょう。
年収150万円の壁:配偶者特別控除の満額ライン
配偶者特別控除に関連する税制上の境界線が、150万円の壁です。パートタイムで働く配偶者が年間収入150万円を超えると、扶養者である夫または妻が受けられる配偶者特別控除の金額が段階的に減少します。
配偶者特別控除は38万円が満額ですが、扶養されている配偶者の年収が150万円を超え、収入が増えるごとに36万円、31万円、26万円と減少していきます。
年収200万円の壁:配偶者特別控除が受けられなくなる
200万円の壁は150万円の壁の延長にある境界線です。扶養されている配偶者の年収が201万6,000円を超えると、配偶者特別控除がゼロになります。
したがって、200万円の壁を越えることで得られる収入と、控除の減少や社会保険料の増加による影響を総合的に考慮し、働き方を検討する必要があります。
年収850万円の壁:税率が上がり遺族年金や振替加算を受け取れない
年収が850万円を超えると、税制上および社会保険上のさまざまな負担が増えます。具体的には以下のようなものです。
- 所得税・住民税の負担が増す
年収850万円を超えると、給与所得控除が一律195万円に固定されるため、それ以上の収入が増えても控除額は増えません。
- 遺族年金が受け取れなくなる
遺族基礎年金や遺族厚生年金の受給要件は、死亡当時、死亡した方によって生計を維持されていた年収850万円未満の遺族です。例えば、夫が亡くなった当時に年収が850万円以上ある妻は、遺族年金を受け取ることができません。ただし、退職や廃業などの理由で、おおむね5年以内に年収が850万円未満となると認められる場合は例外です。
- 加給年金・振替加算が受け取れなくなる
老齢厚生年金の受給者に配偶者や子どもがいる場合、扶養手当として加給年金が支給されますが、その配偶者等の年収が850万円以上であると支給対象外となります。また、配偶者が65歳になると加給年金は打ち切られ、代わりに振替加算が支給されますが、これも年収850万円未満でなければ受け取ることができません。
年収910万円の壁:高等学校等就学支援金の所得制限がかかる
高等学校等就学支援金は、公立高校では年間11万8,800円、私立高校では最大年間39万6,000円が支給されますが、年収が910万円を超えると支援を受けられなくなります(所得制限の額は親の働き方や子どもの数などによって変動します)。
東京都では所得制限が撤廃されたものの、「都内在住」という条件もあり、「同じ学校に通っているのに不公平」という声もあります。また、地方では依然、所得制限があるため、年収910万円ほど稼ぐ子育て世帯にとって、年収910万円の壁は大きな境界線といえるでしょう。
税金で一番得する年収はいくら?
課税所得金額に応じた所得税率の変化を理解し、どの年収帯が税負担を最小限におさえられるかを見ていきましょう。反対に、損に感じる年収帯についても紹介します。
年収600万円~700万円程度が最もお得?
注目したいのは所得税率の上がり方です。課税所得金額が330万円未満の方は税率が10%ですが、330万円を超えると20%に急上昇します。同様に、課税所得金額が900万円未満と900万円を超える場合にも税率が22%から33%に増えるため、税金が上がったと感じやすいでしょう。
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
1,000円~194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
(参考: 『国税庁 所得税の税率』)
年収600万円~700万円程度の方は、課税所得金額が330万円~694万9,000円で20%、少し超える方で695万円~899万9,000円の枠に入っても23%と、税率が3%しか上がりません。以上から最もお得に感じやすいのは、年収600万円~700万円程度といえるでしょう。
損だと感じやすいのは年収850万円超
年収850万円を超えると損だと感じやすくなる理由は、給与所得控除額が一定になるためです。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
162万5,000円まで | 55万円 |
162万5,001円~180万円まで | 収入金額×40%-10万円 |
180万1円~360万円まで | 収入金額×30%+8万円 |
360万1円~660万円まで | 収入金額×20%+44万円 |
660万1円~850万円まで | 収入金額×10%+110万円 |
850万1円以上 | 195万円(上限) |
言い換えれば、年収が851万円の方も2,000万円の方も同じ控除額しか受けられないという状況になります。これにより、年収が高くなるほど控除額が相対的に少なくなり、不公平に感じる方が多い傾向にあります。
課税所得4,000万円以上は手取りが半分ほどに
課税所得が4,000万円を超えると所得税率が45%に達し、さらに住民税10%が加わることで、合計の税率が55%になります。例えば、課税所得が5,000万円の場合、所得税だけで約1,770万円(5,000万円×45%- 479万6,000円)が課税されます。高所得者は収入の半分以上を税金として支払うことになり、大きな負担を感じやすくなるでしょう。
まとめ
税金の負担は年収によって大きく変動します。年収600万円~700万円が最もお得とされる一方で、年収850万円を超えると控除額の固定などにより損を感じることが増えます。また、年収が4,000万円を超えると手取り額が大幅に減少するため、高所得者ほど税金の影響が大きくなります。
自分の年収と税負担の関係を理解し、賢く収入を管理することが重要です。本記事が参考となり、効率的な収入管理の一助になれば幸いです。