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不動産投資の基礎知識

不動産にかかる消費税について解説| 購入・売却に課税される税金とは


目次

    日常生活で馴染み深い消費税は、不動産の売買取引でも課税されます。不動産は売買金額が高額になるため、消費税の10%が上乗せされるとインパクトも大きく、最終的な支払い金額が上がります。

    しかし、不動産売買で発生するすべての費用に消費税が課税されるわけではありません。正確な予算を組むためには、消費税の「課税対象項目」「非課税対象項目」を認識しておくことが重要です。

    本記事では不動産売買における消費税の課税対象・非課税対象について詳しく紹介します。これから不動産売買を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

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    不動産における消費税とは 

    消費税は、商品販売やサービス提供などの取引に課税される税金です。
    税金には、納める人と負担する人が同じ「直接税」と、納める人と負担する人が異なる「間接税」の2種類があり、消費税は「間接税」に分類されます。

    消費税を負担するのはサービスや商品を使う側の消費者であり、申告納付するのは事業者側の役目です。消費者が消費税を負担するたびに税務署に申告納付するのは現実的ではないため、事業者が消費者のかわりにまとめて申告納付する仕組みになっています。
    消費税の課税対象となるのは「国内における取引であること」「事業者が事業としておこなう取引であること」「対価を得る取引であること」「資産譲渡や貸付、役務の提供であること」という4つの条件をすべて満たす場合です。

    では、不動産売買取引において、どのような場合に消費税が課税されるのでしょうか?

    建物は課税されるケースとされないケースがある

    消費税は建物代金に課税される場合があるものの、すべての建物代金に課税されるわけではありません。一定の条件下では、建物を売買しても消費税がかからないケースもあります。
    建物を購入する場合、建物代金に消費税が課税されるか否かは売主が誰かによって変わります。売主が「課税事業者」の場合は消費税が発生しますが、「免税事業者」の場合は発生しません

    「課税されるケース」と「課税されないケース」の違いについて、以下で紹介していきます。

    課税されるケース|事業者が不動産売買をおこなう場合

    課税事業者が売主の立場で不動産売買をおこなう場合、建物代金は消費税の課税対象です。課税事業者とは、消費税の納税義務がある法人や個人事業主のことで、不動産会社や建築会社も含まれます。

    また、課税事業者かどうかは「基準期間中の課税売上高が1,000万円を超えているか」という点で判断されます。基準期間は個人事業主の場合は前々年、法人の場合は前々年の事業年度が対象となります。基準期間の売上高が1,000万円以下の場合は免税事業者となり、消費税は発生しません。

    消費税が発生する場合の税率は2022年4月時点で10%となり、建物代金が5,000万円の場合、5,500万円が税込の建物代金となるため、消費税は500万円です。

    5,000万円(税抜の建物代金)×10%(消費税)=500万円(消費税額)

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    課税されないケース|個人が売主の場合

    先述のように、原則として個人が売主の場合は建物代金に消費税はかかりません。たとえば個人がマイホームを売却する場合は非課税対象となります。売主自身が住んでいたマイホームを売る行為は、事業とはみなされないためです。

    また、仲介会社をとおして中古物件を購入する場合でも、売主が個人で売却していれば、建物代金に消費税はかかりません。

    ただし、売却するのが投資用物件である場合には課税対象となる可能性があるため、注意が必要です。投資用物件はマイホームとは違って不動産所得が発生するため、1,000万円以上の価格で売却した場合2年後に課税事業者になり、何らかの課税売上が発生した場合、消費税の納税義務が課されます。

    取得当初は居住目的で購入したものの、途中で改修して第三者に貸し出しているといった物件も、消費税の課税対象となります。理由は投資用物件と同様で、賃貸用物件の売却は事業者による事業の一環とみなされるためです。

    もともと売主が住んでいた中古住宅を民泊やシェアハウスにした場合なども、同様に消費税が発生します。

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    土地は非課税対象

    土地代金は建物代金と異なり消費税がかかりません。まず消費とは「欲求を満たすために財・サービス(商品)を消耗すること」です。つまり消費税は商品やサービスを消費する際に課税されます。

    建物は利用するごとに経年劣化が進み、財が消費されていくとみなされますが、土地の場合は何年経過しても変わらずに利用できるため、消費とはみなされず「資本の移転」とみなされます。よって、土地代金は消費税の課税対象から外れます

    ただし、土地の売買で発生する仲介手数料には、消費税が課税されます。

    建物・土地を同時に購入した場合の消費税

    土地と建物を同時に課税事業者から購入した場合は、建物に対してのみ消費税が発生します。対して個人(免税事業者)から購入した場合は、土地・建物ともに消費税は発生しません。ここでは建物代金が3,000万円、土地代金が2,000万円という想定で、具体的に計算してみましょう。

    【課税事業者から土地・建物を購入した場合】

    3,000万円(建物代金)×10%(購入時の消費税率)=300万円(建物分の消費税額)
    3,000万円(建物代金)+300万円(建物分の消費税額)+2,000万円(土地代金)=5,300万円
    土地と建物をあわせた税込代金は5,300万円となります。

    【免税事業者から土地・建物を購入した場合】

    3,000万円(建物代金)+2,000万円(土地代金)=5,000万円
    土地と建物をあわせた代金は5,000万円となります。

    不動産売買で消費税が課税されるのは建物代だけではない

    不動産売買で消費税が発生する項目は、建物の代金だけではありません。ほかにも取引に付随する以下のような項目はそれぞれ「課税対象」「非課税対象」に分けられます。

    消費税の課税対象となる項目消費税の非課税対象となる項目
    仲介手数料
    司法書士手数料
    ローン手数料
    土地家屋調査士手数料
    土地の一時貸料(1か月未満)
    土地の駐車場利用料
    非住宅用建物の賃貸料
    土地の定着物
    登録免許税
    印紙税
    各種保険料・保証料
    借地料
    住宅用建物の賃貸料
    建築確認申請料
    (マンションの場合)管理費・修繕積立金

    上記の中から、とくにおさえておきたい項目を抜粋してまとめました。

    課税項目①|仲介手数料 

    不動産会社に仲介業務を依頼した場合、仲介手数料が発生します。仲介手数料は売却活動から契約、引き渡しまでのサポート業務に対する報酬です。サービス提供の対価とみなされるため、消費税の課税対象となります。

    仲介手数料は売主側にも買主側にも発生します。売買契約を締結したタイミングで半額、物件を引き渡したタイミングで残りの額を支払うのが一般的です。

    宅建業法では仲介手数料の上限額が定められており、取引額によって上限額は異なります。仲介手数料は売買代金を金額ごとに複数の区分に分け、それぞれに異なる仲介手数料率をかけて算出されます。また、仲介手数料には消費税が課されます。

    仲介手数料は売買代金を金額ごとに複数の区分に分け、それぞれに異なる仲介手数料率をかけて算出されます。また、仲介手数料には消費税が課されます。

    計算式は次の通りです。

    売買代金仲介手数料の上限額
    200万円以下の部分売買代金×5%
    200万円超400万円以下の部分売買代金×4%
    400万円超の部分売買代金×3%

    売買代金を1,000万円と仮定して、仲介手数料を計算してみましょう。

    200万円×5%+200万円×4%+600万円×3%+10%(消費税)=39.6万円

    しかし上記の計算式では少し時間がかかってしまうため、売買代金が400万円を超える場合は速算式を使ったほうが便利です。

    売買価格(税抜)×3%+6万円+消費税

    売買代金が1,000万円の仲介手数料を速算式で再び計算すると以下の通りです。

    1,000万円×3%+6万円+10%(消費税)=39.6万円

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    課税項目②|司法書士に支払う手数料

    登記手続きを依頼した司法書士に支払う手数料は、消費税の課税対象です。買主は新築物件を取得するときに所有権保存登記、中古物件を取得するときに所有権移転登記が必要です。売主は、抵当権抹消登記、住所変更登記、氏名変更登記を必要に応じておこないます。

    登記手続きは自分でおこなうこともできますが、司法書士に依頼して手続きするケースが一般的です。

    司法書士がおこなう「登記に必要な書類の作成」や「税務署での申請手続き」などの業務は稼働の対価とみなされるため、消費税の課税対象となります。

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    課税項目③|ローン手数料

    各種ローンの手数料は事業者である金融機関から「融資をおこなうための手続きというサービス提供を受ける」といった意味合いになるため、消費税の課税対象となります。

    ローン手数料の支払方法はローンの種類によって異なります。たとえばローン手数料の場合、支払方法には定額型と定率型の2種類があります。定額型は借入額に関係なく一律の金額を支払う方法で、定率型は借入額に一定の手数料率をかけた金額を支払います。借入額によっても変動しますが、3〜5万円程度となるケースが多いです。

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    非課税項目①|土地の定着物の売買

    前述のように土地には消費税がかかりませんが、付随する定着物についても消費税は発生しません。

    定着物とは物理的に土地から切り離すことができない物を指し、土地の所有権に定着した状態で取引されるため非課税となります。具体的には、樹木や池、石垣、庭園、移動困難な庭石などが該当します。

    ただし、地下に埋まっている車庫を売買する際は設備の譲渡とみなされるため消費税の課税対象です。立木や基礎工事をおこなっている物置などにも、消費税が発生することをおさえておきましょう。

    非課税項目②|登録免許税

    登記手続きで支払う登録免許税はそれ自体が国に納める税金であるため消費税は課税されません。

    登録免許税の金額は土地や建物の固定資産評価額に登記の種類に応じた税率をかけて計算します。たとえば、土地の所有権移転登記は2.0%、新築物件を取得する際の所有権保存登記は0.4%、中古物件を取得する際の所有権移転登記は2.0%です。

    オンライン申請の場合は電子納付が可能ですが、原則として現金納付となります。司法書士に登記手続きを依頼する場合は、一旦登録免許税を立て替えてもらい後で精算するケースが多いです。

    非課税項目③|印紙税

    印紙税も登録免許税と同様にそれ自体が税金であるため消費税は課税されません。

    印紙税は商取引で扱う文書に対して課税される税金です。不動産売買でいえば「売買契約書」や「工事請負契約書」「金銭消費貸借契約書」などが該当します。

    どの程度の印紙税がかかるかは文書の種類や契約金額によって異なります。規定の印紙税を契約書に貼付し消印をすることで印紙税の納付は完了です。

    また、印紙税は売主と買主双方が平等に負担するよう民法で定められており、同じ契約書を複数作成するときは、1通ずつそれぞれに印紙を貼り付けなければなりません。

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    非課税項目④|各種保険料・保証料

    各種保険料や保証料も消費税はかかりません。不動産売買で発生する可能性がある保険料・保証料は以下があげられます。

    • 団体信用生命保険料
    • 火災保険料
    • 住宅ローン保証料
    • 賃貸保証料

    保険料は大きな損害が発生した際に生じた支出をカバーするために支払います。保証料とは保証人を必要としないかわりに保証会社に支払う費用のことです。

    消費税法第6条では、消費税を課さない取引内容が定められており「保険料を対価とする役務の提供」は課税対象でないとされています。よって、保険料や保証料には、消費税がかかりません。

    まとめ

    本記事では不動産売買で発生する消費税について紹介しました。消費税は事業者が対価を得ておこなう資産譲渡や貸付、役務の提供などに対して課税され、商品販売やサービスの提供を受けた消費者が一度負担して、事業者がまとめて申告納付するという仕組みになっています。

    建物代金については売主が課税事業者の場合は消費税がかかりますが、売主が個人の場合は原則として消費税がかかりません。また、建物は課税されるケースとされないケースがある一方で土地代金については消費税がかからないという点をおさえておきましょう。

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    監修者

    三輪 歩己

    不動産鑑定士 宅地建物取引士 日本証券アナリスト協会検定会員(CMA) 相続診断士 J-REC公認不動産コンサルタント 名古屋市立大学薬学部卒。大学在学中に不動産鑑定士2次試験合格。日本土地建物株式会社にて、不動産鑑定や不動産証券化業務に従事。その後外資系不動産ファンド等にて物件購入・管理・経営企画等業務に従事。約20年間の鑑定・宅地建物取引業の経験を活かし、2020年に不動産パートナーズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。同社では、不動産鑑定業・宅地建物取引業に加え、不動産専門の相続診断士として活動を行う。 地元の高円寺では、地域貢献活動を行い、高円寺氷川神社氏子青年会の副会長を務める。

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